神様になったからVRMMOを作ってみた
「つまり、神様はこの世界の神をやめるから代わりの神として俺を選んだのか?」
「そうだ」
「その基準は特定の宗教についてなくて、引きこもりで、剣と魔法の世界が好きなやつと」
「神になるやつが別の神の信者では駄目だし、神になると基本この神域からは出れないからな。最後の理由は後を任すなら趣味が合うやつのほうがいいからな」
「・・・んで、あんたは新しく作る剣と魔法の世界で神になると」
「なんか呼び方変わったのは気になるが、そうだ。やっと申請が通って別世界を作る許可が出たからな。やっぱり見守るなら見てて楽しい世界がいいからな。いやー、最近地上で出来たゲームってやつをやってみたがあれが予想以上に楽しくてな。ずっとゲームをやっているうちにこんな世界を作って見たいと思ったんだ。最初は一から世界を作るよりも今の世界を最近みた小説のように剣と魔法の世界にしようかとも考えたんだが、最初に世界を作った時にその辺をいじっていてうまく出来そうにないから仕方ない」
一気に饒舌に話し始めた神。
コレはあれだ。自分の趣味の話にテンション上がったオタクと一緒だ。その姿に最初に感じた神々しさとか畏れとは全く感じない。
「じゃ、この世界は任せた。詳しいことは残していく天使に聞けば問題ないからな」
あっけにとられっていた俺はそんな神の言葉を理解すると同時に呼び止めようと手を伸ばすが、それは間に合わずに目の前から神は消えた。
伸ばされた手は何もつかまず、誰も居なくなった空間に俺だけがぽつんと残された。
「・・・・・・・ふ、ふざけんな! 俺もそっちの世界がいいに決まってるだろうが!?」
「新神様、やはり今のリソースではどうやってもこの世界に魔法を発生させることは出来ません」
「人類全てではなく、一部の人間にも無理なのか?」
神が居なくなった空間で暴れていた俺が落ち着くと、いつの間にか目の前に居た女性。彼女は自分の事を天使と名乗ると俺の事を「新神様」と呼び、この世界の神様としての役割と出来ること出来ないことを教えてくれた。
もともと三流大学中退の引きこもりの俺が、神様なんて出来るはずないと思っていたのだが、どうやらそのあたりは神様になった事で何とかなるようで、彼女の説明も一回聞いただけで理解が出来た。
そして、そんな俺が最初に彼女に命令したのはこの世界に魔法を発生できないか調べてもらうこと。
「そもそも、この世界は法則の世界です。魔法や超能力といった力をこの世界に現象として出すには新たな法則の追加か、法則を覆すほどの力で行うしかありません」
「新たな法則の追加は過去の歴史の矛盾が発生して世界崩壊。強力な力はそれだけで世界崩壊。この世界ってもろすぎない?」
「はい、もろいです。それを護るのが新神様の役目です」
ため息をはいた俺はふと周りを見渡す。
見えるのは俺と天使の二人だけ。他は何にもない真っ白な空間のみ。
「・・・何もないと変な感じだな」
「なら、何か生み出しますか?」
「何を出せるんだ?」
「この空間は神域です。神域内の内装はその神域の主の自由にできます」
「・・・どれくらいの広さを好きに出来るんだ?」
「それは天使の私にはわかりません」
「神域に人を招くことは出来るのか?」
「眠っている相手か、トランス状態の者、輪廻システムに入る前の魂に限って招くことは可能です」
「同時に何人まで呼べるかわかるか?」
「集団で呼び出した例はありますが、最大数については天使の私にはわかりません」
「・・・・・・とりあえずまずは俺がどれだけの空間をいじれるか調べてみるか」
俺は神域について意識を向ける。すると、どうすればいいのかがすぐにわかった。そして、俺は一面の草原と青空をこの神域の全てに広げた。
「これは・・・」
「どうやら大きさは宇宙規模のようですね」
広げてすぐにわかったが、正確な大きさを言葉にするのは難しい。この太陽系が余裕で収まる平面と言えばいいだろうか。しかも、感覚的にはまだまだ広げても負担は全くない。
「予想以上だな」
これならいける。後は・・・・・・。
「どうされるのですか?」
「その前に俺は新たに天使やそれ以外の疑似生命体を生み出すことが可能だよな」
「はい、可能です。しかし、一部の上級天使や特別な場合を除きそれらを地上世界に降ろすのは不可能です」
どうやら天使である彼女には、俺が何を考えているのかがまだわかってないらしい。
「神域になら可能だろ」
「はい」
俺は口元がつり上がるのを感じながら彼女に振り返った。
「この神域にゲームの世界を造ろう」
あれから天使を増やしたり、使徒を選んだり、輪廻に入る前の魂を幾人かスカウトしたりした。一時期神域は中々カオスな空間になったりもしたが、今はそれも落ち着き、俺の目的に賛同した魂が積極的に動き安定を取り戻していった。
俺は彼らの意見を聞いたり、出来ることと出来ないことを説明した。
そして神域の内装をいじり、法則をいじり、疑似生物を産みだし、その行動原理をいじり、なんか他にもいろいろといじり回した。
・・・・・・俺、神様なのに一番働いてるよね?
