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大怪獣物語  作者: 黒犬
2/14

                 ※2

「バカ過ぎて笑うしかねぇーーーーー」

「こんなのが勇者候補とは」

「ひ弱そう」「事務系じゃしな」

「頭も悪いだろ」「前のは良かったわね」

「○×△□☆〒!!!!!!!」

 何が何やら分からないが、貶されているのだけはよく分かるので、怒って叫ぼうとしたけど声は出なかった。

「我らに言いたい事があるのなら」

「まず職業を決めなさい」

「これは異世界転生だぜ、アニメ好きのお前なら分かるだろ?」

 俺がいる所は白いプラスチックの様な板に囲われた、そこそこ広い部屋で天井のガラス板から明かりが室内に差し込んで来ている。

 俺に話し掛けるのは前に並んだ3体の石像で、それぞれドラゴン・長髪の女神様・頭からフードローブを被った魔導士の姿をしていた。(俺は夢でも見ているのか? 体はきっと暖かい布団の中にいる筈だ!)等と、現実逃避をしても意味がない。

「×△■◇〒………」

「ここは【転生の間】である、まず転生の水晶に触れて職業を決めるのだ」

 職業とか意味が分からん、異世界転生とか本当にある訳がない。ある訳が無いのだが早くやれやるんだと石像達が煩いので、俺はそれに従うことにした。

「【転生の水晶】はほれ、儂らに向かって左側にあるであろうが」

 (左側とな)、言われた方向へ意識を向けると確かに金色のテーブルに載せられた紫色の水晶玉があり、その側には全身鏡が一つ立っていた。(あっ、あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー)

 俺は何に驚いたのか? 驚いたのは全身鏡の方であり、そこにはなんと! 青白い魂が一つフワフワと映っているではないか。(これが今の俺なのか? ああそうだ……)

 頭がボーッとする感じがしていたが、自分の姿を見て我に返った俺は底なし沼に引き込まれて死んだんだと思い出す。騒いだり暴れたりしたい所だが魂の状態では何も出来ないので、言われた通りにまず職業を決める事にした。

 (どうやって触るんだこれ?)魂の体に手足はない、青白い人魂がボウッと空中に浮かんでいるだけ。(触ると言うより接触する感じなのかな?)

 慣れない体を動かして転生の水晶に魂を触れさせると、それが光り出して水晶玉の上に何やら文字が浮かび上がり、どういうつもりか水晶玉の上に表示された文字はスロットの様にクルクルと回転し始める。

「職業はランダムに決まるのだ」

「一般人から盗賊・英雄に、モンスターまで無数の種類がありますよ」

「ワクワクするだろ、そのスロットが今後の人生を決めるんだぜ」

 (えーーーーーー職業は好きに決めさせろよーーーー、一般人とか意味不明なのを作るなーーーーーーーー)とか叫びたいけど声は出せない。

 【俺は運を天に任せるしかないのである。】

 (モンスターだけは嫌だ! 盗賊でもいいがモンスターだけは絶対嫌だぞ!)と最初は心の中で願ったりしたのだが ――――(違う逆だ!)と閃いた。

 美少女にあれこれをするなら寧ろモンスターがいい!

 (触手でもいいがスライムがいいな、スライム来いーースライムーーーーー)

「余計なことは考えない方がいいぜ」

「可愛らしい職業ですね」暫くして職業が決まると女神像はこう言う。

 (神様に邪なお願いを叶えて貰える筈がないと)

「【ただの子犬】ーーーーーーーーーー」と大声で笑ったのはドラゴンの像。

「これは運命なのじゃ、1度決まった職業を変更するのは神にも許されん」

 職業が決まると魂である俺の体が輝きだして姿が変わり出す。光が収まった後に側にある全身鏡で体を映して見たら、薄茶色の毛につぶらな瞳、クルンと愛らしい尻尾が付いた動物の体が映し出されいてた。

 【体重6㎏程になる中型犬LVワン、俗に言う柴犬の子供というやつだ。】

 (これが俺の新しい体って何かおかしくないか? 異世界転生とか勇者候補って石像達は言ったよな、俺はこんなか弱い体で戦わされるのだろうか……)

