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ちょっと確認したいけどいいかな?

Act.6


Side グレン


オセの家はいたって普通の屋敷と言うべきだろう。流石はギルドマスターといったところの大きさだ。使用人も年配の夫婦とその孫らしき少年の三人がてきぱきと僕とスカーレットの部屋の準備を始めていた。


「ごめんね、急にお客さんで。」


「いいえ、オセ様。数字持ち(ナンバー)の方を接待できる機会など一生に一度あるかの光栄でございますよ。むしろ私らは誇らしいです。」


老爺はそう言いながらにこやかな笑みを浮かべた。老婆も少年も同じように嬉しそうに笑う。数字持ち(ナンバー)と会えるということは、国民にとって栄誉なことなのは間違いない。彼らからするならば、オセに仕えること自体、栄誉なことで、更に僕とスカーレットを接待できるのも栄誉なことなのだろう。王都ではなく、ここが辺境であることも相まっているだろう。


「ささ、スカーレット様、湯あみをなさいましょう!」


嬉しそうに老婆はスカーレットを連れて行った。多分、帰ってくるときには可愛らしい格好に変わっているのだろうな、と思った。ドスッとソファに乱暴に腰を掛ける音が響いた。視線を向ければオセが足を組みながら、『座りな』とジェスチャーするように反対側のソファを指さした。


「聞きたいのだけれども、最近の『王命』がきな臭い気がしてしょうがないのだけれども?」


オセの言わんとすることも分からないでもない。最近の『王命』は下らないようなことで、1番(エース)の僕や、2番(デュース)のヴァネッサを動かしている気がする。それが、まるで王都から僕とヴァネッサを引き離すためにしか見えないのだ。


「それに関しては僕も思っているけど、どうにもアーネストの考えが読めない。今回はアルビオンが王都にヴァネッサと残るようにしたから大丈夫だと思うけどね。」


ため息を吐きながらも自分そっくりな従兄弟を思い浮かべた。どうにも彼の考えが読めないの だ。元々、彼は(キング)になどなりたくはなかっただろう。だが、この国の国宝は『アーネスト・ブルーム』という僕の従兄弟を(キング)に選んだ。


「国宝が選んだからには、選んだ時点ではアーネストが一番適任だったはずなんだけどね。人は間違いなく変わるから……僕もそろそろ真面目に考えないとかな……。」


そう言いながら考える。スペードの国の数字持ち(ナンバー)の選定は、国宝の時計が行う。『政変』、もしくは『他国からの侵略による滅亡』、その他諸々に国が亡びる原因はある。


だが国が亡びる決定打は(キング)が死ぬこと。


前の(キング)はスカーレットとヴァネッサの父、キングストン卿が起こした『政変』により、打たれた。


そして新たな数字持ち(ナンバー)が選ばれた。


1から12番までが国宝の時計の数字と共に名前を刻まれ、(キング)はその時計自体に名前を刻まれる。この国宝は、国が入れ替わるとき、一番、国の事を思っていた人間が選ばれるという。当時、14歳で、僕と同じ年であったアーネストはそれほど強い願いがあったのだろう。逆に僕には1番(エース)。つまり、その13人の中で一番思いが弱かったとも言える。


「……『政変』?」


迷ったようにオセはそう言った。けれども僕は首を左右に振った。


「それはまだ考えていない。ああ見えてもアーネストはいい奴だからね。出来ることなら生きて(キング)を全うして欲しい。

……あと、スカーレットと離れたくないし。転生して、もう一回探すのは辛い。」


僕の言葉にオセは少しフリーズしてから、笑い出した。


「あははは、本音が酷い!」


本音が酷いと言われても、思っている事実は変えられない。転生することがあるかは分からないが、竜族の番と言うのは同じ魂に反応すると言われている。長命種である僕らと、魔力のない人間ならば生きる時が違いすぎる。だから竜族の末裔である僕が、スカーレットが他者よりも膨大な魔力を持っているのは、非常に嬉しいことなのだ。それだけ一緒にいられるのだから。


「でも、気を付けなさい。アーネストはかなりの策士よ。私、嫌な予感がしているのよね。」


「まぁ、気を付けるよ。明日、山の方に行く。」


「オセ様!スカーレット様のご用意ができましたよ!」


老婆の明るい声が響いた。そして、現れたスカーレットは普段は着ないようなふわふわのレースがあしらわれた淡い青のワンピース。それにあわせて髪にも、首にも、青いレースのリボンが飾られている。


「オセ、何あれ天使?」


「私のいつかスカーレットに着せてやろうコレクションの一番上のやつよ!あと、天使じゃなくてアンタの相棒よ。」


「着せてやろうコレクションってなんだよ、他も見たい……。」


「絶対着ないからね!って言うか、これ可愛すぎだよ……。」


そう言いながら頬を少し赤に染めつつ、裾の長さを気にしているスカーレット。膝から下が素足には、頭に飾られるレースのリボンと同じ素材のものが巻き付いており、膝で結ばれている。普段は、スカーレットは短パンに、膝上の編上げブーツだから、こんな可愛らしい姿は新鮮だ。


「似合っているわよ!スカーレット、アンタ可愛いのだから自信持ちなさい。」


オセの言葉に僕も頷くが、スカーレットはそれを素直に受け取ってくれない。どうして言葉を受け取ってくれないのかは分からないままだけど。


「明日、服返してね?」


「全く……分かったわ。だけどソレ持って帰っていいわよ、アンタの為に作った服だから。」


「い、いらない。」


そう言って頑なだけど、その服は僕が持って帰ろうと思った。


あと、オセはなんでスカーレットのピッタリのサイズを知っているかは、今夜聞く事にしようと、心に決めたのだった。



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