君のもとに走る方法
お久しぶりです!
一応生きてます!
ぽつぽつ書いていますが、仕事に忙殺されておりますので、本当にカメのようなペースで描き上げます(´;ω;`)ウッ…
Act.12
Side グレン
空に暗雲が立ち込めた。
突然拭き出した突風だが、火竜は難なくヴァゼルンの街まで降りて来た。旋回しつつも、降り立った先。街の一番の広場だった。
そこでは多くの人々が空を見上げていた。
人、獣人、エルフ、ドワーフ。
この国の人間はこの空をかつて見た人間が多くいる。
10年、まだその時間しか経って居なのだ。
誰もがその空に恐怖した。
「なんで、アーネスト。」
僕の呟きは突風にかき消された。誰よりも国を思う気持ちを持った従兄弟が政変を起こすなんて考えたくなかった。
「グレン!!」
叫ばれた声に僕は火竜様の背中から降りて、この街の最高権力者と言っても過言ではないオセの所に走った。
「オセ、あの空。」
「やっぱりそうよね。『政変』。」
ガタガタと震えるオセの様子に、シャービスはオセの方を抱いていた。普段の彼からは想像できないほど厳しい視線で空を見上げていた。空を見れば突風が吹き荒れ、覆い茂った緑の葉を刈り取っていく。
明らかに、空の様子がおかしい。そして原因は間違いなく王都に見える魔法陣。
「火竜様!お願いだ!僕を王都まで運んでくれ!!」
僕の声に反応した火竜は空を見上げて、そして悲しそうな顔で首を振った。
「無理よ。私でもこの空を長時間、飛ぶのは不可能に近いわ。この風には魔力が籠っている。つまりは『魔法生物』は飛べない。」
そう言いながら彼女はジッと空を見た。ハッと思い出したように視線を周りに向けた。そこにいたのはこの街まで送ってくれたグリフォンのリブリン。
「リブリン!」
僕の声に気が付いたグリフォンは視線を合わせるが、首を左右に振った。火竜が無理なのにグリフォンが飛べるわけがない、とでも言いたそうな顔だった。
他に王都に向かう手段を頭の中で試算するが、一番可能性が居あるのは僕自身が『竜化』して走ることだ。だが、果たして間に合うだろうか。いや、考える時間が勿体ない。そう思った瞬間、背中の布が引っ張られた。驚いて振り返れば、僕の背中の布を咥えたグリフォンが僕を引きずるようにヒポグリフの所に連れていく。
パッと服を離したグリフォンがヒポグリフに何かを訴えかけているようだった。
僕には二人の会話は分からない。
どうするべきか悩めば、ドス、ドスっと地震のような振動を立てながら、火竜が僕たちの所に歩いてきた。
「そのグリフォンが、ヒポグリフを説得しているわ。確かにヒポグリフなら地面を高速で走れる……空を飛べない状態であるなら、この場所での最速はそのヒポグリフだからね。」
キュイキュイと互いに会話をしているのだろう。ヒポグリフは諦めたようにため息を吐いた。そしてその腰を下ろして僕を見た。
「乗せて、くれるのかい?」
僕の言葉にヒポグリフは頷いた。彼はスカーレット以外を乗せることはなかった。でも言葉は分からないが『乗れ』と言っているようだった。
「うわっ!?」
突然体が浮いて、そしてヒポグリフの背に乗せられる。どうやら見かねた僕をリブリンがくわえて乗せた様だった。
「ありがとう、リブリン。あと、頼むよ、『カズー』。」
スカーレットが呼んだようにヒポグリフの名を呼んだ。ヒポグリフは嫌がる素振りもなく、走り出した。陸上の最速と呼ばれるヒポグリフのスピードは、魔法で防壁を貼るレベルだった、とだけ言っておく。