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ハイライト ⑥

「そ、未来のお前と」

「ふ~ん、ちなみにそれっていまからどのくらい先の話なんだ?」

「大体3年くらい後かな」

「ふ~ん、じゃ、いまの僕とは何も関係ないな」

「おおっと、いきなりそうくるかぁ。ま、GLOならそう言うと思ってたよ」

「じゃあ、もういい?」

「ちょい待ち。確かに賭けをしたのはいまのGLOじゃない。だけど賭けの内容自体にいまのGLOが関わってくるんだ。だからその、話だけでも聞いてくれよ」

「なんだ、未来でいまの僕を賭けの対象にしたのか?」

「うん、GLOだけじゃなくて、ほかにPAO、HDK、MHK、MJKの4人が対象になってんだ」

「へえ、なんか面白そうだから話を聞くだけ聞いてみようかな。勝ち負けのことは知ったこっちゃないが」

「へへ、ありがとう。GLOが聞いてくれなきゃ、話が始まらねえからさ」


 DCOは人懐っこい笑みを見せて、賭けの内容を話し始めた。


 DCOが ≪リセット≫ して現在に戻ってくる前に生き残っていたのはDCOと僕、PAO、HDK、MHK、MJKの6人だったらしい。ほかの人達は大聖堂を脱出するときか旅の途中で死んだかはぐれたかしたのだろうが、DCOも話し難そうだったのでそのへんは黙って聞いた。≪リセット≫ を翌日に控えて、みんなでお酒を飲んだらしいんだが、どうやらその席で誰の発案か知らないが、魔王を倒した後、残った6人で旅行しようという話になったようだ。甚だ疑問だったが僕もそのとき、みんなと一緒に旅行に行きたいと言ったらしいんだな。さらに驚くべきことに、なんと未来の僕はみんなの前で恥ずかしげもなくみんなのことを好きだとまで言ってのけたらしい。本当にそのときその場所にいたのは僕だったのかと思った。異世界のことだから人の姿になりすます魔法やアイテムだってあるかもしれないしな。だが、DCOはその場にいたのは確実に僕だったと言って譲らなかった。


「未来のGLOはそのとき3年間みんなと一緒に過ごしたあとだったからな。それこそ毎日、同じ釜の飯を食って旅してたんだ。いまはまだ高校入って間もないから、みんなもGLOのことをあまり分かってないし、逆にGLOもみんなのことをあまり分かってないだろ? みんな、といっても、残った5人だけど、そいつらはみんな良いヤツだった。きっと未来のGLOもそれを知ってたんだよ」


 DCOのその言葉を聞いてなるほどと思った。確かにずっと一緒にいれば人を見る目も、距離感も変わるかもしれない。ようするに、未来のGLOは僕とは本当に関係のない別人ってわけだな。いまの僕は良いヤツってわけじゃないし・・・・・・ついさっきも八つ当りでPAOを苛めたばかりだしな。どんなふうに苛めたか、やり方は分かっているが、実際に僕が彼に何をしたかとなるとこれが分からない。ただ、僕が ≪セーブ≫ したポイントに ≪リセット≫ してきたのであろうPAOが現われ、生気のない顔で諦めの言葉を口にしたというだけ。確かに僕は始め、PAOのその顔をその言葉を期待して ≪セーブ≫したはずだった。だが、実際に諦観の表情を露わにした彼をまのあたりにして後悔させられた。とても、後味が悪かった。


 話を戻そう。


 ≪リセット≫ するとDCO以外の5人からは旅行計画を立てた記憶が消える。だからDCOはほかの5人から ≪リセット≫ 後に改めて5人に旅行計画のことを伝えるように頼まれた。いや、厳密に言えば、頼んだのは5人じゃなく4人か。未来GLOだけは旅行計画のことをいまの僕には伝えなくてもいいと断ったというからな。旅行に行くならDCO達5人で勝手に行ってくれと、こう言ったらしいんだ。うむ、なかなか未来GLOも分かっているじゃないか。ここに至ってようやくDCOの話に登場する未来GLOが本当に僕だったのだということ納得できた。で、そんなふうに未来GLOがみんなの旅行計画にケチを付けたもんだから、怒った未来HDK達が、「じゃあ私達が誘えば一緒に旅行に行ってくれるね?」と未来GLOに持ちかけたらしい。そこで未来GLOは「無駄だ」と、「みんなが僕を誘うなんてあり得ない」と、「賭けてもいい」と、こう言ったのだそうな。


