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火竜様は女の子

Act.9


Side スカーレット


女性、いや子供の女の子の叫び声が頭に響き続けている。


『痛い』


『助けて』


『苦しい』


『辛い』


『もうだめ。』



早く助けないと。そう思った。焦る気持ちは歩幅を早くさせていた。普段であれば、グレンが空中に跳躍しても、魔法でその足場を作る補佐をする。一番、連携を取っていた相手だから。でも、あの時、焦ってしまった。目の前の杭を破壊した瞬間、グレンが下に落ちていくところだった。慌てて魔法陣を展開したけど、間に合わない。


「グレン!」


叫んだ瞬間、翼のはためく音が響いた。

ドラゴンが、手を伸ばしてグレンを受け止めた。


「ありがとう、お兄さん。」


先ほどまで、悲鳴だった声が、その場で響いた。驚いたようなグレンの顔。ホッとしたような彼の顔を見た瞬間、思わず飛び出した。魔法陣の足場から飛び降りてグレンに抱き着いた。その腕のなかで感じる鼓動はいつもよりも早く、でもその鼓動は私を安心させた。


「えっと、ありがとう?」


しばらくたってからだったと思うが、グレンが視線を上にあげた。お礼を言ったのはそのドラゴンに対してだったのだろう。先ほどはしっかりと見る余裕はなかったが、赤い鱗の赤いドラゴン。マグマ溜まりの中に住まうドラゴンと言えば、火竜。だけれども、彼女は少し小さく見えた。


「み、見てないから、好きにやってもいい、けど、せめて、私の手から退いてくれない、かな?」


その瞬間、自分が何をしているか理解してしまった。慌てるようにグレンから離れれば、火竜は手をマグマ溜まりにつながるらせん状の道に近づけて、私とグレンを降ろしてくれた。振り返り、その大きな身体を見れば、鱗を壊して痛ましい傷が何か所も見えてくる。


「火竜様、ごめんなさい。女の子なのに傷つけちゃって……。」


その言葉に火竜は驚いて目を見開いた。そして彼女は鱗を見て、そしてべりっと、剥いだ。あまりの光景に驚いていれば、彼女はその傷ついた鱗を下の、マグマ溜まりに捨てた。


「気にしないで、一か月もすれば戻るし、辛かったからこんな傷ぐらい平気だよ?」


そう言いながら砕けた鱗を次々に剥いではマグマ溜まりに落としていく。


「そっか……でもごめんね?」


「僕からも、ごめんね。」


隣で同じように謝るグレン。逆に火竜は首を左右にぶんぶん振って笑った。その笑顔を見れば、傷つけちゃったけど、判断は間違っていないと思えた。


「大丈夫よ、気にしないで!ところで貴方たちなんでこんな所に来たの?おかげで助かったけれども、人と会うのなんて久しぶりだったわ。」


空を飛んだままの彼女は思い出したように尋ねてきた。


「そうだった!この辺りで生態系の調査と言うか……。」


「変わったことがないか調べに来たんだ。『迷いの森』で水龍に会って、最近鳥がこちらから逃げてくるとは聞いていたんだけどね。」


「ああ、多分、アタシの所為ね。まったく、間抜けよね。」


そう言って彼女は頬杖をつくような腕の組み方をした。何というか、やっぱり女の子だ。


「マグマが気持ちよくて寝ていたら、変なのに攻撃されて、気が付いたら咆哮する(叫ぶ)は、暴れるは、壊すわ。とにかく痛いし、気持ち悪いし最悪だったわ。」


「気が付いたら?」


グレンは火竜の言葉が気になったのか、その言葉を繰り返した。言われてみれば気になった。ドラゴンと呼ばれている種族は基本的に気配に敏感だ。その血を引くグレンだってかなり気配に敏感だ。時々、私が驚くほどだ。


「そう、おかしいのよ。本当に気が付いたらって感じ、訳分かんないし。」


その言葉にグレンはまた考え込むようだった。


「あ、ねえ、ちょっとお願いを聞いてくれない?」


チラッとグレンを見た彼女がそっと私に言ってきた。まあ、小声でも聞こえてしまうから、グレンにも言っているのだろう。


「聞ける内容なら聞くよ?」


「ちょっと、寝床を見て欲しいの。」


「寝床?」


「うん、そこで寝ていたらこんな目にあったから、もしかしたら他にも何かされているかもしれないでしょ?寝床を確認したいからついてきてくれない?アタシ、小さい所を見るの大変だし。」


「いいよ。」


真っ先に答えたのはグレンだった。ニコッと人当たりの良さそうな笑顔で、彼女に笑いかける。こうやって見ると綺麗な顔をしていると思うが、いつものイメージがあり過ぎてすべて台無しだな、と思った。ジッと見つめていれば、視線に気が付いたグレンが手を出した。


「とりあえず、行こうか?」


「うん。」


何も迷わずにその手を取れば、火竜は何故か楽しそうな顔をする。その火竜が大きな手をこちらに差し出した。


「下まで降りるのは時間がかかるわ。アタシが連れていくから乗って。」


「ありがとう」


グレンは迷わずにその手に乗り、繋がれた手を引かれて私も乗った。なんだか犬の肉球みたいな硬さで、不思議な感触だった。


「ちょっと降りるわよ!」


その瞬間、一瞬、重力が働くような感覚。そしてあっという間に最下層に着いた。落ちるその瞬間の足者とのスースーするような感覚が残り続けて、膝が笑うという状態になった。


つまり、腰が抜けた。


考えてみて欲しい。一瞬にして、床が抜けて落下した気分だ。膝だって笑う気に決まっている。


「スカーレット、怖かったのは分かったけど、そろそろ離れてくれないかな?僕の理性だって限界なんだよ?」


「い、意味わかんないこと言わないで。動けないのよ!」


その言葉にグレンがこちらを見て、そして少し赤みがかっていた頬から色が引いた。グレンはひょいっと私を持ち上げて、そして岩場の腰かけられそうな場所に降ろしてくれた。目の前のマグマ溜まりをしっかりと眺められる場所。


「僕が見てくるからちょっと待っていて。」


そう言いながら額にキスを落していくグレン。サラっとこういうことをしていくが、こういう時のグレンは不思議と心地が良い。急にガラッと対応が変わるときがあるので、警戒するに越したことはないけど。


そんなんことを思いながらぐつぐつ煮えたぎるようなマグマを眺めていた。




戦闘シーンって難しいな……って思っています

でも、書くのって楽しいな~と趣味全開で書いておりますので(笑)

今日はここまでです!!

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