「神様にしか出来ないんですから仕方ないでしょ」
「いや、そうだけど」
「だいたい、VRゲームを作ろうと言い出したのは神様なんでしょ? なら仕方ないですよ」
「まぁ、そうだけど」
なんか俺の扱いが神様じゃない。いや、敬われるよりかは今のフレンドリーの関係の方が楽だからいいけど。
そう、あの時に考えた事は、地上に魔法が生み出せないのなら神域に生み出して皆で遊べばいい。
神様になったんだしVRMMOを作ろう。
そのために必要なのは世界と登場人物とシナリオだ
世界は創れる。しかし、ワクワクする世界なんて俺だけでは創れない
登場人物やモンスターは創れる。しかし、魅力ある人物やモンスターは俺だけでは創れない。
読み専の俺にシナリオなんて無理。
なら、出来る奴らをスカウトしよう
俺はあらゆる分野の能力を天使に調べさせ、その中からコレだと思った人物が眠っている内に神域に呼び出した。
「ここは?」
「初めまして、田中さん。私はこの世界の新たな神。今日はあなたをスカウトしに来ました」
最初は勿論呼び出された人々は混乱もしていたが、俺が目的を話せば目をキラキラさせてすぐに食いついてきた。
そりゃ、そういう人物を選んだわけだしすぐにそうなるわな。
いままでスカウトした者たちはほぼ全てが俺の目的に賛同した。新たに使徒となった彼らは眠っているときは神域で世界を造る手伝いやシナリオの作成等を行い。起きてるときはこれから作り出すVRMMOを世界に広げる準備を行っていた。
それから2年。全ての準備が整った。
・・・・・・いや、早すぎるだろ。
あいつらどんだけ頑張ったんだ。
地上では、ある会社が独自に作った新技術でVRMMOを作り出した事になっていた。そして、そのデバイスの価格は従来のゲーム機の中では高価だが、一般人でも買える値段。ネットにつなげなくても電力があれば遊べる。デバイスは一度登録したならば他の人は使えない。
等々、見る人が見れば発狂する機能が盛りだくさんだが、コレは勿論新技術等ではない。そこは少しばかり俺が力を使ったからだ。
ある会社の社長や役員、社員の一部は俺がスカウトした使徒。
デバイスの価格は遊べる人を限定するため。
ネットにつなげなくてもいいのは、そもそも神域に呼び出すにはネットが必要ないから。
デバイスに登録があるのはデバイスが装着者の意識をトランス状態にする機能がついているから。
そして、一番大事なのはこの世界の人々がそれらの技術(神の力)に注目をしないようにすること。
いや、こんな技術(神の力)があれば国が絶対になんか首を突っ込んでくるだろ。主に軍事技術とかから。
俺は戦争が見たいんじゃない。夢のゲームで遊びたいんだ。
だから奇跡の力を使った。
VR技術は夢の技術だがいつかは出来るだろうと多くの人が思っていた事だ。そのため、やっと時代が追いついたという思いを増幅させ、その中の技術については人々の意識が向かないようにした。
ネットにつなげなくても遊べる技術もワイヤレスとかの発展系だと思わせて何とかした。
少し知識があれば不可能な事はわかることだが、それについてはもう奇跡で何とかした。
コレが現象としての発現なら不可能だが、人々の意識の誘導ということでギリギリだが何とかなった。正直コレがゲーム造りで一番大変だった。
そして、全ての準備が完了した今日。
ついに俺たちが作ったゲーム『Sanctuary world online』のベータテストが始まった。
名前は神域世界とシンプルにした。
内容は異なる世界から降りてきた人々がこの世界の神の目にとまり、少しの力を与えられ世界を旅する物語。神の目にとまりさらなる力を得るもよし。自由に世界を開拓して村を、街を、そして、国を興すもあり。商売をしてこの世界の経済を握るもよし。過去の文明を発掘し、消え去った歴史を調べるもよし。
実際、この世界は生み出されて体感一万年が経過しており、その間に世界は何度も繁栄と衰退を繰り返した歴史がある。まぁ、魂のない疑似生命体のため俺やスカウト組の手助けがなければ何も起きないから色々難しかったが。
そんなもう一つの世界で圧倒的な自由度のうたい文句で発表されたゲームだ。ベータテストの申し込みもやばかったが、それらの抽選を天使の力を借りて行った。
