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短編集 冬花火

田舎道

作者: 春風 月葉

 日を透かす淡い紫の花弁が目を惹くが、これはフジの花だろう。

 人などほとんど通らないこの小さな田舎道の通行人は私くらいなので、あるはずもない人の目など全く気にすることなく私はそこに座り込んだ。

 ここは私が幼かった頃から誰もこないような場所だった。

 あんな何もない場所の何が良いんだとよく言われたのを思い出す。

 今やそんなことを言ってくれる人もここにはほとんどいない。

 道沿いに咲いていた先ほどのフジの花の一輪が大して風もないのに少し揺れた。

 不思議に思って顔を寄せてみると、ブンと大きな黒い何かが飛び出して、臆病な私はわっと驚き尻もちをつく。

 花の奥から飛び出したのは一匹のクマバチのようだった。

 この時期だ、きっと蜜でも運んでいるのだろう。

 ブンと音がしてまた視線を先のクマバチに向けると、細い目でこちらを見る姿はニコニコと笑みを浮かべているように見えた。

 クマバチはコロニーを作らず社会性がないと聞いていたが初対面の私に笑顔で会釈するような様子に私はとても好感が持てた。

 私もニコリと下手な笑みを返す。

 今日こそはこの場所を出て都会に出て行こうと思っていたのだが残念だ。

 また一つ、私はこの道が好きになった。

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