凍った記憶と『青の炎』
お久しぶりです!
元気に社畜しながら、続きを書いたので上げます!
さて、もう少しで完結だけど、ながいなぁ
Act.14
Side グレン
森を抜けて、街道を抜けて、そして王都の中を走り抜けていくヒポグリフ。その速さに人々は突風が通り抜けたかのようにしか見えないだろう。僕はその速さの風圧を抑える魔法を展開し続けた。
王都の道を駆け抜け、王城の中に入れば、多くの人間が倒れていた。見る限りでは眠っているだけ、なら気に留めるほどではない、とカズーに伝えれば、同様の意見だったのかそのまま走り続けていた。
直感だったのか、カズーは迷わずに王座の間に走り込んだ。扉は開かれたままで、その先に見える二つの影。
スカーレットの頭に手を乗せるアーネストの姿。
スカーレットの目には浮かんでいる恐怖。
「スカーレット!」
叫んだ名前。それと同時にバチン、と大きな音が響いた。思わず、スカーレットではなく、ヴァネッサを見た。彼女の頭上に浮かんだ魔法陣が、崩れ去っていく。
「ダメだ、スカーレット!」
僕の叫びとほぼ同時に、爆風が起きた。
吹き飛ばされた王座の間。
国宝以外の総てが、一瞬にして灰燼と化した。
その中心に燃え上がる『青の炎』。
僕のトラウマを呼び起こすのには充分すぎる光景だった。
「あーあ、スカーレット死んじゃうね?」
どこか楽しそうな声が響いた。その声の主は僕と同じように爆風に吹き飛ばされたようで、砂埃にまみれていた。擦り傷もできている。でもケロッとして笑うアーネスト。
こみ上げてくる怒りが抑止力などなくし、気が付けばアーネストを床に叩き倒して、そしてその首を竜化した手で絞めていた。
「どう、グレン。番を喪う苦しさは?苦しいだろう?悲しいだろう?で、自分が不甲斐ないだろう?」
首を絞めているはずなのに、アーネストの表情は変わることなくにんまりと笑う。
「早くしないと、本当にスカーレット死んじゃうよ?」
にんまりと笑うアーネストの頬を一発、全力で殴った。それでもそのにやけ顔が変わらないことに言いようもない怒りが溢れ出てくる。
『キュィ!!』
突然、僕の首根っこがつかまれた。その掴んだ主はくちばしで、僕の服を引っ張っていた。
「……カズー?」
『キュィ!!』
そんなことをしている時間はないだろう!そう言われているようだった。ずりずりと僕を引っ張って、そして『青の炎』が巻き立つその場に立たされた。
「どうしろと?20年前は記憶ごと凍らせることでスカーレットを『延命』させたんだよ……。思い出しちゃえば……死ぬしかないのに。」
目の前の『青の炎』。
それは、スカーレットの家、『キングストン』の血族にのみ発現する『古の魔法』と呼ばれるものだ。触れたものを灰にするまで焼き尽くす、悪魔の魔法とも呼ばれる。
そして、古の魔法は、数字の制約を受けない。
「あれー、諦めちゃうんだ。やっぱり自分の方が可愛い?」
てくてくと、歩きながらこちらに来るアーネスト。ギリッと奥歯を噛み締めて、そして自分を落ち着かせるために息を吐いた。
「……『青の炎』は愛する者だけは焼かない。」
僕の言葉にアーネストはにんまりと口を歪ませる。この男は、昔から何がしたいのかはわからない。同じ顔、同じ血統で、一日違いに生まれた従兄。
「試さないのかい?それとも怖い?番に愛されていない事実を知るのが。」
まるで鏡のようなその顔を見ながら、もう一度大きく息を吐いた。
「……愛されない事実を知った瞬間に、僕は灰になるだけだよ。アーネスト、やっぱり僕は君を好きになれない。」
そう言い残して僕は歩き出した。
一歩、また一歩と立ち昇る『青い炎』へと歩く。
どうか、スカーレット。
君が総てを思い出しているように、そう願いながら。