魔法学院
「あれー?なんだ、ノアも観に来たのか。リュカは一緒じゃないのか?」
僕は先生の言葉にムッと顔をしかめ無言のまま校庭端にある階段へと腰を下ろした。
「ははは、悪かった、悪かった。もう契約してるあんたらにやることはないけど、まあ見学くらい、いくらでもしてってくれ。」
そういう母の顔はキラキラと輝きどこか楽しそうだった。
「…僕が、“普通”だったらー…母さんも、そんな目を向けてくれた…?」
絞り出すように呟いたその言葉が母の耳に入ることはなかった。
代わりに「先生見てー!エマが白蛇と契約したのー!」という生徒の声に「白蛇!?それはすごいな!この授業をしていてそれを召喚したのは久しぶりだよ!」なんて興奮気味に駆けていってしまった。
後に取り残された僕は続々と召喚を成功させる生徒たちを後目に「はあ…」と小さくため息をつく。
「わたし白ネズミだったー」
「わたしは白ミミズク。」
「そんなの全然いいじゃないか。俺なんて白カエルだぜー」
様々な声が飛び交う中、僕は天を仰ぐ。
普通、“白”だよな…
この世界には白しかいない。
カラスや猫もおとぎ話や空想の世界には黒いものもいるが契約の魔物は全て、白いのである。
黒は存在しない、はず…なのに、な…




