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魔王が存在する異世界に転生したけど、勇者は存在しないようです。  作者: 玄野
第一章 異世界に転生しました。
8/59

第七話 盗賊を退治した。

四年の月日が流れた。俺とメリーナは十二歳になった。


この村はすごく平和だ。時々、魔物は来るが護衛の冒険者にすぐ倒されてしまうため、俺やメリーナの出番は無い。そのため、俺とメリーナはレベル上げに集中することができた。


今の俺の恩寵はこんな感じだ。



名前:クロト

恩寵ギフト

《ルインノールの基礎知識》 ランク— レベル— —/—

《空斬の扱い》 ランク5 レベル3 48/100

《気剣体の心得》 ランク5 レベル5 32/100

《剣技の心得》 ランク5 レベル3 74/100

《魔断剣の極意》 ランク3 レベル10 —/—

《剣体の極意》 ランク3 レベル10 —/—

《剣の極意》 ランク3 レベル10 —/—

《断熱の体》 ランク4 レベル8 58/100

《鋼体》 ランク4 レベル3 60/100

《瞬足》 ランク4 レベル5 8/100

《魔力察知》 ランク3 レベル6 18/100

(《硬体》 ランク3 レベル10 —/— )

(《俊足》 ランク3 レベル10 —/— )

(《耐熱の体》 ランク3 レベル10 —/— )

(《気剣体の扱い》 ランク4 レベル10 —/— )

(《剣技の扱い》 ランク4 レベル10 —/— )

(《剣体の心得》 ランク2 レベル10 —/— )

(《剣体の扱い》 ランク1 レベル10 —/— )

(《剣の心得》 ランク2 レベル10 —/— )

(《剣の扱い》 ランク1 レベル10 —/— )



よくもここまで育てたものだと自分で思う。この世界では努力が経験値やレベルといった数値となって分かるため、面白くて歯止めが利かなかった。前世でもここまで努力したことはない。あとはメリーナが居たことも大きかった。一人だったらここまで強くなれることは無かっただろう。


ただ、この世界の標準がどの程度なのか分からないので、他者と比較して自分がどの程度の強さなのか分からない。しかし、ほとんどが《ルインノールの基礎知識》に載っていない恩寵なので、この世界の中でも特異な力は持っているのだと思う。


後三年で成人して村の外へ出て冒険者になる。今すぐ冒険者になったとしてもすぐに野垂れ死ぬことは無いだろうという自信はある。


冒険者になることは両親も納得済みのことだ。しかし、よくよく考えてみると、自分の一人息子が後三年したらもう二度と会えないようになるかもしれないのだ。今までレベル上げ一辺倒で両親との思い出もそんなに無い。そう考えると、自分は親不孝者だと思ったので、最近は家の農業を手伝うことで両親と一緒にいる時間を増やしている。




今日も家の畑で野菜を収穫した、その帰り道の事だった。


カンカンカンカンカンカンカンカン


村に危急を知らせる音が鳴り響いた。それは外から盗賊や魔物などの襲撃を伝える知らせだった。記憶が戻ってから今までも何度か聞いたことがあるが、いつもならすぐ護衛の冒険者が対応して鳴り止む。


しかし、今回はいつまでたっても鳴り止まない。俺は急いで村の方へと駆け戻ることにした。




村に戻ると二・三十人ほどの見るからに見窄らしいボロを纏った盗賊と思しき者たちが押し寄せてきていた。


「な・・・!この村に盗賊が現れるなんて・・・!護衛の冒険者は何をしているんだ?」


遠くから見る限り、冒険者達は幾人かの盗賊達と戦っているようだがいかんせん敵の数が多過ぎて押さえきれていないようだった。


「あれは・・・!メリーナ!」


村の中にメリーナと子供達が固まっている。その方向へと盗賊が向かっているのが見えた。

メリーナの魔法であれば盗賊ごとき難なく対処できるはずだが、ほとんど俺相手にしか魔法を使ったことがなく、所詮は子供だ。盗賊の迫力と周囲の空気から恐怖で竦みあがっているように見える。


俺は急いでメリーナ達の元へ走った。恩寵の効果で、俺の走るスピードは前世の常識からは考えられないほど速くなっている。結果、盗賊がメリーナ達に剣を振るうよりも先に間に割り込むことが出来た。


「なんだぁ?このガキは!邪魔だ!」


盗賊は一瞬驚いたようだがすぐに気を取り直して俺に向かって剣を振るってきた。しかし、その速度は俺の目にはかなりゆっくりに見えた。普段からメリーナの魔法とやり合っているのだ。この程度ならば問題なく対処できる。


「はぁっ!」


俺は盗賊が剣を持っている手首辺りを狙って手刀を繰り出した。すると大した抵抗もなく盗賊の手が宙を舞った。


「ぐあああぁぁぁ!俺の腕がっ・・・!腕がああああ!」


叫ぶ盗賊に構わず、俺は相手の胴に向かって手刀による突きを繰り出した。


ドス!

