表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「」  作者: 胡乱な客
1/1

プロローグ

初めての投稿です。誤字脱字には気を付けていますがあったら申し訳ございません。


松本永嗣は森をかけていた。草が生い茂っているのをかき分け崖を飛び越えてひたすら走っていた。誰が見ても疲労が溜まっているのが分かるくらい彼はボロボロだった。そんな状態で何とか走っていると石でできた遺跡があった。古い遺跡なのか全体は草やコケでおおわれている。壊れかけの入口を発見した。ここで間違いないだろう。


「お邪魔します。」


と、疲労で今にも倒れそうな体に鞭打って入口を通る。内部は神殿のようになっていて奥の祭壇らしきものに何かが置いてあった。こういうものは祭壇近くにトラップがあるかモンスターが隠れているかだが見たところそんな雰囲気はなかった。念のため《気配察知》を行ったが何もなかった。安堵した瞬間力が抜け、思い出したかのように激痛が走った。【ヒール】をしようと思ったがそんな魔力はもう体に残っていなかった。異世界の宗教はよくわからないがとりあえず十字を切って歩を進めていく。祭壇には長方形の黒い石があり真ん中に小さな丸い穴があいていた。永嗣は首から掛けていた物を出した。それは小さな丸いガラス細工だった。ビー玉の様なものだが青を基調とする綺麗なデザインである。それを石にはめこんだ。すると祭壇の後ろにあった壁がいきなり瓦解した。出てきた壁は白く、ドアがあるだけの殺風景なデザインの壁だった。目的の場所に着いたようだ。

中に入ると図書館のようで本が四方八方にあった。ところどころに書見台があり真ん中に掘りごたつの様な空間がありテーブルと椅子が置いてある。机の上には黒い手帳が置いてあり一見してかなり高価な物だとわかる。手帳を開いてみると見慣れた字が視界に映り込んでいた。


「その日記はご主人様がいつも書いていた日記です。」


振り向くと白髪赤目の16くらいの女の子が立っていた。気配はなかった。どこから来たのだろうか。ご主人様とはどういうことだろう。あいつは生きていたのか。それともあいつに似たほかのだれかなのか。疑問がいっきに膨れ上がった。とりあえず聞くべき質問は1つ。


「君のご主人様って誰だ?」

「白柳 恭介様です。松本永嗣さん。あなたのこともよく話されていました。」


やはりここで生きていたか。白柳が立ててそうな神殿の話を聞いた時からもしかしたらと思っていたが正解だったようだ。


「疲弊していることは承知しておりますが、どうやってここに来たかだけ教えてください。」


俺はぼんやりと今までの事を思い出しながら語った。

=============================

あいつはどうなったのか。それだけが心配だった。白柳は生きているのか。それだけが心配だった。あっちの世界で普通のありきたりの学校生活を送っていた時も。異世界に召喚された時も。



あいつは俺の幼馴染であり、親友だった。幼稚園でも、小学校でも、中学校でも。

どちらが先に話しかけたかはよく覚えてないが二人とも星が好きで俺が小学校のクラスで自己紹介の時に星が好きだと言って共通の趣味を持った友達として仲良くなったのがきっかけだった。確か小学校の時からあいつはみんなに対して敬語で話していた。そのときはよくわからなかったが後ほどあいつが有名な製薬会社「Whitewillow」の御曹司であることを知った。しかし俺に対して敬語ではないことはいまだに謎である。

小学校3年生の時ではあいつが受験して国木田大学付属中学校に入ると言った。俺も行きたかったがそこは名門校で私立のため警察官の父を持つ俺と、有名社長の親を持つあいつではお金も学力も身の丈が合わなかった。しかし国木田大学は名門校であると同時に宇宙科学で世界的にも有名な月城 敦教授が理科の先生をしていることで有名だった。月城先生が月に一度講義をしに来てくれる。月城先生は自分が星に興味を持つきっかけとなった本の作者のためどうしても彼の講義を聞きたかったから必死に親にお願いして受験させてもらった。

