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今日もグレンは良く分からない


Act.7


Side スカーレット


バタン、バタバタバタ!

と、大きな音にベッドから飛び起きた。周りを見渡すが、見慣れていない客間。ベッドはふかふかで快眠だったのに、と思いつつ窓をのぞいた。そして、その瞬間、男が玄関らか放り出された。何度か見たがシャービスだ。


「スカーレット様、起きておられますか?」


聞こえた老婆の声に「はい。」と答えれば、ギイっと音を立てながら扉が開く。老婆の手に私が着て来た服が持たれているのに少しばかり安心した。


「昨日預かりました服です。お着替えに補佐は必要ですか?」


「自分で着替えられますから大丈夫ですよ。」


老婆は私の言葉にニコリと笑って部屋を後にした。老婆の置いて行ってくれた服はほつれも直されていた。着替えて、部屋を出れば、そこにはグレンが立っていた。


「おはよう、スカーレット。」


少し眠そうな見慣れた顔に少しだけ安心した。


「おはよう、グレン。」


そう答えると彼は一気に目が覚めたのか、私を凝視した。どうしたのか?と首を傾げれば、グレンは頭を抱えていた。


「はー、早く結婚したい。朝から『おはよう』聞けるとか幸せ過ぎる。」


なんで結婚する話になっているかは彼の頭の中だから理解できないけど、最近はそれを否定するのが面倒くさくなってきた。それを気にすることなく、私はオセがいるであろう応接間に向かった。案の定、というか想像通りにその部屋にはオセと、ふくれっ面をしたシャービスが座っていた。


「あー!!スカーレット、グレン!お前たち酷くない!?俺、ごみ置き場で朝まで寝てたんだけど!!」


シャービスの言葉にオセはニコリと笑った。


「あら、被害に合わないように財布だけは取っといて上げたでしょう?」


ニコーリ、笑いながらオセは机の上の財布を指さした。これ以上ごねても、どうにもならないということだろう。まあ、数字持ち(ナンバー)の序列で言えば、オセは5番(シンク)でシャービスは7番(セブン)で、シャービスの方が強いが、そう言った物理的措置に出ないシャービスは大人だな、と思った。その辺りの加減はオセも見極めているだろうが。


「あー、もういいや。それより朝飯食べよ、腹減った!」


シャービスは諦めたようにそう言った。ある意味、話題を変えてくれて助かったとも思った。老婆と老爺の二人の案内で、食卓に案内されて、席につく。バターの香りが強いバターロールに、フレッシュなチーズと牛乳、とろとろ卵のスクラブルエッグ、に添えられたベーコンはカリカリだ。どれも美味しい。そんな感じでもぐもぐ食べていたら隣からの視線が五月蠅い。


「なに?」


「うん、ご飯だけは妥協しないね、僕。」


……ダメだ、話が通じない時のやつだ。もう気にすることはなく、食事を終えた。正直、素材が美味しいと、簡単な料理も美味しくなるとはこのことだと思った。


「で、グレン、スカーレット。調査はヴァゼルン山脈の中に入るつもりかしら?」


食後のコーヒーを一口飲んだオセは確認をしてきた。同じようにコーヒーを飲んでいたグレンはカップを皿に戻した。


「そのつもり。生態系を調査って言われているけど、実際、何かあるらしいからね。」


「そう、じゃあシャービス。」


オセの言葉に反応したシャービスは目の前に二つのカードを出した。片方はグレン、もう片方は私のフルネームが書かれたカード。


「身分証明書。これがあれば二人ともヴァゼルン山脈のどこでも入れる。危険なところにも入れる許可にしたから、気をつけてな。あと、危ない所は警告出るようにはしてあるから。」


そう言いながらシャービスはカードの使い方を説明していく。見た目と行動は馬鹿っぽいが、一応彼は、スペードの国で随一と言われている魔法道具の技師である。こういうところを見ると本当に凄いのだな、と改めて思わされた。


「大体は使い方分かったよ。じゃあ、僕とスカーレットは行くね。」


グレンの言葉に反応して立ち上がった。ひらひらと手を振るオセと、大きくぶんぶんと手を振るシャービスに軽く笑いかけてから外に出た。ピューと指笛を鳴らすグレンに反応して二匹の羽ばたく音が聞こえてくる。二匹の音が一番近くに来た瞬間、グレンと私は魔法で飛び上がる。竜巻を起こす感覚の魔法で飛び上がれば、ガズーも、リブリンもそれぞれの乗り手を背に受け止めた。


『おはよう、ガズー。リブリンも。ヴァゼルン山脈の麓まで飛んで欲しいの。』


『おはよう、スカーレット。分かったよ。でも何か嫌な声がするんだ。』


『嫌な声?』


『悲鳴?っていうべきかな?それと、昨日ヴァゼルン山脈の方に行ったのだけど、途中から入れなかった。』


『入れない?』


『ええ、私も試したけれどダメだったわ。』


急に話に入って来たのは並行で飛んでいたリブリンだった。


「グレン、昨日ガズーもリブリンもヴァゼルン山脈の方に行ったけど入れなかったらしい。あと、なんか悲鳴みたいなものが聞こえたらしいよ。」


グリフォンとヒポグリフから聞いたことをそのまま伝えると、グレンは少し悩んだような表情になっていた。魔獣除けのようなものが働いているのではないかと思った。


「スカーレット、とりあえず僕と二人だけで降りよう。グリフォンとヒポグリフにはこの辺りで旋回しておいて欲しいと伝えてくれる?」


「分かった、『ガズー、リブリン、この辺りで旋回して待っていてくれないかな?』」


『分かった。』


『いいわよ』


二人の声に大丈夫とジェスチャーすれば、グレンはリブリンの背中から飛び降りた。同じように飛び降りた先はヴァゼルン山脈の中心にある『中山(なかやま)』の火山。降り立った瞬間、じんわりと汗がにじんでくる。


「スカーレット、とりあえず中山から調査しよう。動物がいたらなるべく話をしてくれる?」


「分かった。話が通じればだけどね。」


その言葉が言霊になるとは、思っていなかった。




とりあえず、書けたところまでは上げていくスタンスで行きます!

まだ序盤なのでこの調子だと長いのかな?と勝手に自分で思っています

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