リアムという召喚獣
「あ、アルト!!!」
ルータが終わりリュカが教室へと向かっているとそんな悲鳴のような叫び声が聞こえてきた。
振り向くとアクアがピクピクと痙攣するアルトに駆け寄っているのが見えた。
うーん…流石に、やり過ぎたか…
とリュカはポリポリ頭をかくと
いつの間にか頭上を旋回していたリアムへと目配せする。
回復はしといて?
するとそんなリュカの思考を汲み取ってか、リアムは泣きじゃくるアクアの元へと降り立ちそれを見下ろした。
『カカッ!自分の実力を見誤ったの!あの子はお前のような小童には負けん!』
そんな軽口を叩くリアムにリュカは「そうじゃない!回復!!」とアクアに気づかれないよう小声で促す。
『フンッ!心配せずとも良い。回復など我にかかれば造作もない』
リアムがそう言うとアクアの手で眠るアルトが薄緑色に輝き出す。
するとみるみるうちに傷はいえていき、先程まで虫の息だったアルトは何事も無かったかのように翼を広げアクアの腕から飛び立った。
「あ、アルトぉ.......」
アクアが涙でぐしゃぐしゃの顔を更に歪める。
何が起こったか分からないという顔のアルトだったが目の前で毛繕いを始めたリアムを見た途端羽をバサバサいわせて慌て出す。
「あ、貴方様が、どうしてこのような場所にー」
“黙れ”
何か言いかけたアルトの言葉を頭の中で何かが遮る。
リアムの目が青白い光を帯びて輝き出す。
その異様な圧に押されたアルトが困惑の表情のまま口を閉じると心配したアクアが顔を向けた。
「アルト?どうしましたの?まだどこか痛みますの?」
問いかけるアクアにそれは何も答えなかった。答えられなかった。
まるでライオンに睨まれたネズミのように小さく小刻みに震え1mmも動けなくなっていた。
「あ、アルト?」
『カカッ!召喚されたばかりの戦闘で疲れたようだ!少し休ませてやったらどうだ?』
リアムの言葉にアクアは「そ、そうさせてもらいますわ!」というと、逃げるようにその場を後にしたのだった。