あいつはというと、あいつはもともと学力は高く余裕で合格した。俺も死に物狂いで勉強し合格。念願の国木田大学付属中学に入り天体観測部に入部した。

月城先生は思ったより若く研究者のわりに引き締まった身体をしている30代の男性だった。彼の気さくな表情はテレビにも取り上げられ一定数のファンも存在する。目的の天体観測部では本格的な星の研究を行っていて、俺は月城先生のもとで土星の観察を行っていた。時は過ぎ中学二年生のとき屋上でお弁当を食べていると、あいつがきて神代学院に受験することになったと伝えた。親の跡継ぎのため勉強しないといけなくなったらしい。

神代学院といえば世界ランキング3位の頭の良さを誇る高校で、偏差値は97と異常の数値だ。白柳の入学した当時の全校生徒数は72人だったという。あまりにも難関高校すぎるため、入学人数が15人が普通だという異常な高校だ。神代高校は通称神代模試と呼ばれる全国模試を10月に行う。模試は5科で行われるがその問題の難易度は異常で数学の難易度は中学数学オリンピックの正答率15%未満の難易度の問題が8割を締める。英語は英検準一級取得者が解いて平均点20点台の問題が並ぶ。最後の長文読解にはマサチューセッツ工科大学の卒業論文の一つが問題になっていた。つまり普通の高校生が解ける内容ではない。この模試の上位1000名が11月に発表され2月に二次試験が行われる。このテストは神代模試の更に難しくなったもので、数学オリンピックの正答率3%未満の問題が並ぶ。2014年に行われた二次試験の大問6は世界でも最著名な理論物理学者が作った問題で正答率は0%悪魔の大問と呼ばれた。英語は英検1級余裕で合格した人でも難しく、難解な英単語が多く出る。ここで上位50名が選抜されて最終試験の面接が行われる。面接は2:1で行われて神代高校の先生と、一流企業の社員が呼ばれる。神代の面接は特徴的なものが多く、カナダでは1日にどれだけの人が自転車を修理に出しますか?と聞かれたり、フェルマーの最終定理を6歳児でもわかるように証明しなさい。などの変わった質問が出される。この面接では全員が受かる可能性があり、30名が合格で入学できるがこの面接で落とされる受験生が後を絶たない。


そんな高校に受験することになったからあいつは常時ついていた目の下の隈を更に濃くして勉強していた。そしてあいつは神代学院に合格した。合格人数は25人だったという。


そして1か月前、あいつと久しぶりに電話で話した。俺もあいつも同時期に修学旅行らしく俺はオーストラリア、あいつはパリに行くらしい。お互い観光地の有名な物をお土産に買って送ろうという事になった。本当はこれで終わるはずだったが他にもいろいろ話したせいで長電話となってしまった。


時は流れ一週間の修学旅行の3日目。

事件は突然に起こった。その日は自由行動となっていて、俺は天体観測部の部員と一緒にサーキュラー・キーのオペラハウスに観光しに行った。オペラハウス観光後ロイヤルボタニックガーデンを探索後ホテルに戻った。

その日の夜は8:00からバイキング形式で小ホールを借りて夕食会だった。ホールは防音性の上鍵がかかるためいくら騒いでも大丈夫で防犯の面も安心だと修学旅行前のミーティングで担任の水無瀬が言っていた。少し早く7:55分に着いた俺は会場でスマホをいじくっていると着信が1時間前に二回とメッセージが一通届いていたことに気づいた。あいつからだった。メッセージの内容は気を付けろ。警戒せよ。とだけ書かれていた。あいつは不要不急の連絡はしないので不思議に思って電話してみたが電波がおかしいらしく通話ができなかった。さっきまで電波は五本立っていたはずなのに見てみると一本もたっていなかった。電波をつなごうと試行錯誤しているうちに人が集まりだしてやがて満員になった。みんな電波がつながらないらしく首をかしげていた。このときにホールから電波をつなぐために外に出てたら結末は変わっていたかもしれないと今更ながら思う。夕食会は8:00ちょうどに始まった。夕食会は楽しく電波がつながっていないことも忘れていた。雰囲気が最高潮に達した時いきなり発砲音と閃光がホール内にでた。一息おいて叫び声があたりに響いた。音がなった方向に振り向くと意外な人物が立っていた。