「ワンワンワンワンワン!」

 (ふざけるなーーーーーー、やりなおせーーーーーーーーー)と四本足で床に立っている俺は、前に並んだ3体の石像に向かって吠えまくる。

「吠える姿も可愛いですね」

「えーーーーい煩いぞ犬」

「駄犬は保健所に送っちまうからな」

「ワンワンワンワンワン!」

「どんなに怒ってもやり直しは出来ません、運命なのです」

 神様は神様らしく犬の言葉が理解できるようで、毛を逆立てた俺はウーーーーーーーーと牙を剥きながら睨んでやった。

「例え子犬であったとしても、魔神や魔王を倒すための戦力である事に変わりはないのでしっかり頑張るのだ」

「ワンワンワォン!」

「そんな化け物を相手に子犬では戦えないだと? 決まった事はどうにもならん素直に諦めて我らの話を聞くがいい」

 (こんなの認められるかーーーーーーとその前に……)

「ワンワンワンワン」

「我らか? 我らは【GHS】だ」

「それじゃ分からねぇって」

「God・Different world・hero・dispatch・consulting system、神による異世界勇者派遣コンサルティングシステムですよ」

 (分かるような分からないような……)

「これだからじじいと女は、無駄に長いし難しいんだよ。神様が全宇宙のために勇者派遣業をやってまーーーーす、ぶっちゃけただの雇兵なんだが気楽に【勇者システム】と呼んでくれ。相談料は金銀財宝に宝石とか、酒や喰いもんでもいいぞ」

「神は見返りを要求しません!」

「するだろ普通に」

「神とは無条件に与え続けるだけの崇高な存在なんです!」

「それだと俺らが飢えるし、ただより高い物はないってのは宇宙常識だろうが」

 (神様にも色々あるんだなぁ)と俺は思った。

 神様だか何だか知らないが石像と話すのはやりにくいので、そのお姿を見せて欲しいとお願いするもそれは無理だと断られてしまう。

「神の姿は人に見えず、ただ崇め奉られるのが常識と言うものだ。お主がいるここは四次元世界のどこかにある【転生の間】だが、機密なのでどこにあるかは教えられない」

「そんないい加減で信用されるかよ」

「信用しなさいただの子犬」

「無理だよなぁただの子犬。イダダダダダ……」

「此からお前の派遣先に付いて話すのだが、その前に少し話を聞いて貰いたい……」

 

 《物に恵まれて働かなくていい神様の世界は、退屈極まりなく時間をもて余しており不老不死かつ不死身であるが故に、それは地獄にも似た苦しみであるという。

「そこでだな……」

 国を作って戦争させてみたり、神の名の元に美男美女を集めたり、豊かになって煩くなった国に天罰を下して滅ぼしたりと、およそ考えつく事は全てして来たそうだ。

「やり過ぎて儂らも滅び掛けたりした訳だが、今も昔も暇で暇でしようがない」

 今の神達は聖神族・魔神族の2つの勢力に分かれて争っている。この様に争う意味など神達には無いのだが、対立勢力がないと生きていても楽しくないんだとか。

「ワンワンワン」(そんなの分かりたくない)

「平和など野山に生えてる植物の生活と変わらず、ただ堕落するのみだ。理解して欲しいとは思わぬが神達は、自分の勢力を応援したり手伝ったりする事で生を実感し、生きててよかったぁーーーーと思うようにしておる」》

 【神様って案外酷いんだなぁと俺は思った。】

「ワンワンワンワン」(神様の娯楽のために戦うなんて俺は嫌だ)

「そうか、なら死ね今すぐに」

「あなたは一度死んだ身なのですよ。エインヘリアルと言うのはですね……」

《エインヘリアルになれる魂は全宇宙にいる数百億だかの人口の内、死んだ人の中からランダムに選ばれるそうだ。その当選確率は数千万分の1で宝くじより低い、つまり俺は超ラッキーな人になるらしい。(何だかなぁ)

 エインヘリアルとは!

 1、【無条件・無報酬】で神に仕えて神の為にひたすら戦うヒーーローーー。

 2、戦場で死んでも直ぐに復活し【永遠に戦い続ける】のが使命!

 3、死者の魂は【神に逆らっちゃダメーーー】なんだと。

 4、役に立たない魂は【鉱山で重労働】をするのが普通!!! である。

 5、神に逆らう魂は【予測通りに即抹消……】だって。

 【酷いシステムだなオイ! と俺は思うが神様に逆らうのは止めておこう。】》


「ワンワワンワンワーーーン」(俺はただの子犬だぞ、戦えないぞーーー)

「昔は楽で良かったなぁ」(華麗にスルーーーー)

