フェイク57 同じ願い
それにしても部屋に戻って来てからずいぶんと経つけど、今日の晩ご飯はまだだろうか? ずいぶん今日の晩ご飯は遅い気がする。
遅いな〜と思いながらも催促するのもどうかと思いおとなしく待っていると
「凛くん、今日はお蕎麦です」
「へ〜っ、珍しいね。初めてじゃない?」
「これは年越し蕎麦ですよ」
「あ、ああ、年越し蕎麦ね。ごめん俺食べた事ないかも」
「じゃあ、これが初めてですね。私と一緒に食べるお蕎麦が初めての年越し蕎麦です」
「うん、いただきます」
クリスマス同様、年末年始のイベントを経験したことが無かったので年越し蕎麦を食べるのはこれが初めてだったが、葵の作ってくれた年越し蕎麦は、本当に美味しかった。
身体の中から温まる優しい味をしていたのであっという間に完食してしまった。
「おいしかったよ。ありがとう」
最近毎日このセリフを言っている気がするけど、言える相手がいる事が嬉しい。
「凛くん、このまま神社まで初詣に行きましょう」
「うん、そうしようか」
初詣か……
年越しと同様に初詣に行った事も無かったので、これも初めての経験だ。
葵のお陰で今まで経験して来なかった事をいろいろさせてもらっている気がする。
ただ目立たず過ごしていただけだったのに急に生活が充実して来た気がする。
ある意味これがリア充なのか?
別に彼女が出来た訳でもハーレム主人公になった訳でも無いけど、葵がパートナーになってくれたお陰で間違い無く俺のリアルは充実して来ている気がする。
歩いて近所の神社まで行くと結構な賑わいを見せていた。
「こんな時間にこんなに人がいるんだ」
「それは一年に一回の事ですからね」
「結構学生っぽい人も混じってるけど、この時間って補導されたりしないのかな」
「普通に初詣に行って補導されたのは聞いた事が無いので、トラブルを起こさなければ多分大丈夫じゃ無いでしょうか」
「そう言うものかな」
「そう言うものです」
普段は無い出店まで出ているが、人が多いので流れにのって神社の境内まで進んでいき用意した五円を葵と同時に賽銭箱に投げ入れる。
不慣れなので力加減を誤って、危うく外にはじき出されそうになるが、賽銭箱の縁で踏みとどまりそのまま無事に収まったのを確認してからお願い事をする。
願い事をいろいろと考えてみたが、最終的には一つしか無かった。
「今年も葵と一緒にいられます様に」
サバイバーとしてもっとランクを上げたいとか、お金をもっと稼ぎたい。勉強の順位をもっと上げたいとかいろいろ思い浮かんだが、この願いに比べたらそれもあまり重要だとは思えなかった。
「凛くん、どんなお願い事をしたんですか?」
「うん、まあ、内緒だ」
「え〜っ、気になります」
「じゃあ、葵はどんなお願い事をしたんだよ」
「私は、今年も凛くんとパートナーとして仲良くしたいってお願いしました」
「………………」
葵のお願いは俺のお願いとほぼ同じだった。
葵がそう思ってくれている事に嬉しさと同時に恥ずかしさが襲って来て、真冬なのに顔が熱い。
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