「月城先生....?」


月城先生とホテルの従業員らしき人計三人が各々銃を持っている異様な光景が見て取れた。発砲音で誰かが通報してくれるのではないかと思ったがこの小ホールは防音性に非常に優れている。せいぜいこのホテル内の同じ階で聞こえるか聞こえないか程度となる。つまり生き残れる可能性は低い。月城先生が何を考えているかはわからないが止めるべきだと考えていると近くにあったマイクをとって月城先生はしゃべりだした。


「みんな落ち着いてください。あまりうるさいと殺してしまいそうになるからね。まずはこの映像を見てください。」


と言って、ホール内の備え付けのスクリーンを指さした。月城先生が近くに立っている男の一人に声をかけると映像が流れ始めた。映像は日本のニュース番組を映していた。


「速報です。今日午前午後5:25分ごろパリの有名観光地や経済の中心となる場所が計5か所一斉に爆発する事件が起こりました。現場にはテロ集団の構成員とみられる人物たちが各地で地元の警察たちと銃撃戦になっており一般市民の避難が進められています。また、爆破された5か所のうちの一つであるルーブル美術館には日本の私立高校の神代学院の生徒たちが被害にあったとされ、生徒たちの安否を確認していると防衛省が発表しました。」


足場の感覚が喪失し、不意に落下したかのように思えた。生徒たちが爆発の犠牲になった?あいつはどうなったんだ?あの電話とメールは何だったんだ。なぜこの映像を月城先生は流したんだ?思考がぐるぐるグルグル回転して倒れそうになった。しかし、それらの疑問はたったの一瞬で解決した。


「今見せた映像はフェイクでも何でもない。日本でリアルタイムでやっているTVの映像だ。神代学院の生徒たちが被害にあったと言っていただろう。あれも本当だ。いや、一つ間違えていることといえば生徒は全員死亡している。跡形も残らずね。」


「先生は一体何者なんですか。」


疑問を抑えきれなかった。あいつは、白柳は生きている。だって俺に電話をして警告のメールも律儀に送ってきたではないか。そんな奴が死ぬわけがない。

先生は何者なんだ。俺たちの知っている先生は何だったんだ。


「俺かい?俺は...高校教師兼コペルダスの第二幹部月城敦だ。」


急に周りが騒然としだした。それもそのはずコぺルダスは3年前に日本のデパートで塩素ガスを撒いた犯人の入っていた組織で当時の事件の死者は87人、塩素ガスの影響で失明した人数42人と平成最悪の事件となった。その後コペルニクスは警察に取り調べられ解体されたと言われていた。しかし、事実は違った。そもそもコペルニクスは日本のテロ組織ではなく、発祥はミャンマーの組織で世界中に組織体制を置いている。警察が取り調べ解体したのはその中の日本組織に過ぎなかった。いつか世界中でテロが起こるといつかのニュース番組で専門家が言っていたが、それが現実となった。


「君たちには今から人質になってもらう。君たちが生きて帰るかどうかは、日本の政府次第だ。政府に今から要求を送りそれが無事達成できたら君たちは解放される。それまでおとなしくしてください。わかったか?」


と言ってまたホール内は沈黙に包まれた。生徒のすすり泣く声だけが聞こえる。



~2時間経過~



月城はタブレット端末をいじくりたびたびビデオ通話で話している。日本語か英語ならわかるが彼が話しているのは東南アジア系の言語で話しているため、何を言っているか理解はできない。ホテルマンを装った彼の仲間はいま拳銃の手入れや監視を行っている。

今しかない。と改めて思う。昔から運動神経だけはよく父さんから体術を学ばせられた。今が一番油断が少なく仕留めるのも一番容易だ。あいつは死んだのかもしれない。天国で会えるだろうか。いや、今から俺は人を殺す。敢え無く地獄送りだろうか。いっこうにかまわない。後悔の多い人生だったと思う。最後のあがきに出ようじゃないか。


