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魔王との決戦 ⑦

× × × × × ×




 みんなが生きてるようだから ≪リセット≫ できたのは間違いないみたい。


 まさか私が ≪リセット≫ することになるなんて思ってもみなかったけど、みんなが死んでたから問題ないよね、正しい判断だったよね?


「ステータスオープン」


【氏名】MHK

【性別】女

【年齢】15歳

【職業】僧侶

【レベル】1

【HP】13/13

【MP】6/6

【力】5

【体力】8

【素早さ】6

【賢さ】5


【特技】≪リセット≫ ≪セーブ≫


◆リセット 52

◆セーブ 44


 ステータスを確認して小さな溜め息が漏れた。いま起こっていることが現実だってことがこれ以上ないくらいはっきりと分かってしまったから。


「DCO! ちょっと聞くけど、もうみんなに ≪リセット≫ と ≪セーブ≫ の説明はした?」


 ≪リセット≫ でどこまで戻ったのかが知りたくて、そうDCOに尋ねると


「ああ? なんだMHK。いま説明したんじゃねえか。まさか聞いてなかったのか?」


 と、結構な剣幕で文句を言われた。ちょっとムカついた。でもDCOは虎に立ち向かってたからね、多少の粗相は堪忍してあげるんだ。あとGLOも虎に何か仕掛けてたよね? 【特技】がどうこう言ってたけど、もしかするとGLOは職業とかレベルに恵まれてるのかもしれない。まるで歯が立ってなかったけど。なんにしても私はこの2人を見直した。誰も彼もが逃げ惑う中、この2人だけが虎に立ち向かう勇敢さを持っていたんだ。こういうときに人の本質が表面化するのなら、DCOとGLOは本当に素晴らしい人だってことになる。


「そんなことより私 ≪リセット≫ を使ったんだ」

「お・・・・・・」


 DCOが何かを言おうとしたのを制して続ける。とにかくいまは時間がない。あと1~2分もすれば虎が襲いかかってくるのだから。そうなる前にこちらの行動を変えなきゃ!


「いまから1~2分後にはあそこから虎が1匹飛び出してきて、みんな殺されるんだ。本当に野生の虎よりも大きくて強くって、虎っていうか化物って感じ? DCOとGLOだけはちょっと抵抗してたけど、まるで歯が立ってなかったし」

「虎? でも、そうか。まるでダメか」


 GLOが目に見えて落胆している。


「で、でも私はGLOのこと見直したよ! いままで正直ただのゲームオタクかと思ってたけど、本当はとっても勇敢で素敵な人なんだって思ったよ!」

「そ、そう? ちなみに ≪セーブ≫ はした?」

「ん、してないよ」

「バカ! そしたら次誰かが ≪リセット≫ したら全部忘れるだろ! せっかく見直してくれたって意味ないじゃねえか!」

「え? 私がGLOのこと見直そうがどうしようが私の勝手じゃん、GLOは関係ないでしょ? それに ≪セーブ≫ したらそれだけ虎が来るまでの猶予時間が短くなるし、常識的に考えてするわけないじゃん!」

「お、おう。と、特に見直すとかはどうでもいいんだけどさ。だからとにかく、≪セーブ≫ するときは ≪リセット≫ 直後にするんだよ。そうすれば残り時間をほぼ減らすことなく、次の人が ≪リセット≫ したとしても状況を把握したままでいられるだろ!?」

「そういうことは先に言っておいてよ! こっちはまだ ≪リセット≫ さえ初めて使ったばかりなんだから」

「まったく、MHKもゲームの1つでもしとけってんだよ。ふつう ≪セーブ≫ の使いどころくらいすぐに気が付きそうなもんだがな?」

「うるさいなぁ。じゃ、いま ≪セーブ≫ すればいいじゃん。そしたらとりあえずGLOを見直したことは忘れないんでしょ?」

「するわけねえじゃん。それこそ残り時間が少なくなっちまう」

「ね?」


 言葉遣いは乱暴だけど、やっぱりいまさら ≪セーブ≫ できないって分かってるところはさすがだね。心なしかGLOの私を見る眼差しが熱っぽい気がする。頬もやや赤く染めて、見直したって言われただけでそこまで照れるのか? 不思議とそんな彼の態度も可愛いなぁと思えてしまう。


「ねえ、もし無事に帰れたら、私もパズルゲームくらいやってるから、フレンドになろ!」

「100パー無意味な約束だと思うが、いいよ、もし忘れなければ、な」


 まさかGLOに対してこんな気持ちになるなんて思っていなかったけれど、自分の命を賭けてまで人のために行動できる人って凄いと思うから、この感情に正直になることにためらいはないよ。きっと誰かが ≪リセット≫ しても、こういう気持ちだけはそのままなんじゃないかって気さえする。


 隣にいるMJKが目を丸くして驚いてる。相手がGLOだから、しょうがないね。


 そして、気が付けばすでにみんなとパルムさん達が言い争いを始めているじゃないか。できればこの言い争いを回避させたかったんだけどなぁ。


「パルムさん! パルムさん! パルムさん!」


 挙手して大声を発してみんなの言い合いに割り込む。


「ウニュトラマンの制限時間がヤバいです! ウニュトラマンの能力低下に伴って、もうじき敵の1匹がこちらに襲い掛かってくるんです!」

「なに!? そらどういうことだ?」

「むむ、まるで事の成り行きが分かっているかのような言い方。一体、どうしてそう言えるのかそこから教えてもらえませんか?」

「そうしたいのは山々ですが、とにかくいまは時間がないんです。パルムさんは私達を召喚したことでほとんど余力を残していないかと思いますが、あと1人、召喚できるだけの力はあるんですよね? これはパルムさん自身が言っていたので、間違いないかと思うんですが」

「あと1人? どうなの? パルム」

「むむむ、確かにその通りだよ。私が言っていた、と言うからにはきっとなにかしら魔法を使って知り得たんだろうけれど、なにをしたんだろう?」

「種明かしは魔王を倒したあとにしますので、いまはできるだけ早くあと1人を召喚してもらえませんか!? 急いで! あと10秒で召喚してください! それも飛びっ切り強い人を!」

「分かったよ、でも、誰が出てくるか分からないから、強い人を呼べるかどうか分かんないけどね!」

「ありがとうございます!!」


 これで結末は誰が召喚されてくるか、に懸かることになった。あと私達にできることといえば・・・・・・。


「みんな! パルムさんを守って! 私達の運命はパルムさんに懸かってるんだ!」


 みんなをパルムさんの傍に寄せておけば、多少は虎との距離も広がるからね。みんなで大聖堂から逃げ出せれば私達にとってはそれが一番良いのだろうけれど、パルムさん達を置いて逃げるなんてできないし、それにみんな揃って逃げるって行動を果たして魔物達が許してくれるかどうかも疑問だ。


「おーい! 1匹そっちへ行ったぞ!」


 ラーメンライダーが叫ぶ。私にとってのそれはいまから虎が来るという合図。


「おいあれどうやって相手するんだ?」

「無理でしょ?」


 みんなから戸惑いの声が漏れる。私も戸惑ってる。今回も失敗か。もし ≪リセット≫ 直後にパルムさんに召喚をお願いできてさえいれば、間に合っただろうか。


「出たぁ!」


 そのとき、私の背後でパルムさんの声がした。

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