フェイク26 お隣さん
そして週末を迎えたが、葵からの連絡は何も無い。
たまたまずっと空き部屋になっていた隣の部屋にも誰かが引っ越してくる様で朝から引越し業者が荷物を運び込んでいる。
それにしても葵は一体どの辺に引っ越してくるんだろうか?
パーティでの活動を考えても、恐らくここから五百メートル以内ぐらいのマンションに引っ越してくるんだとは思うが場所は最後まで教えてくれなかった。
今後のパーティとしての活動も、駅前集合とかになるのだろうか?
正直ちょっと辛い。
お昼を迎えたが、葵からはまだ何の連絡も無い。
今日はもう連絡して来ないのだろうかと不安になって来たその時だった。
「ピンポ〜ン」
滅多にならない俺の部屋のインターホンが鳴った。もしかして隣の部屋に引っ越して来た人かな。
変な人じゃなきゃいいけど。
「は〜い」
俺は返事をして玄関に行き覗きに穴から覗いてみるが、誰も居ない。
? どう言う事だ?
不思議に思い少しだけ扉を開けて見たがやはり誰もいない。
まさか悪戯か?
「凛くん」
……今、俺の名前が聞こえた様な。
「凛く〜ん」
やっぱり聞こえる。
慌ててドアを開けて表を見るとドアの脇に葵が立っていた
「葵……どうしてここにいるんだ? よく場所分かったね。もう引っ越し終わったのか?」
「ふふっ。終わったよ」
「それは良かったけど、どの辺? 歩いて来れるぐらいのところ?」
「それはね〜。私の新しいお家はここです」
「ん? どういう意味?」
「だからね、私の新しいお家はここです」
そう言って葵が指さしているのは俺の隣の部屋だった。
「………………本当に?」
「うん、本当です」
どうやら本当に葵は俺の隣の部屋に引っ越して来たらしい。
信じられない事だが、学校のアイドルである葵は今日から俺のパーティメンバーでお隣さんになるらしい。
「あ〜良かったら中に入る? まだ部屋片付いてないでしょ」
「うん、お願いします」
俺は葵を部屋に案内したが、初めて部屋に入れた女の子が葵だとは少し前の俺では想像さえ出来なかっただろう。
特に何があるわけでもないが緊張して来た。
「へ〜っ、やっぱり私の部屋と同じ間取りですね。しかも思ったよりずっと綺麗にしてるんですね」
「まあ、荷物があんまり無いから」
「本当ですね。TVも無いです。凛くんはTVとかは見ない人なんですか?」
「見ないと言うか……恥ずかしいんだけど、引っ越して来た時にTVを買うお金が無くてそのままずっと買ってないんだ」
「じゃあTVが嫌いとかでは無いんですか?」
「うん、そんなんじゃないよ。それよりお昼ご飯食べた?」
「いえ、荷物を出せてないのでまだです」
「よかったらカップ麺しかないけど食べる?」
「いいんですか?」
「うん、お腹が空くだろうから、よかったら食べてよ」
そう言って俺はカップ麺を2つ取り出してからお湯を沸かして作り始めた。
「引っ越しそばじゃないけど引っ越し麺ね」
「ありがとうございます。私ほとんどカップ麺って食べた事ないので楽しみです」
「じゃあ、普段何食べてるの!? 俺は、ほぼカップ麺ばっかりだけど」
「凛くん……それはダメです。たまにはいいと思いますが、毎日はダメです」
「い、いや。そう言われても俺何も作れないし……」
「…………分かりました。取り敢えず今日はカップ麺をいただきますね」
「うん、そうしよう」
それからすぐに沸かしたお湯を2人分のカップ麺に注いで、3分待ってから食べ始めた。
「たしかにこれは美味しいですね」
「そうだろ? だから……」
「ダメですよ」
葵が俺の主食にダメ出しをして来た。
一度は分かったと言ったはずなのにどうなってるんだ?
そもそもカップ麺がダメだと言われたら俺が食べる事が出来るものはこの家から無くなってしまう。葵は俺に餓死しろとでも言うのだろうか?
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