「人権、権利、金、金って時代が進むと煩くなって敵わん」

「余計な知恵をつけると面倒ですが、知恵をつけないと使えない訳で、そろそろリセットしようかなぁとか考えたりするのです」

「ワンワンワワン」(そんな話を俺に聞かせても大丈夫なのか?」

「知った所でお主には何も出来まい」

「私たちは暇を持て余しているのです。少し付き合いなさいそうそう……」

 最近どこかの星が一つ消えたらしい、数十億の命を道連れにして。もう少しで戦争に勝てそうだった我らの指示に従わないからだとか、残酷な事をするなぁなんて俺は思ったりするのだが、壁際に並んだ石造達は口を揃えてこう言った。

「我らは強制などしておらん、争いはお前たちが望んだことだ」と。

「何もしなくても勝手に争い始めるものです、それが生きるという事」

「争いが始まったら俺達は、勇者候補とか兵器を揃えて売り込みに行くんだ。後は適当に煽りながら力を授けたり、やり過ぎないように止めたりするが、暴走して星ごと消えたりなんて事も偶にある」

「中々上手くいかないんですよね。光を司っている温厚な私達と違って魔神側は凄いんですよ例えば……」

 あることない事を吹き込んで戦争を誘発したり、生活環境を悪化させて人々が争うように仕向けたりする。逆らった王女を磔にして放置プレイなんてのは可愛いい方で、適当に選んだ人を呪って暴れさせたり、ピーーをしながらピーーーしたり、ピーーーがピーーーになってピーーーーーーーしちゃったり……

「魔神族って酷いと思いませんか?」

「奴らが暴れると儂らの出番になる」

「マッチポンプとも言うけどな。元を正せばみんな同じ神様なんだぜ」

「そういう事は教えなくていいんです!」


 光の女神様、思慮深そうな魔導士に、自由主義なドラゴンと、初対面の俺が3人に抱いたイメージはこんな感じ。そうそう……

「ワンワンワン」(皆さんの名前を教えて下さい)

「儂らか、儂はだな……」

「全宇宙でもっともイカシタ最強神と言えば俺様だぜ!」

「イカレタの間違いでしょ」

「格好良く気さくで頼れるナイスガイ!」

「野蛮で適当に生きているドラゴンです」

「広げた翼は町より広く、地面からビルを引抜ける怪力を持ち、口から吐きだす光線は一撃で大都市を焼き尽くす! そんな全宇宙で最強かつ最も素晴らしい神の名は!!!」

「ゴーちゃんです、ゴズウィル・レイ・ブラストドラゴン。長いのでゴーちゃんと呼んであげて下さいね」

「喧嘩売ってんのか堕女神ああ!」

「私を差し置いて最強とか言うからですよ」

 理由は分からないがゴーちゃんと女神様は、仲が悪そうだなと俺は理解した。

「儂はな……」

「私こそ全宇宙、最強にして最も美しい女神なのです」

「石像は美化されてるから勘違いするなよ、本体はおばあちゃんだからな」

「おばあちゃん……こほん、いいですかただの子犬……」

 《ゴーちゃんと違って女神さまは人間サイズだが、パワー、魔法力共にゴーちゃんを遥かに凌いで素手で星が割れるとか自慢してきた。(嘘っぽいなぁ)その姿は宝石が自らを恥じて身を隠すほどに美しく、万人を虜にする芳香を放つ汚れを知らない、全宇宙に崇められる清廉な光の女神様らしい。》

「やりまくりの癖に清廉とか恥ずかしくねぇのか?」

「私の名はアテナイ・フレイム・キレイです」

「キララちゃんて呼ぶんだぞ。頭と体がキラキラでちょっとイッちゃってる女だ」

「向こうで話しましょうかゴーちゃん」

「いいぜやってやるよ!」

 (神様がこんなんでいいのかな?)思考が追い付かない俺は、石像の前でお座りしたまま黙って話を聞いている。すると突然、ドゴーーーーーンと爆音が天井から聞こえてグラグラっと床が激しく揺れた。

 (地震が来たーーーーーーーーーーーーーーーーー)

 慌てたワンちゃんはここから逃げようとするも、四方は全て壁なのでどこにも行けず困ってしまった。行き止まりな白壁の前でオロオロしていると、「いつもの事だから慌てなくてよいぞ、石造の前まで戻って来るのだ」と落ち着いた声音が聞こえてくる。

「ワンワンワン」

「本当に大丈夫なのじゃと? 心配せんでもよい。お主のいるこの部屋は核ミサイル程度では傷一つつかぬ、オリハルコンより強固な宇宙最強の金属【ゴッドアイアン】で作られておるのだ。あの2人が少々暴れた位で壊れたりはせんよ」


 (最強、最強って怪しい、怪しすぎる……聞いてみよう)

