魔法学院
「お。お二人さん今日も揃って登校とはお熱いね~」
教室のドアを勢いよく開けると待ち構えていたようにそう言い放たれた。
「かあさ…先生…ギリギリ、セーフですよ」
ボサボサの髪もそのままに息を切らす僕とは裏腹にリュカは涼しい顔で
「おはようございます、エミル先生。」
とだけ答えるとさっさと自分の席へと向かっていった。
「あらら…ま、いいか。じゃあみんな!全員揃ったことだし、授業を始めるわよ!」
母さん…もとい、エミル・ハワードは腰まである長い灰色の髪を右へ左へ揺らしながら教卓へと向かった。
その向かう途中「ディストリバーテ」とどこからともなく取り出した青い石のはめ込まれた30cmほどのステッキを降るった。
するとその声に反応するかのように空中に赤い火花が塵だし、ある模様を描き始めた。
「これが召喚に用いる魔法陣です。少しでも間違えると大事故に繋がりかねますので一言一句間違えないよう慎重に描いてください。」
彼女がそう言い終わるか言い終わらないかのうちに教室中がザワザワと騒がしくざわめき出す。
「楽しみだな!俺の契約の魔物なにがでるかなー!!」
「だなー!猫なんかでたりして!」
「ははは、ないない。猫を召喚できるのなんて1000年に1人って言われてるんだぜ?あの2人くらい魔力があれば話は別だけどー…お前にはぜーったい無理だよー」
皆口々に言い合っていると先生が手をたたき「はい、では校庭に移動しますよー」という言葉を合図にわらわらと席を立ちだした。
僕たち2人を残して、…。
先程まで騒がしかった教室の中が一転しシン…と静まり返る。
外からは先生の「静にーーー!!」という怒鳴り声が聞こえてくる。
喉に何かがつかえたような感覚。
息苦しさに僕は前髪をくしゃっとかきあげると、椅子にもたれかかり窓の外に目をやった。
青く澄み切った空はまるで生徒たちの門出を祝うかのようにどこまでも続いていた。
「……1000年に1人…か…」
そう小さく呟くと短くため息を付きリュカの残る教室を後にするのだった。




