フェイク166話 副作用
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「うっ……くっ……」
俺は既に三十分近くこの状態でもがいている。
昨日は『瞬光』を使って戦ったせいか心身共に疲労を感じたので、普段よりもかなり早く寝たために、いつもより早く目が覚めたみたいだ。
ただ目が覚めて三十分近く経過しているというのにベッドから起き上がる事ができない。
指先は動かす事ができる。
首も痛みはあるが左右に動かすことはできる。
ただ、背筋、腹筋、特に足の筋肉が痛みでこわばり上手く動かすことができない。
最初は自分が寝ぼけて金縛りにでもあってるのかと思ったが、すぐに全身の痛みに頭は冴え、これが弦之助さんの言っていた副作用であることに思いが及んだ。
「くっ……俺が使うと副作用も軽いんじゃ……」
弦之助さんはスキルの効果が減衰する分だけ副作用も軽いんじゃないかと言っていたけど、これで軽いのか?
今までも激しい運動や戦闘の後に筋肉痛になることはあったし、痛みで動きにくい箇所があったこともあるが、今日のこれは筋肉痛と言っていいのか?
いわゆる全身筋肉痛。
ただその度合いと範囲が俺の経験したことのないレベルだ。
痛みに耐えながら、末端から少しずつ筋肉を解すべく動かす努力を三十分続けたおかげで、わずかに膝と肘が曲がるようになってきたが、起きあがろうとして重みが加わると全身に電流が走り耐え難い痛みが駆け巡る。
「はっ、はぁ、はぁ……動けない。これどうすればいいんだ」
それからしばらく格闘していると、チャイムが鳴った。
葵だと思うけど、当然応対などできるはずもない。
「凛くん、まだ寝てるんですね。朝ごはんの用意をしておきますね」
葵がいつものように部屋に入ってきた。
「葵、おはよう」
「凛くん起きてたんですね。わたしは朝ごはんの用意をするので、凛くんは歯磨きとか済ませますか?」
「うん、そうしたいところなんだけど、ちょっと無理っぽい」
「え〜っと、どうかしましたか?」
「うん、それが起き上がることができないんだ」
「え!?」
「たぶん『瞬光』を使った副作用だと思うんだけど、全身の筋肉が悲鳴を上げて、痛みで動けないんだ」
「そんな……大変です。救急車を呼ばないと……」
「ちょ、ちょっと待って。救急車は大丈夫だから」
「いえ、でも凛くんが……」
葵が心配して救急車を手配してくれようとするが、いくらなんでも筋肉痛で救急車はまずい。
このマンションに救急車がきて、ストレッチャーで運ばれる自分を想像してしまった。
「山沖さん、どうされましたか? どこか痛いところがありますか?」
「はい、全身筋肉痛です」
どう考えてみてもやっぱりそれはまずい。
「葵、申し訳ないんだけど、起き上がる手伝いをお願いできないかな」
「はい、もちろんです。どうすればいいでしょう」
「腕を引っ張ってもらっていいかな」
「わかりました。それじゃあいきますね」
葵が俺の腕を上に引っ張ってくれる。
「がっ……ちょ、ちょっとまって」
「すいません。痛かったですか?」
「い、いや、大丈夫」
痛い。猛烈に腕と肩口に激痛が走った。
痛いが葵が引っ張ってくれたおかげで腕の可動域は明らかに広がったので、もう一度やってみるしかない。