~8:20分作戦開始~


幸いテーブルの上にナイフとフォークが置いてある。首から頸動脈まで約3㎝。フォークは見たところ刃渡り5㎝。刺せば一瞬だろう。さっきみんな座るように月城が言ったため立っているのは監視している敵だけだ。そのためどこにいるかすぐにわかる。今は手前に1人。右側に2人。後ろに1人だ。物音を立てるとばれる。ましてや金属音だ。瞬時に銃殺されておしまいだ。監視員の見てないすきを狙うのに5分かかった。金属音はならずに一本ずつ取り出すことに成功した。周りにいた生徒の少数はきずいて目を大きく見開いたが一言も声は出さなかった。意識の高さは偏差値に比例するとどこかの本で読んだがまったくその通りだと思う。夕食会での服装は私服でよかったのでパーカーにズボンという格好をしていたためポケットに入れることに難儀したが無事入りフォークを右手にナイフをポケットに入れるという格好になった。見張りの一人が近づいてきた。間合いを見計らう。勝負は一瞬。足を絡ませ一気に引き倒した。男は一瞬驚いた顔をしたが瞬時に眉間に焦点を合わせた。さすがプロだと思ったが一瞬の隙が生まれた。その隙さえあれば十分だった。右手に持ったフォークを男の手首に突き刺さした。手から拳銃がこぼれ落ちていくのを素早く拾い焦点を合わせた。男は絶叫を上げながら首を掴もうとしていた。しかし俺の方がコンマ数秒速かった。頭部が破裂した。吐き気は襲って来なかった。胴体をつかみ俺の背後へ向ける。と、同時に発砲音がなった。あと一秒遅かったら殺されていた。銃を向ける。相手の居場所は靴の音でわかる。身長はタイミングを見計らうときにいやというほど見た。引き金を引いたと同時に悲鳴が聞こえた。ガッチャ(殺った)とつぶやき死体をずらした。かすかな風圧でもう一人がこっちに来ているのがわかっていた。相手はプロだ。撃ち合いになったら負けることはわかっている。自ら鉄砲玉になるしかない。ずらした瞬間相手のおなかが見えた。勢いよく突っ込んだがびくともしない。気が付くと俺は掌底をうちみぞおちを撃ち素早く立って高くジャンプして相手を足でカニばさみにして引き倒した。重心は見極めていたため相手が崩れ落ちる途中に手首に発砲した。動脈ごと吹き飛ばし相手を貧血状態にする。多量な血液の損失は思考判断を鈍らせる。

手首を失ったにもかかわらず相手は俺を押し倒そうとしたが重度の貧血状態だ。足でけるだけで簡単に倒れた。眉間に発砲した。椅子から立つ音が聞こえた。


「動くな。銃を捨てろ」


月城の声が小ホールに響いた。どうせ振り返る途中に発砲されて勝ち目はない。銃を捨てた。手を挙げて振り返る。月城は俺より5メートルくらい離れたところに立っていた。けりの範囲外だ。


「手はおろしていい。クラブマガをやられても困るのでな。」


さすが幹部だ。クラブマガの技の一つで手を挙げた状態から敵に反撃する技がある。皮肉とともに手を下した。 月城の持っている銃はクロック17で装弾数も17発だ。一発撃っているため残り16発。


「俺たちの知っている先生は本物の月城敦ではなかったんですね。」

「さあな、俺はコぺルダスの幹部で高校教師で研究員だ。それらすべてが俺であり俺以外の何者でもないんだよ。だけど今の状況を客観的に見たときに高校教師の点に関しては危ぶまれるな。」

「なんで俺を撃たなっかたんですか。チャンスはいくらでもあったはずですよ。」

「撃とうとはずっと思った。しかし手が震えてな。無縁の人を殺すのは無理ないが知り合いでさらに教え子を殺すのはなかなかにハードルが高いようだな。」



と言って月城先生はいつもの気さくな表情を浮かべた。こんな人がいつ道を外してしまったのだろうか。しかし、人を殺してしまった俺も既に道を外してしまったのだろう。お互い終わったもの同士ここで終わるしかないのか。日本に戻ったら死刑判決を下される。正当防衛のラインを超えている。ならばここで生徒を救って死んだ方が有益だ。