「ぐふっ!」


俺の手刀は盗賊の体を突き抜けた。


「あ・・・、クロト・・・?」


俺は盗賊から手を引き抜くと、盗賊はその場に倒れた。


「無事か、メリーナ?」

「う、うん。けど、クロト・・・。」


俺はメリーナ達が無事なのを確認して一安心した。盗賊を貫いた腕は返り血で真っ赤だ。子供達を怖がらせないためにすぐ他の盗賊に向かおう。


「メリーナ、子供達を頼む。」

「う、うん・・・。わかった。」


メリーナが頷いたのを確認して、俺は一番近い盗賊に向かって走り出した。


一瞬で盗賊の元にたどり着き、手刀で首を跳ね飛ばす。盗賊だったモノの首の根元から血が噴き出す。盗賊の首は数十メートル先に転がった。


「あのガキを殺せえええ!」


それを見ていた盗賊の頭目と思われる男がこちらに剣を向けながら叫ぶと、二、三十人の盗賊が俺に向かって来た。


俺は向かって来た盗賊を一人一人斬り殺していく。腕を斬り、首を跳ね、胴を引き裂く。あっという間に動いている盗賊の数が減っていく。


「囲め!取り囲んで殺せっ!」


そんな声が聞こえたかと思うと、盗賊達の動きが変わった。正面から向かってくる盗賊に隠れて、後ろに回り込もうとしている盗賊が現れ始めた。


俺はそれに構うことなく、正面から向かってくる敵を相手にした。盗賊達の動きは遅すぎた。後ろから盗賊が俺にたどり着くころには正面の盗賊は全て屍となっていた。


「ば・・・、化け物め・・・!」


その様子を遠くから見ていた盗賊の頭目が言った。その間にも俺は、後ろから来た盗賊を斬り倒していく。


そうして、最後には盗賊の頭目だけが残った。頭目は茫然自失としており、その場に跪いていた。俺はゆっくりと頭目に近づいていく。


「なんで、こんな田舎の村にお前みたいな化け物がいるんだ・・・」


頭目の呟きが村の中に響いた。気付くと辺りは静寂に包まれている。つい先ほどまで盗賊達の雄叫びや村人達の叫び声で満たされていたというのが嘘のようだ。


俺は頭目の目の前まで近づくと、手刀で首を跳ねた。


辺りを確認すると、村中に数十人の盗賊の死体が転がっている。周りは血の海と化しており、盗賊の体のパーツがところどころに散らばっている。俺自身も返り血で真っ赤になっていた。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」


前世の記憶が戻ってから、今までずっと体を鍛えてきたが、数十人の人間を相手にするのは初めてだ。それに人間を斬るのは思った以上に体に負荷がかかる。そのため俺は、相応に消耗していた。


「うぐ、うおえぇぇぇぇえ!」


盗賊を全て倒したことで気が抜けると、盗賊を殺した時の感触を思い出し、胃の中の物を全て吐き出してしまった。


盗賊を殺さなければ、村の人達が、なによりメリーナが殺されたり、慰み者にされるかもしれない。そう思ったからこそ、俺は無我夢中で盗賊を殺し尽くした。


ここは前世とは違う。殺さなければ自分や周りの人間が殺される、そんな異世界だ。よく異世界転生の話には、殺人を忌避したり殺人を犯してしまったことに懊悩するような登場人物が居たりする。しかし、俺はそんな価値観には共感できなかった。


人を殺した人間や自分を殺そうとする人間を殺さず罪を償わせる。そんな行為は法や秩序が十分に存在する世界でのみ許される贅沢だ。自分の身は自分で守るしかないこの世界で、自分を害するものを排除するのに何ら抵抗は無い。


故に人を殺すのに躊躇いはなかったし、いずれそうなるだろうと覚悟もしていた。しかし、それは前世で平和ボケした人間の甘い考えだったのかもしれない。こうして実際に人を、しかも自分の手で殺してみてそれが分かった。


皮膚、筋肉、骨、内臓を斬る時の嫌な感触、溢れ出る返り血、噎せ返るような血の匂い、息絶える直前の断末魔。そして、さっきまで生きていたモノが自らの手で動かぬ死体と化していく罪悪感。それらが頭の中にこびりつき、耐えきれずその場で吐いてしまった。


「クロトっ!」


そんな様子の俺にメリーナが駆け寄って来た。


「大丈夫、クロト?」

「あ・・・、あぁ・・・。大丈夫だ・・・。それより他の人達は?」

「う、うん・・・。大丈夫みたい。クロトが倒した盗賊以外は冒険者の人たちが倒してくれたみたい。」

「そうか・・・。」


俺はそう聞くと安心し、その場に座り込んだ。初めて人を・・・殺した。肉体的にも精神的にも相当消耗していた。


まだ手が震えている。足もガクガクだ。しばらく歩けそうにもない。


「クロト・・・、クロト!」


メリーナは涙を浮かべながら横から俺を搔き抱いた。


「痛いよ・・・、メリーナ・・・。」

「良かった・・・、良かったよ、クロトが無事で・・・!わたし、怖くて、何もできなくて・・・!」

「メリーナが無事で良かったよ・・・。」


俺たちはそのまましばらく動かなかった。その時、一部始終を目撃していた村人から畏怖の目で見られていることに俺は気が付かなかった。

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