始まり
「透あなたは残念ながら死んでしまいました」
『えっ?』
僕の目の前には白い綺麗な髪をたなびかせた女神が居た。
『僕は死んだって……どうして──』
「私たちのモデルケースになっていた為です」
『モデル……ケース──?』
目の前の凛とした声の女神様の声はこんなにも澄んでいるのに自分の耳にはそれらの言葉の1つ1つが届いてこない。
「はい──世界は無数に有り、そして神も多くいます。そして神は各世界の情勢を知るために作為的に人員を選んでモデラーとして送り込むのです。役目を終えた人は自然と──」
『僕は──役目を終えたということですか?』
「そうなります」
『それって余りにも──』
理不尽じゃないか……と言い掛けた時に目の前の女神の申し訳無さそうな顔が見えて、その言葉は自分の中へと落ちていく。
(それに──)
落ち着いて来たのも回りを見渡すが星々が瞬く空間にポンッと削り取られたように神殿があり、自分と女神はそこに居る形だった。
「わかっております──なので特典があります」
『えっ?』
素っ頓狂な声をあげしまう。
特典とかなんだそれ? という感じだった。
余りにもピンと来ていない顔だったのか、女神様はその自分の表情を見てか微かに表情が弛んだ気がした。
「特典です。そうですね──ランダムになりますが神々の祝福があなたに付与されて転生されます」
『ランダム……? 転生?』
ランダムってあれだよな? 選べないって事だよな?
祝福? でもそれって本当に祝福足り得るのか?
それに転生──?
『あのそれって──』
「まずはあなたの──透の祝福を選定しましょう!」
自分の疑問の声が届かないうちに祝福とやらの儀式が行われてしまったらしい。
自分と女神様を取り囲むように頭上の星々の輝きがより一層強くなる。
そして、そのうちの一番輝く星の1つが自分へと降って来る。
「あら──これは……ペルソナの祝福」
『ペルソナ──?』
「詳しくは転生後に確認するのが良いでしょう──この祝福は初めて見ました」
ペルソナって──仮面って意味だよな?
初めて見るというのは……レアということなのか?
『女神様……転生というのは──』
「では透──どうか転生先では良い生涯を送れる事を祈りますよ」
『えっ? ちょっ待っ──』
そこで自分の意識が視界がどんどんと暗くなっていくのだった。
(待って──僕はまだ何も知らな……)