 トコトコ歩いて魔導士の石像の前へと戻った俺は、元気な声で「ワンワンワン」

「神様は本当に強いのか等と疑うのは不敬であるぞ。証明してやってもよいがお主が転生している時点で、証明されておると言えなくもない」

「ワンワンワンワン」(確かにそうかも知れません。所で……)

「儂の名はオーディナルじゃ。聖神族を纒ておる正真正銘、最強にしてもっとも賢き偉大な宇宙神である。さてただの子犬よ、お主がこれからする仕事についてじゃが……」

 子犬でどうやって魔王と戦うんだ俺? と不安に思ったりしたが、そうはならなさそうなので安心したりしなかったりする。

「魔神や魔王の討伐はプロ、修行を積んだ本物の勇者がするので今のお主には関係ない」

「ワォーーーーン」(えーーーーーーそんなぁーーーーーーーー)

「まぁ関係なくは無いのじゃがお主にして貰うのは、モンスターハンターつまり儂らの食料集めがメインの仕事になる。ただこれが少々厄介でのう……」

 耳がおかしくなったのかな俺? 【全高40m越えの怪獣を狩れ】とか無茶苦茶が聞こえた気がしたんだが、聞き間違えじゃないよね? ここは夢の世界じゃないよね?

「小さな動物をチマチマ育てるのは効率が悪い! マンモスでもまだ小さ過ぎるのじゃ」

 《お肉を必要としている人は全宇宙で【数百億人】もいる。

 【どうすれば美味しいお肉を効率よく短期間に、沢山育てられるか?】と神様がうんうん悩んだ結果、【そうだ怪獣を育てよう!】と言う結論に至りました。

 何故こんな結論に至るのか今一理解できないが、もっと恐ろしい話がある。

 なんと!!! 怪獣はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 【育てるのが面倒なので放し飼いにされている、それも沢山だ。】

  〘怪獣が町とか軍事基地を襲っています!〙

  〘飛行船やら貨物輸送船が襲撃されて大被害!〙

  〘外を歩くと喰われるから怖くて町から出られないんです!〙とか、

 勇者システムにメールや電話で抗議がよく来るらしい。しかし此れらは英雄になる為の訓練だとか、エインヘリアルらしく戦えなどと神様は無視をしているそうだ。》

「お主らの世界にも昔は沢山いたじゃろう恐竜が。数が増え過ぎてちと困っておるがあれより遥かに、強くて大きい獣を倒す命がけの仕事なのじゃ。頑張れば何とかなる」

 冗談ではない

「ワンワンワワン! ワンワワン!」(頑張っても無理! 見ろよこの体を!)

「少し冷静になって話すのじゃ」 

「ワンワンワォーン!」(俺はただの子犬だぞーーーーーーーーーーーーーー)

「まぁそう吠えるな。羽虫みたいにプチっとやられるかも知れんが、お主はエインヘリアルなので何回死んでも大丈夫じゃ。儂らがちゃんと復活させるので安心して戦いに集中するがよい、成果を上げれば褒美も出してやるぞ」

「ワンワンワンワン?」(褒美って何ですか?)

「元の世界に若返って復活できたり、ハーレム生活をしたりとか、宇宙戦艦をゲットして冒険旅行なんてのもある。努力次第でウハウハの豪遊生活なのじゃ」

「ワンワンワン?」

「怪獣は魔王より強かったりするのか? そういう事もあるかも知れん。エインヘリアルが闘争心を燃やせるように、しっかりと戦闘能力を持たせておるからまぁその、なんじゃほらだからの……」

 魔導士の石像は急に黙り込んでしまい、俺は何だか不安になる。体感的に長く感じたが実際は1、2分ぐらいか、まだかなぁと待っているとオーディナルの石像は、

「人間死ぬ気になれば何でも出来るのじゃ!」と突然声を上げた。

「ワンワンワンワン」(励ましているつもりですか?)

「うむ。いい言葉が思いつかなんだので少々悩んだのじゃが、今のお主にはぴったりの言葉であろう。繰り返すが何回死んでも復活できるからそこは安心してよいぞ」

「ワンワンワン! ワンワワンワンワン! キャンキャンキャン!」

「元事務員だからどうした! 子犬だからなんだと言うのじゃ! 戦闘経験は実戦でどうにかするがよい! ええい情けない事を言うでないわ」

「ワンワンワーン」(仕事の変更を要求するーーーーーー)

「戦うのが嫌なら愛玩動物になるかの? 冥界の女王とかどうじゃ、スケルトンやゾンビに囲まれて可愛がられる人生も悪くないかも知れん」

 (滅茶苦茶だこのじじいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー)