「先生・・・?」

「なんだ?」

「ここで終止符を打ちましょう。」


と、言い終わらないくらいにもう俺は走り出していた。しかし、月城先生の銃を撃つスピードは尋常ではなかった。足に二発、お腹に一発撃たれた。先生が近づいて銃口を眉間に向けた。これで終わりか。視界が白い光に包まれた。目を開けると全身真っ黒なボディアーマーを着たニコニコ顔のお面を被った男が4人立っていた。手には近接武器を持っていてジャマダハル、クリリナイフ、メイス、トンファーを構えていた。数秒間周りをぎょろぎょろ見回した後彼らは消えた。否、移動したのだ。月城先生のいた場所に。月城先生はどこからか持ってきたコマンドーナイフと思われるナイフで攻撃をはじいていた。しかし、表情に余裕がない。この人たちは何者だろう。しかし、これで生徒は救われる。月城先生が消えた。と思うと部屋の隅に移動していた。するとニコニコ顔の集団が自分を中心として円形上に囲った。誰一人息ひとつ乱れていない。そのうちの誰かがつぶやいた。


「敵を殺す。全ては主人のために。」


といった瞬間、また男たちは姿を消した。ご主人様とは?などと考えようとしたが終わりが来た。大量出血で昏睡状態に陥りそうだ。金属のこすれあう音がくぐもって聞こえる。周りにいた生徒たちが盛んに呼びかける。しかし血が足りないため意識がはっきりしない。視界が揺らぎつつある。突如扉付近で爆発が起きた。迷彩柄たちが飛び込んでくる。88式鉄帽に迷彩服2型、防弾チョッキ3型。帽子には日の丸がプリントされている。本来日本は戦争反対国のため作戦行動はできない。ましてや武装しての海外派兵自体やるとするなら極秘の案件だった。この前オーストラリア軍と一緒に訓練するという名目で派遣された自衛隊がいたがそれかもしれない。隊員の1人がこちらに気づき負傷者発見と言いながら駆け寄ってくる。ニコニコ顔の集団は相変わらずこちらに見向きもせず狩りを楽しんでいた。ニコニコは味方です。と誰かが言っていた。隊員たちの銃口がすぐに月城先生に向けられてた。

おい、大丈夫か。と言いながら近づいて来た隊員が硬直する。隊員は素早く駆け戻り何かを報告した。すると一人の隊員がこちらに駆け寄った。


「永嗣、おい永嗣!」


と怒鳴る声には聞き覚えがあった。


「・・・と・・・う・・・さん・・・?」


聞きなれた声だった。なぜここにいる。そんな疑問は一瞬で解決した。今思い出すと父は週に3回ほどいない日があった。中学に入りよくなんの仕事をしているか聞いていたがサラリーマンだよ。と言って苦笑いしていたのを思い出した。まさか自衛隊でしかも特殊作戦群だったとは知らなかった。

