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旅立ちの日に

ある日、リイオはサラを呼び出していた。


「改まって話って何…?」

「実はサラに謝らなくちゃいけないことがあるんだ」

「謝る………リイオのお母さんの育ててた花を踏んだ罪を私に擦り付けたこと?」

「いやうん。それは本当に悪かったと思ってるんだけど。違う!実は今までサラに話してきた冒険は殆ど作り話だったんだ!」


深刻な様子で頭を下げるリイオを見てサラは頭をフル回転させていた。


(作り話だってことは気付いてたし別に本当でも嘘でも良かったんだけど……でも知ってたって言ったらショック受けそうだしここでショック受けた態度したら罪悪感感じそうだし………)


この間約2秒である。


「そう……なんだ!全然気付かなかった!創作上手くてびっくり!…ところでなんで急にそんな話を…」

「あぁ、俺は冒険者になることにしたんだ。それで、帰ってきたら本物の冒険譚を聞かせる!だから待っててくれ!」

「そっか…冒険者に……冒険者に!?なんで!?」

「今世界が危機に瀕してるのは知ってるだろ?だから俺の力も何かの役に立つかもしれない」

「いや…待ってよ…だってほら、危ないんでしょ?辞めようよ…確かに世界は危ないかもしれないけど、リイオが危険な世界に飛び込む必要は無いよ」

「確かにそうかもしれない。でもそうじゃないかもしれないだろ?それに大丈夫。危なそうになったら逃げてくるからさ」


リイオの言葉は殆どが建前だった。リイオの心にあったのは少しの英雄願望と、サラに創作ではない本物の世界の話を聞かせてやりたいという気持ちだった。

正直に理由を話すのは照れくさかったし、サラが余計な気を回さなくて良いようにある程度説得力のある建前を用意したのだ。


「でも……はぁ……そっか…」


サラからすれば世界が危ないという事はどこか遠い話であり、リイオが危険な仕事をしようとしていることもこの村から出ていって離れてしまうことも嫌だったので反対しようとしたが、リイオの目を見て諦めた。冒険に出ると語るリイオの目は輝いており、リイオがあのキラキラとした目をしている時は説得など効かないという事を長年の付き合いで知っていた。


「気を付けるんだよ?一週間に一回は連絡してね?危なくなったら帰ってくるんだよ?お金足りる?お肉とか生で食べちゃダメだよ?詐欺とかにも気を付けて……」

「母さんと同じこと言ってるぞサラ……」

(だって危なっかしいんだもん…)


リイオはしっかりとしていない訳ではないのだが、猪突猛進気味で人を信じやすい。都会に出るともなると心配は尽きなかった。


「それでいつ出発するの?」

「まぁ、明日には出るよ」

「そっか…早いんだね」

「もう決めたからな…大丈夫!俺が魔王を倒して英雄になってもサラの事は忘れないさ!」

「もー……調子良いんだから…」


その後はいつものような雑談へと変わっていった。違うところがあるとすれば創作冒険譚が無いことだろうか。サラは寂しさを覚えながらも本物の冒険の話を持ち帰ってきてくれることを少し期待していた



出発の日、リイオは村の皆に送り出され長い冒険の旅の1歩を踏み出した。

辺境の村であるファードから王国アンドルへと直接向かうのは少し遠い為、コツナという街に向かいそこから馬車を使うのが良いらしいと聞いた。更にコツナにもギルドがある為、アンドルへと向かう前に簡単な仕事をこなして装備を整えることや鍛錬することも出来る。


「そうだよな……いきなり王国のギルドに入れてもらうのは難しいかもしれないよな…」


リイオは魔物を倒したことが無い上に防具は普通の服、武器はサラの家の倉庫にあった訓練用の剣を借りている状態だ。この装備と経験で王国に行っても門前払いかもしれない。それに色々な所へ寄ればサラへの土産話も増える。


「よし。まずはコツナのギルドに入れて貰えるように頼むか」


リイオは期待と不安を胸にコツナへと歩き出した。この道筋はどのように語ろうかと考えながら。



「女神様……女神様…どうかリイオをお守りください………」


一方その頃サラは村の中央にある女神像へと祈りを捧げていた。この女神像は村の守り神であり、サラの家は特に女神への信仰が深かった為サラも信心深かった。


(…そうだ、帰ってくるまで毎日無事をお祈りしよう)


そうすればリイオの事を女神様が守ってくれる。サラはそう決めると自分の家へと戻っていった。

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