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フェイク 153話 グーテンモルゲン

マンションに戻ってきたので、すぐに部屋へと向かう。

あれ?

葵の部屋の前に人がいる。


「あ、パパ、ママ」


やっぱり葵のパパとママか! 早すぎる。まだ何の準備もしていないうえに服もいつものままだ。


「オ〜葵〜」


葵のパパらしき人が両手を広げて葵を迎え入れようとしているが、葵が飛び込んでいく様子はない。


「パパ、ひさしぶり。元気だった?」

「葵〜なぜ飛び込んできてくれないんだ〜」

「もう高校生なのでないです」

「モナコではこれが挨拶なんだ。家族なら当然なんだ。ほら、ほら」


再びパパが両手を広げているが、やはり葵が飛び込んでいく様子は全くない。


「葵、少し背が伸びた?」

「ママも元気だった?」

「もちろんよ」


今度は葵のママが両手を広げているが、葵も手を広げてハグしている。

葵のパパとママを見るとどちらも美男美女と言える風貌をしているが、葵は両親のいいとこ取りをしたのかもしれない。それによく見ると顔立ちに似たところも見て取れる。


「そちらが凛くんね」

「そうです。こちらが私のパートナーの凛くんです」

「あ、はい。葵さんのパートナーを務めさせていただいています山沖凛です。よろしくお願いします」

「ああ、君が山沖くんか。グーテンモルゲン」

「え……」


葵のパパが突然耳慣れない言葉をかけてきた。グーテンモルゲンって何語だ? フランス語じゃないよな。あれ? 葵のママの方がハーフっぽい顔立ちをしているけどパパの方がそうだっけ?


「パパ……」

「ああ、ごめんごめんつい。改めてボンジュール」

「あ、はい、ボンジュール」

「パパ、冗談はそのへんでやめてくださいね」

「葵、そんな怖い顔しなくてもいいだろ。冗談だよ。山沖くんもごめんね。私が葵の父親の若葉弦之助だ。よろしく」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」


若葉弦之助さんか。純和風の立派な名前だな。それにかなり砕けた人のようだ。


「私が葵の母親の若葉クリスティーナです」

「はい、よろしくお願いします」


クリスティーナさんか。名は体を表すというが、クリスティーナさんというのがぴったりで、もの凄くきれいな人だ。


「挨拶はそのくらいで、中に入りませんか?」

「ああ、そうだね。そうしよう」


たしかに立ち話もよくないし、準備もあるので一旦部屋に戻ることにする。

部屋の鍵を開けて、部屋に入ろうとするが、なぜか葵も一緒に入ってきた。


「葵?」

「はい、どうかしましたか?」

「いや、葵は葵の部屋にご両親を」

「いえ、私の部屋のものは結構凛くんの部屋にあるので、両親を迎えるにしても凛くんの部屋じゃないとお茶も出せないです」


たしかにそうだ。やかんとか食器も全て俺の部屋にあるんだった。ということはこのまま葵に両親を部屋に招き入れるということか。完全に想定外だ。

変なもの出したりしてないよな。


「すいません。散らかっているかもしれませんが、どうぞ入ってください」

「おお、山沖くんの部屋か〜。ずっと楽しみにしてたんだよ。お邪魔するよ」


葵のパパは楽しみにしてくれていたようだが、俺の部屋にはパパが楽しみにするようなものは何もないけど。

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[一言] 私の部屋のものは結構(ルビ:ほとんど)凛くんの部屋にあるので
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