15 アビスの紹介
前回のあらすじ:
妹の鈴音ちゃんが主人公ちゃんの手によって魔法少女アビスになったよ!
空間跳躍能力だって。どこへでもノータイムでいけちゃうよ!
魔法省、会議室。
ここには今、メーヴェ、フィアラル、僕、暁さん、そして新たに魔法少女になった鈴音がいる。
「というわけで、鈴音も魔法少女になったから」
「何が『というわけで』なにかよくわからないのだけれど」
「魔法少女じゃないと魔法少女寮に入れないって話だったから魔法少女になってもらったよ!」
「簡潔な説明どうもありがとう。え、魔法少女って今はそんな簡単にというか、なりたくてなれるものなの?」
「僕の能力で女の子を魔法少女にできるよ」
「……oh」
メーヴェが額に手をやって天を仰ぐ。うんまあ、そういう反応になるよね。
ちな、フィアラルはよくわかってない様子で「よかったねー」なんていってホンワカしている。うん、幸せそうで何より。
「というわけで鈴音改め、これからは魔法少女アビスになるから。守ってあげてね」
「いや、私よりお姉ちゃんの方を優先的に守らないと」
「はいはい、仲がよろしいことで」
いやだって、鈴音に何かあれば膝から崩れ落ちる自信があるし。まあ多分、それは鈴音も一緒なんだろうけどね?
「えっとそれで、1ついいでしょうか」
「あら何かしら」
と、ここでアビス……鈴音が口を開いた。
「皆さん普段から魔法少女の名前で呼び合ってますけど、本名では呼ばないんでしょうか?
あと私もお姉ちゃんのこと、ウェーブって呼んだほうがいいですか?」
あー、たしかにそれは。
僕はメーヴェもフィアラルも魔法少女名で呼んでたから、それに合わせてただけなんだけど……実際決まりとかあるのかな? 実は僕もよくわかってない。
「魔法少女の中には素性を隠したい子もいるから、基本的には常に魔法少女名で呼び合うようになっているわね。これは10年以上前から魔法少女の暗黙の了解になっている……らしいわね、私も先輩に聞いた話だから詳しいことは知らないんだけど」
「じゃあ、私も魔法少女の名前で呼ぶことに……えっと、お姉ちゃん? ウェーブ?」
「妹だって知られるとアビスにも被害が及ぶかもしれないから、ウェーブって呼んでほしいかな」
「わかったお姉ちゃんって呼ぶね」
「話聞いてた?」
僕こと魔法少女ウェーブって戦犯だの役立たずだの散々な言われようをしているからねー。襲われた男子たちもすんなり被害届が受理されなかったあたり僕のことはそういうことをしても良い存在、と認知されているかもしれない。
「大丈夫、私の能力は空間跳躍。危なくなったらすぐに逃げられるから」
「まあ、それはそうだけど」
「ちょっと待って、空間跳躍? 聞いたことのない能力なんだけど」
「瞬間移動と思ってもらえれば」
「まーた今までにない魔法少女になったのね……」
あーまあ、確かに今までの魔法少女ってゴリゴリの戦闘系しかいなかったからねー。
瞬間移動も直接戦闘能力ではないけど、移動とかの支援で使えそう。いや、どっちかというと救助活動にぴったりでは?
「まあ、そういうわけで。以後、妹をお願いします」
「え、えっと、お願いします」
僕がペコリと頭を下げたのを見て、アビスも一緒にペコリと頭を下げる。うん、いい子だね。
「話はわかったわ。でもそうなると、アビスは現地までの移動と救助活動をしてもらうことになるかしらね?」
「そうですね、直接戦闘は危ないと思うので」
よかった、やっぱり同じことを考えてくれたみたいだ。これでひとまずは安心かな。
さーて次は、僕の話か……。