おかしな出会いへのプロローグ
風でなびく色素の薄い蜂蜜色の長い髪、大きくつぶらな透き通ったアクアマリンのような色の瞳、彼女が着ている服はどの国の衣装でもなく、ただの少女を連想させる地味な衣装だった。
そして少女の隣に佇むのは、濡鴉のような色の髪を肩にかかる程度で真っ直ぐ切り、深い海のような色の伏せがちな瞳をした少女だった。
少女らが佇むのはどこの国にも所有されていない、「空白地域」であり、そこには人間に毒となる花が咲き誇る。
その花に、魂を魅入られるが最後、幻覚を見、悪夢で魘され朽ち果てていく。少女らがここに居るのはお金の為、旅への資金が尽きただけで、望んでやっている訳では無い事は、傍から見ても明らかだった。
蜂蜜色の髪を靡かせ彼女はこういった。
「こんなに美しい世界にも、毒になる物があるのね…」
と。僕──ミーシャ──はそれを聞いて、首を傾げた。
何故、そんな当たり前の事を今さっき気付いたかのように、言うのだろうか。だが、すぐに結論に至った。彼女は死を見るあまり、不幸を見続けた余り、“当たり前”の事がわからないのだ。
私の隣に立つ彼女は、私──リル──の疑問に首を傾げた。大方彼女が考えていることはわかる。何故そんな事を問うのだろうと、思っているのだろう。
私は、数年前、当時下っ端だった、ミーシャに連れ出され、旅に出た。
私には5年より前の記憶はない。否、意識が再び覚醒したのが5年前。それより前の事など、寝ていた脳が覚えているわけがない。だから私は、周りからの情報と指示で動いていた。名前だって生まれの境遇も、周りからの不確かな情報
そういう中で私は生きていたし、その指示の中に、言いなりになれ、命を捨てろ、と指示されれば、実行する気でいた。何人もの命を奪ったこの手で、生き長らえることなどが必要は無いと思っていた。