悪役令嬢がバグを雪だるま式に発見してきます
なろうラジオ大賞3参加作品1000文字以内の短編です。2分ぐらいで読めますよ。
『悪行極まる令嬢! そなたとの婚約を破棄する!』
「誰があんたと! こっちから願い下げよ!」
悪役令嬢は今置かれている状況を知っている。これは恋愛ゲームの世界だ。
フラグを回避し、ゲームが作るストーリーの通りにはならないと決心していた。
「定番で行くと、次は怒った王子からの断罪ね。投獄か死刑か。追放もあるけど、自ら逃げた方が良さそうだわ」
断罪を回避するには、まず王城を脱出する必要がある。
周りを見渡し兵士の目を欺きながら、脱出の道を探る。
すると、壁沿いの辺りに妙な違和感を見つけ、調べれば外に続く道の様だった。王家専用の脱出通路なのかもしれない。運が良かった。
王城を抜けても、周辺は森に囲まれており、魔獣の住処となっている。
魔獣同士の威嚇を近くに感じながら、息を殺して森の中を進むと、明るい月の光がこぼれる、まるで夜の妖精が現れそうな場所を見つけた。
その場所は魔獣が近寄らなかったので、座り少し休む。
『そこに居る女、大丈夫か?』
不意に声をかけられたが令嬢は、落ち着いて振り向く。どことなく親しみがありやや情けない感じの顔の男性。聞けば、それでも隣国の王子だそうだ。
『おお、何と美しい。麗しの貴女よ、私と共に来てはくれないだろうか』
「んー、こんなの誰が付いてくのよ」
◇
「ちょっと待った待った!」
「ん、何よ」
「確かに、『俺が作った悪役令嬢のゲームやってみてくれ』って言ったけどさあ!」
「だからやってんじゃない」
幼馴染が悪役令嬢のゲームを作ったからプレイしてくれ、と言われて私は先ほどまでプレイしていたのだ。
「やり方がバグ探す仕事の人! 粗探し職人か!」
「うるさいわねーどうやろうが勝手でしょ」
「婚約破棄は『はい』か『いいえ』を選んでよ! リアルで喋ってどうすんの!」
「だって嫌いなんだもんアイツ」
「王城からバグを利用して壁抜けすんなし!」
「抜けれるんだから仕方ないでしょ」
「魔獣の森、勝手に安全地帯見っけないで」
「あれは私悪くないでしょ」
「そして隣国の王子! 話ちゃんと聞いてあげてよ!」
「あー、あれね……」
私は、幼馴染のどこなく親しみがありやや情けない顔をまじまじと見て、溜息をつく。
「ゲームのキャラクター使ってキザな告白しようとしてんじゃないわよ。ちゃんと私を見て、男らしく言いなさいよ」
「うっ……」
消え入りそうなうめき声をあげ俯いた幼馴染が、一呼吸おいて真っ赤な顔を上げる。
「アナタが好きです」
「よろしい」
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