最後に父さんに会えてよかった。血の排出量が限界値を迎えそうだ。直に死んでしまうだろう。掠れた声で俺は言った。


「・・・今まで・・・ありがとうございました。不甲斐ない・・・息子で・・・申し訳ございません・・・でした。」


と言った後父に体をゆすられたところで俺の記憶は途絶えている。

























気が付くと俺は床で寝ていた。中世ヨーロッパの様な建物とこちらを覗くたくさんの人。どれも外人のような顔をしていた。そのうちの一人がセナル国王女のユーラです。と言ってこの世界についていろいろ説明した。(ちなみに彼女は金髪で赤目の女の子だった)どうやら俺は勇者になったらしい。あるあるの異世界転生で説明は途中から聞き流していた。そして途中から魔神(この世界は魔神がいてそれの討伐目的で召喚されたらしい。)ともう一つ大きな敵対勢力がありその名前をフォルトゥーナ帝国という。といったときに意識は急速に覚醒した。中学生のころ社会科の授業でたまたま早く授業が終わって暇を持て余していた先生が自分で王国を作るならどんな名前にするか。という話題になり、様々な意見が飛び交う中フォルトゥーナと彼がつぶやいていた。あとでなぜそんな名前にしたのか聞いてみるとラテン語で幸福を意味する言葉らしい。僕はいつも不幸な事ばっかだからかな?直感的に思い浮かんだんだよ。と言っていたことを思い出した。気が付くと俺はユーラ王女の肩をがっしりつかんでどこにあるのか、行き方は?と聞いていた。王女はいきなり話しかけられてびっくりしていたのかどぎまぎしながら答えていた。どうやらフォルトゥーナ帝国は第一首都と第二首都があり、第一首都はこの世界の経済の中心で一番栄えているところ。第二首都はこの世界のどこかにありフォルトゥーナ帝国の建国者やその幹部たちがいるという伝説があるらしい。第一首都は誰が管理しているのかと聞くとスペースという老人が管理しているらしい。第一首都を中心として周りに五つの大王国がありそのうちの一つが第一首都から見て北側に位置するセナル王国らしい。そのあと俺は旅に出るためにレベリングをしてある程度魔法(ここは魔法と剣が使える世界という説明があった。)が使えるようになって俺は第一首都に出発した。道中でいろいろあったが省略。そのあとスペースに会おうとしたが道中恰幅のいい商人に第一首都に古びた神殿があってそこはまだ探索済みではなくお宝があるかもしれないと言われた。詳しく話を聞くとその神殿は第一都市から離れた森のどこかにあり神殿もコケでカモフラージュされているためよく見ないとわからないという。その神殿の名は。と聞くとユーピテル神殿という名前らしい。

当時白柳が天体観測部で観測していたのは木星だった。木星は英語でジュピターだがその語源はローマ神話のユーピテルを語源としている。つまりその神殿は白柳が立てたのだの確信してその商人に礼を告げ森に行った。どうせ白柳のことだ。ここら辺にあるだろと思い森を駆けて2時間ほどで見つけた。道中色々あってあんなボロボロになってしまったが。そして中に入ると長方形の黒い石があり穴が開いていたからあいつからもらったガラス細工をはめてみてここに来たというわけだ。


=============================


思い返せばいい人生だったと思う。そしてこんな人生を送れたのは両親と恭介のおかげだった。最後の最後まで一緒に馬鹿騒ぎに付き合ってくれた。思わずふっとため息が漏れた。

少女は唇をかみしめながら聞いてきた。

不意に立ち上がるとこちらに目を向けた。


「実はそのニコニコ顔たちはうちの配下なんです。」


と言って少女は手をたたいた。刹那、風圧を全身に浴びた。振り向くとあの4人組が立っていた。この人たちはここの世界から来たのかと思った。その思いを察したらしく少女はまた言った。


「彼らは飛鷹屋の神納木組です。近接戦闘を得意とするものが集まっています。」

「・・・屋号みたいだな」

「ええ他にも暗殺を得意とする不知火組、護衛を専門とする梶井組、我々飛鷹屋の行動を隠蔽する八雲組、銃火器と魔法のスペシャリストが集まる黒鉄組、飛鷹屋の医療関係を全てになっている御守組、緊急事態発生時にこれらの組の頭として働く柊組です。これらに加えて建築家の集まりである宮水会、鍛冶師の集まる武器製造の天津会の総勢6700人ほどです。彼らは各々が組に入っていますが最初の1年は色々な組の下で研修を受けるためいざという時の戦闘員となります。」


屋号とは商店の商売上の名前の事を指す。聞けば屋号風にしたのは飛鷹屋創設者である人のアイデアらしい。


その創設者は誰かは敢えて少女は言わなかった。言わなくてもわかるだろうと言いたげな表情を浮かべていた。そしてそいつがどうなったかも赤き瞳が無言のうちに訴えていた。おもむろに少女は口を開いた。

「永嗣さん、協力してくれませんか?かたき討ちを行います。」


その眼の奥には激しい憤りを宿していた。

次回から本作主人公の物語となります。今回は導入という事で。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