未定14
「トオル……お前がやったのか……」
「ごめんなさい──」
「いや、いいんだ……良く守ってくれた」
そして、トーリは僕を抱き締めてくれる。
カーラは今はレイがあの後安心したのか意識が落ちてしまったので自宅でレイの看病をしている。
「しかし困ったの……」
ドルマンさんは難しい顔をしている。
「見ていたのは御者の人間だけなのですよね?」
「うむ、それはもう口を割かないように念押ししている。向こうも命の恩人を売るような事はしないと固く約束してくれた」
難しい顔をしてドルマンさんとトーリは頷いている。
「して、トオルよ? どうやって倒した?」
ドルマンさんは僕に聞いてくる。
分かってた事だ。
隠せる事ではない。
何よりもいつかは見方が必要だろう、大きすぎる能力だ。
僕は神々の祝福の事は伏せつつ、ペルソナの事をほんの一部分だけ話すことにする。
「エクストラスキルか……」
「たまに持って生まれる者も聞くな。そしてそれに気付く者も気付かない者も。そしてどれもが協力だ」
「場合によっては国に召し抱えられる…のですか?」
「そうだな──だが、トオルよ? お前はそういうのは望んでいないだろう?」
『はい、出来ればレイと学校生活を送りたいです』
ペルソナの能力…。
仮面を被ること。
対面した的の能力を限定的に取得出来るようになること。
そう──少しだけ、そう……少しだけ伏せて話していた。
そんな、現実に神々が居て、それが下手したら…見聞き出来たらその全能さえも──。
そうだ、この能力にはそんな懸念さえ僕でさえ気付いている。
国に召し抱えられる?
そんな規模では無いだろう。
だから、伏せた。
それだけだった。
「トオル? ギルドに入ってみないかね?」
「えっ?」
「今回の件はトーリが片付けた事にするが、お前の力は強すぎる。それを人前では使うのは危険だろう──だから、これだ」
ポンッと空間からローブが出てくる。
ё空間能力 7
ペルソナが能力を取得したみたいだ。
「これをお前に譲ろう。ダンジョン産品でかなりのレア物だ」
「これは──良いんですか?」
「もう老いぼれには使わない逸品だ」
『あ、ありがとうございます──』
黒い光沢のローブを着ると自然とそれが自分にフィットしていって自分の魔力を内包するように、そして自在に変形する。
ё鑑定
ёエレメントローブ
着者の魔力にて自在に変形&時には意思を持つ。
ダンジョン産品。
自動修復機能有り、魔力を通すことでいつでも修復が可能。
着者の魔力に合わせて特性を変えられる。
※神々の遊びから生まれた限定の1品
『えっ?!』
限定の1品?
「ほぅ──その希少性に気付くか。それはな下手したら国宝級なのだ。だが、それの有用性も分からんあいつらはすぐに手放してくれての、あれは傑作だった」
「ははは!」
ドルマンとトーリは過去を思い出したのか楽しそうに笑いあった。
「それをトオルに譲ろう。トーリの息子なら相応しい。それを使ってギルドメンバーとして能力をならしなさい。そして、これはお土産だ。手を出しなさい」
ソッと出を出すとそこに紙を押し付けられた。
フワッとした後にその紙は消えていき。
手の甲にはEの文字が浮かぶ。
そこをドルマンさんがサッと手を振りかざすとDに変わった。
「後は……こうだな」
ピリッと一瞬だけ手の甲が痛みを感じたら、手の甲の文字は綺麗に消える。
「トオルよ、とりあえずギルドランクはEからだが、それだと討伐が出来ないのではDにしておいたぞ。そして、ここからだが注意するんだぞ。普段はお前の意識にてギルドランク偽装出来るようにしておいた、お前の出したい方を掲示するんだ」
『ギルドランク偽装?』
「本来はダメなんだがな……、まぁ、たまにやるやつが居るんだ。トーリもそうだな……出会いたてのカーラに一目惚れして一緒に相応のランクを浮けたいからと──」
「いや、ドルマンさん。そこは良いじゃないですか……」
「ははは! あれは傑作だったの! まさか何故誤魔化したいのかと思ったら、ギルドで揉め事を起こしてブラックリスト入りにでもなったのかと思ったら、惚れた女のためなんてな!」
トーリはどこか情けないような照れくさそうな顔をしていた。
「だが、これはギルドではご法度だ。トオル気を付けるんだぞ? いつかお前と一緒にギルド登録行きたいやつが出るかも知れん。学舎ではそれが普通だからな。その時はもう一つのまっさらな方で初登録するんだぞ?」
『は、はい──』
「後はこれじゃ、ギルドガードオープンと言うのだ」
『ギルドガードオープン』
そしたら、手の甲から魔力を通して自分のステータスが出てくる。
今の所は名前とDランクのみだ。
「ギルド本部や大きなギルドだとステータス表示やそれが分かる場所があるんだが、基本的には魔力を通して身分証明のみだけが出てくる。自分で念じればその他も出ては来るがな」
なるほど……。
「だが、トオルの場合は気を付けるんだぞ? 変に気付かれたくないスキルとかあるのならば念じるのだ。看破拒否に近いスキルを得られるかも知れん。それがあればある程度は防げるだろう」
ё参照スキル
鑑定耐性 8
(これはドルマンさんのかな……)
『何から何までありがとうございます』
素直に頭を下げるとドルマンさんは笑顔で頷く。
「トオル? 今日は家で休みなさい。明日改めて父さんが見送ろう」
うん──と頷いて僕たちは家へと帰るのだった。