待ちに待ったVRゲーム。その抽選に選ばれた俺は大声を上げて喜び、デバイスが届いた瞬間にそれを起動した。
「・・・・・・なんだコレ?」
俺は目の前に広がる景色に思わず呆然とした。
今、俺は一つの世界を空の上から見下ろしていた。
それはリアルではなかった。
広がる空、流れる雲。地上にはアニメやゲームで見たことあるような町並みが広がり、山々や森、草原等の広大な自然が広がっていた。
それは確実にリアルではない。
何故ならそれらの景色はまさにアニメや漫画の風景だからだ。
しかし、何よりも現実的で、思わず自分の手を見ると思ったとおりに俺の手は動き、口を開けば聞き慣れた自分の声が耳に届いた。
そう、それは誰もが一度は夢を見た光景。ゲームやアニメの世界に入ってみたい。そんな夢がそのまま現実になったような光景だった。
「お前はこの世界で生まれた者ではないな」
興奮がわき上がる直前に俺の耳に声が響き、俺の意識がはっと静まる。それは言葉に含まれる圧倒的な力を感じたからだ。
俺はおそるおそる声の方を見上げると、空には大きな顔が描かれていた。
「異なる世界の者よ、お前はこの世界で何をなす?」
「お、俺は・・・・・・」
ゲームのはずなのにその存在に圧倒され、俺は言葉がつまる。
「まぁ、よい。お前がこの世界で何をなすかは自由だ。新たにこの世界に生まれる者よ、後悔のない選択を選べよ」
そう言うとそれは虚空に消えていき、俺の視界も白いもやが包み込んでいった。
「ようこそ来訪者の方」
声が聞こえるといつの間に一人の女性が少し離れたところにいた。その背には白い羽。頭には輪っか。
天使な女性がいた。
「今から行うことはやり直しがききませんから注意してください」
そう言うと天使は手を動かして光の玉を隣に生み出した。
「この玉はあなたのこの世界でアバターになるモノです。まずは自分の姿を思い描いてください」
俺がその言葉に自分の姿を考えると、光の玉は一瞬で形を変えてデフォルメされた自分の姿に変化していた。
「こ、コレは・・・」
「次は髪の毛の長さを変えてみてください」
その言葉にさらさらのストレートを考えると目の前の俺の髪が伸びていき、一瞬考えていたさらさらなストレートの髪に変化した。
「このようにキャラメイクは思い描くだけで変更が可能です。身長、体格、年齢。後は性別も変更可能ですが普通の人にはおすすめしません。アニメや漫画のキャラクターの姿はあらかじめロックをかけてあるため完全再現は不可能ですが、似せることは可能です。ただし、あなたは今から作り出すこのキャラクターで世界に降りてもらいます。これはやり直しが出来ません後悔が無い選択をお願いします」
後悔の無い選択。
やり直しがきかない。
確か、事前に調べた情報では一人の人間が使用できるデバイスは一人だけで、紛失や破損した場合でも再発行されデバイスは登録者しか使用不可能で、セーブデータも消去出来なかったはずだ。
つまり、ネタキャラを作ったらそれで一生遊ばなければならないと言うことか。
俺は最初に思い浮かべた自分を18歳の時の姿にして、気になっていた部分を少しと、髪の毛の色を変えるだけにした。
「その姿でよろしいですか?」
終わったと思うとすぐに天使が話しかけてきた。
「は、はい」
「この姿で登録されますとどのような事があっても変更できません。後悔はありませんか?」
再度の問いかけ。もしくは警告だろう。
「大丈夫です」
「次にあなたのこの世界での名前をお決め下さい。それによりあなたの姿は確定しその世界の存在として生まれます」
「なら、タクマで」
いつもゲームで使っている本名を少しいじった名前を言う。
すると、俺の意識が浮き上がり、そのまままっすぐに俺の意識が目の前に今さっき名前をつけたタクマに入り込んでいった。
「おはようございます。タクマ様」
目を開けると隣で天使が微笑んでいた。
思わずそのほほえみにドキリと心臓がはねた。
「次に神様からの祝福の選択になります。この祝福は地上でも変更は可能です。ですが、すぐには変更出来ないため、あなたがこの世界で何をなしたいのかよく考えて選んでください」
そう言うと天使が手を動かし、目の前に半透明な画面が現れた。