 耳をうなだれ尻尾を降ろし、嫌だと言う態度をしっかり表しながら俺は、「ワンワンワンワン」(どうしてもやらないと駄目ですか?)と聞いてみる。(転生なんかせずあのまま死んでいた方が幸せだったかも知れない……)

「人生諦めが肝心じゃ納得した所でこれを授けよう」

 オーディナル様がこう言うと俺の頭上が光って、そこから金のチェーンに緑の宝石が付いたペンダントが落ちてきて、犬の首輪のように俺の首へピッタリと収まった。

「それは【ステータスペンダント】じゃ。呪いの力で首から外れんように作られておるが、前足で触れて使い方を確かめるがよい」

 (やる気でないなぁーーーーーーー)まっいいか。

 言われたとおりに前足で触れると、ペンダントから光が照射されて半透明の画面が空中に表示される。四角い管理画面に表示されているのは能力、四次元BOX、カスタマイズとヘルプに3D通信欄。

 3D通信とは話し合っている人の前に、自分の立体映像が表示されてまるでその場にいるかのように話せる、未来的な通信システムの事。

 他は元の世界でやっていたゲームとそんなに変わらないようだ。

「4次元BOXには50㎏まで自由に物を入れられる、ヘルプに転生先の国や仕事について纏めた資料があるので後で読むがよい。ではそろそろ転生するとしようかの」

「ワンワンワン」(転生ってどうやるんですか?)

「ちょっと待ちなさい!」

「どうしたんじゃ綺麗なアテナ?」

「いい忘れていましたがただの子犬は、子犬であって子犬じゃないんです」

 話が終わりそうになると女神様が割り込んで来るので、座り直した俺はまだ続くのかなぁーーと後ろ足で耳を掻きつつ静かに待つ。

「分かる様に話すのじゃ、清廉潔癖で全宇宙に崇められる偉大な女神キララよ」

「キララと呼ぶのは止めて下さい、オーディナル様を差し置いて最強を名乗った事は謝ります。ただの子犬はですね……」

「何とそうじゃったのか! これはめでたい誇るが良いぞただの子犬」

 《今一分かりにくいのだが俺は、【エインへリアル5万人キャンペーン】に当選してしまった凄いワンちゃんであるらしい。

 神様達は凄いパワーと技術を授ける方法を知っているが、全員にこれを授けると勇者だらけになって宇宙のバランスがおかしくなる。なので5万人に1人の割合で特別な力を授ける事により、秩序を維持しながら真のスーパーヒーローを育てているそうだ。》

「なぜキャンペーンかと言うとですね……」

 《【神様は絶対公平で無ければならないから。】

 戦場を戦い抜いたプロだろうが、ノーベル賞を貰うような天才であろうが、俺みたいな凡人・ニートでも差別しない。犯罪思考を持つ者はさすがに排除されるが、アニメのヒーローがビックリするような超能力を、戦闘経験の全くない俺が貰えると言う。》

「毎日数千万人死んでいく死者の中から選ばれた3人×5万人に1人で、数千億分の1という超低確率キャンペーンにあなたは当選したんです。ハイ拍手ーーーーー」

 女神様の像が高らかに宣言すると、突如として頭上に出現したくす玉が割れて、紙吹雪と共に『当選おめでとう!』の垂れ幕が落ちてきた。そして太鼓を叩く音がどこからか聞こえて来ると、パチパチパチと神様たちが手を叩いてくれる。

「……」

「なんだか反応が鈍いですね」

「もっと驚いていいんだぜ」

「ワンワンワンワン」(驚き過ぎてどう表現すればいいのか分かりません)

「そうかそんなに喜んでくれたか。では儂が直々に力を授けようぞ、そーーれ……」

 オーディナルがそう言うとSペンダントを貰った時の様に、頭上が光ってそこから七色に光る星形のペンダントが振って来て、俺の首輪に引っ掛けられる。

「それは七星ペンダントじゃ。余りにも強すぎるので魔王や怪獣と戦うとき以外は反応せぬが、1週間に一度だけ神獣に変身して圧倒的な力で戦えるようになる」

「使いたい時はそのペンダントに触れながら」

「ゴッドチェーンジ! ってポーズを決めながら格好よく叫ぶんだぜ」

「ではそろそろ、惑星ミーティアに転生させてやるとしようかの」

 オーディナルがこう言うと俺の体がふわりと浮き上がり、輝きながら宙に浮いた子犬である俺は暫くすると、どこかにワープさせられてしうのだった。

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