逆芝浜
「世の中にはいい嘘と悪い嘘とがあると思うのだけど、どうかしら?」
「どうかしらって何がだよ」
「たとえいい嘘でも、嘘はいけないと思う? それとも必要なら嘘をついても許されるかしら」
「さあ。そんなの状況とか受け取り側次第じゃないのか」
「そうね。例えば私があなたの財布をどこかに隠したとしましょう」
「いきなり嫌な例えだな」
「当然怒るでしょうね。しかしこれが、あなたの無駄遣いを避けるために隠しているとしたらどうかしら」
「別に無駄遣いした覚えはないが。まあそれなら悪い嘘だとは思わないよ。勝手に持って行くのはおかしいけど」
「そう。それは良かったわ。芝浜のように丸く収まって」
「うん……うん? いや、ちょっと待て。ひょっとして今の嘘」
「ほほほほほほ」
「待てえ、おい!」