突然現れた半透明な画面にびっくりしながらも、その中に書かれていた祝福の一つ“旅人の祝福”を選んだ。
そして、その後も諸々の注意事項や簡単なチュートリアルを終え、ようやく地上に降りる瞬間がやってきた。
「この扉をくぐればタクマ様は地上に行けます」
目の前に現れた扉。その扉が開くと光があふれていた。
後はその扉をくぐるだけ。それだけなのだが、俺は振り返って彼女の方を見た。
振り返って見ても彼女は何の反応は返さず、じっと俺を見ているだけだ。その姿は今までのゲームと同じNPCと変わらない姿。
・・・そのはずなのだが。
あの時、俺がタクマとして目を覚ました時に見せてくれた微笑みが、どうしてもただのプログラムとは思えなかった。あれは本当に俺が目を覚ましたことに対して微笑んでくれたようにしか見えなかった。
「・・・・・・この扉をくぐったらもうここにはこれないんですか?」
「はい、ここは始まりの神域です。旅だった者が訪れる事は出来ません」
「なら、あなたにはもう会えないんですか?」
「・・・・・・?」
想定外の質問に首をかしげるだけで何も言わない彼女。
「またあなたに会いたいと思ったんです」
「・・・・・・・」
「あなたに名前があるなら教えてくれませんか?」
「私はあなた達来訪者を案内されるために生み出された天使の一人です。そのため名前はありません」
決められた台詞を淡々と応える彼女。
「なら、お、俺が名前をつけてもいいですか!?」
「・・・・・・はい」
うなずく彼女。俺はそれに喜びながら、しばらく悩んだ末に彼女に“イリス”と名付けた。
「私はイリス。・・・・・・タクマ様ありがとうございます。あなたの旅に祝福を」
そう言うとイリスは俺にきれいに微笑んだ。
「うん、ありがとうイリス。・・・・・・またね」
この時には俺はも彼女をただのNPCとは思えなくなっていた。俺は絶対にもう一回イリスに会おうと決めながら扉をくぐっていった。
その後、地上に降りた俺はステータスの祝福に“イリスの祝福”が追加されていた事に声を出して喜んだ。
『Sanctuary world online』のベータテストが開始して一時間。俺は予想外の事態に固まっていた。
「・・・・・なんか聖人がたくさん生まれてるんだが」
「天使に名前をつけた者が、その天使から祝福をさずかった結果ですね」
俺の言葉に応えるのは最初の天使で、今は“エミリア”の名前の彼女が理由を応えた。
「天使に名前をつけただけで聖人って生まれるの?」
「偉業なのは確かですし、邪な思いを持つ者達には名前をつけるという発想が浮かびませんし、浮かんだとしても天使自身が拒否しますから祝福は授かりません」
「いや、それでも」
「彼らの死後は祝福をさずけた天使がその魂を向かえに行くことがほぼ決まっています。死後に天使によって迎えに来られる者達がただの人間なわけないでしょう」
「えっと、つまり天使の姿が地上に現れると?」
「祝福をさずけた者がその世界での生を終えるのです。その天使が地上にいくのは当然です」
「当然なんだ」
「見えるのは徳の高い限られた人間か、新神様自身を信仰する信者のみでしょう」
「あぁー、それならそんな目立たないのか?」
俺はその時はこの事をそこまで注意してなかった。何故なら俺自身を信仰する者は今のところ俺がスカウトした者達以外居なかったからだ。
しかし、俺は完全に失念していた。
この『Sanctuary world online』の舞台は俺がいる神域で、その主は俺だと言うこと。最初に授ける祝福は地上では何の効果が無く、とても弱くても俺自身の祝福であること。しかも、ゲームを続けていればさらに俺の祝福は増えていくわけで、つまりそんな祝福をたくさん持った者達がゲームを通じて世界に広がるのだ。
つまり、ゲームの神(俺を)を信じる者がたくさん居るわけだ。
数十年後、世界各地で死後に天使が向かえに来たという報告が上がり、しかも彼らの共通点が『Sanctuary world online』であることが知られてしまい、一大騒動が起きるのは別の話。
とりあえず思いついたから書いてみた。
これ以上書くとボロが出そう。
そんな作品だけど楽しんでくれたら嬉しいです。
ここまで読んでくれてありがとう




