18 前世の悲劇
前回のあらすじ:
病院に入院したら先生に優しくされて涙ポロリしちゃったよ!
「大丈夫? だいぶ無理してるみたいだけど」
「えっと、大丈夫です……よ?」
病院の病室で。なんか暁さんに心配されている。
後ろにはメーヴェとフィアラル、それに妹のアビスの姿もある。魔法省総出でお見舞いに来てくれるなんてね。
「まあ、僕は大丈夫なので。ありがとうございます」
「どういたしまして。……もしよければ、あなたが何をそんなに思い悩んでいるのか……聞かせてもらっても?」
あー、うーん。どうしような、前世の話とか信じてもらえるものなんだろうか?
というか教えたら嫌われたりしないかな……? 愛の原子力使いについてまだ調べてないから、どんな反応が返ってくるのか想像がついていないので怖い。
「お姉ちゃん、もしかして。前世も魔法少女だった?」
「え、あ?」
な、なんで鈴音が知って――あ、そういえば。
何回か鈴音には、前世の記憶があるからーとか言った記憶がある。まだ鈴音が小さかった頃の話なんだけど……まさか、覚えてた?
「……愛の原子力使い」
「な……っ!?」
メーヴェと鈴音は驚いて、暁さんは苦い顔になった。フィアラルはよく分かってないみたいで間抜けな顔をしている。かわいい。じゃなくて。
あれ、何で口に出して? そんなつもりはなかったのに。
「ごめんなさい」
こうなれば、謝るしかない。僕……いや、私、は……何をしても、嫌われて。怖がられて。
私はただ、町を守りたかっただけなのに。何も知らない人々が、平穏に生きていける場所を壊されたくなかっただけなのに。
「ごめんなさい」
原子力を使うとは言っても、放射線は出ないようにしてた。
魔力を使い果たして変身が解けても、救助活動に協力した。
街に被害が出ないように、それでいて魔物を倒せるように。威力と角度を調整して、戦った。
私、頑張ったよね。誰か1人くらい、褒めてくれたっていいと思うんだ。慰めてくれたっていいと思うんだ。
「ふふ」
「……お姉ちゃん?」
「はは、は」
「お姉ちゃん、しっかり!」
もう、いや、だって、笑うしかないじゃんこんなの。
私は生まれ変わっても魔法少女で。しかも直接戦えなくて。もう一度、生き地獄を味わって生きていけと、そういう事でしょう?
「ウェーブ……いえ、鈴。よく聞いて」
「へ?」
暁さんの顔が、目の前に。そして僕の顔に両手が添えられてる。これどういう状況?
「初代魔法少女は今、ちゃんと評価されているわ。だから……ありがとう」
「むぎゃ」
暁さんに抱きしめられる。え、っと?
「今までずっと、たった1人でよく頑張ってくれたわ。もう大丈夫、もう大丈夫だから……」
「う、あ……」
暁さんが、優しい言葉をかけてくれる。背中をさすってくれる。
やばい、涙があふれて止まらない。こんな情けない姿、見せたくないのに……いや、もういいか。今まで散々な目に遭ってきたんだし、これくらいは許される……よね?
優しくされて泣いちゃう主人公ちゃんでした。