 つまり、未来の旅行計画のことをDCOが僕を除く4人に話して、僕が4人から誘われれば僕の負け。誘われなければ僕の勝ち、という勝負なわけだ。


 うん、誘われるはずがない。未来の僕じゃないが、賭けてもいい。


「というわけだから、オレはこれからPAOとかにも話してくるからよ、後でもし向こうからGLOを誘ってきたらちゃんと来いよ」

「あ? 最初に言ったよな。賭けをしたのは未来GLOであっていまの僕じゃない。だから誘われても僕は旅行なんて行かないよ?」

「またまた~、素直じゃないんだからぁ」

「素直に、行きたくないんだ。だって面倒そうなんだもん」

「アホだなぁ、みんなと一緒に旅してみなぁ? 絶対楽しいと思うからさ」

「いいだろう。そんなに言うなら賭けに乗ってやる。ただし、条件がある」

「条件?」

「ああ、いまのDCOは魔王を倒したヒーローだからな。みんなにその気はなくてもDCOが言うならと僕を誘いに来るかもしれない。それだと意味がないからな。だから、僕の名前は出すな」

「どういうこった? GLOも誘う予定なのに名前を出さずにって・・・・・・名前以外でGLOを連想させるような感じで伝えればいいってことか?」

「んなわけないだろ。つまり、DCOが誘うのはPAO、HDK、MHK、MJKの4人で構わないが、その4人が誰を誘うかは各々勝手に選ばせろってことだ。仲の良いヤツでも一緒に旅行に行きたいヤツでもなんでもいいから、DCOはその4人に好きなヤツを誘わせればいい。そうしておいてその4人が僕を誘いに来たなら、僕の負けだ。大人しく旅行に付き合うとしよう。で、僕が勝ったら、そうだな。ジュースでも奢ってもらうか」

「う~ん、ジュースは別にいいんだけど、難易度高そうだなぁ」


 まるで腹でも痛めたかのように顔を歪めて、参ったとでもいうよう頭の後ろで両手を組んでDCOが唸り始めた。大方、名前を出さずに僕を誘うことができるかどうか、頭ん中でシミュレーションでもしているんだろう。


 ふん、お前も分かってるんじゃないか。僕がそういうヤツだってことを。難易度だと? そりゃ高えだろうよ。だから【賭けてもいい】なんだ。


「あれ、でもPAOとかを誘うにしたって、未来でこういう約束をしたからっつって誘うんだぜ? そのときにGLOの名前も出てくんだけど、それはいい?」


 目線を足元に落として、つと考えてみる。


 言われてみれば、DCOとPAO、HDK、MHK、HJKの5人もふだんから仲良しこよしで一緒に行動しているってわけじゃなかった。その5人で旅行しようというのだから、確かに動機付けは必要か。僕の名前を全く出さないとなると、僕が旅行に参加する理由もなくなってしまう。そうなるとあまりに不公平過ぎて、賭けが成立しないか。ま、僕も選択肢に入れておくのは特に問題じゃない。旅行に行く面子として名前が挙がるのでなければ、大丈夫。ただ選択肢に名前があるだけでは選ばれない、選ばれることなどありえない。その真偽を確かめるのが賭けの中身だからな。


「ああ、≪リセット≫ 前まで生き残っていた面子の中に僕がいたってことは話してもいい。だが、約束をした【みんな】の中に僕が含まれているってことは言うなよ。そこまで言ってしまうと、DCOが僕を誘ってるのと同じことになりそうだからな。あと、これはDCOが誘いたい4人を集めるのに必要そうだから譲歩するんであって、ほかに誰を誘うかを決めるのはあくまでその4人だ。そこのところ勘違いするなよ」

「おう、分かってらぁ。じゃ、行ってくるよ」

「おう、気ぃ付けて行ってこいよ」

「何言ってんだ? まだ旅行に行くわけじゃねえんだぜ」

「僕が誘われなけりゃ、結果の報告なんていらねえからそのままみんなで旅に出ちまえよ」

「GLOこそまだこの敷地から出るなよ。勝手にふらふら消えられちゃ堪らねえからな」

「誰が出るかよ。僕はさっさと家に帰りたいんだ」

「へへ、とりあえずみんなを誘ってくるからよ」

「ああ、あととりあえず何でもいいから服着ろよ。パン一でうろついてたら不審者と間違われるぞ」

「ありゃ、そうだった。いっけね、慌ててて忘れてたよ」

「ここが異世界でなけりゃとっくに通報されてるからな」

「パルムちゃんとキキちゃんに相談してみるよ」

「そうだな。あの2人にとってDCOはリング上の格闘家みたいなもんなんだろうし、パン一でも問題ないな」

「それじゃ・・・・・・って、ん?」


 DCOが屋敷の方を見て疑問符を口にしたから、僕もDCOの見ている方を確認すると、屋敷の方からABC高校の制服を着た男女が歩いてくるのが見えた。女子3人、男子1人。誰? 早速屋敷内を散策か? 4人が近づいて顔が判別できるようになって疑問に思った。その4人がいまDCOとの話にも挙がっていたPAOとHDK、MHK、MJKだったからだ。


「お? なんか知んないけど面子が揃ってるぞ? こりゃ話が早そうだ」

「おいDCO」

「なんだ?」

「さっきの旅行計画の話だが、まだあいつらには話してないんだよな」

「ああ、みんなに話す前にGLOに話しとかなきゃ、賭けの話ができねえからな」

「・・・・・・」


 それは尤もな話だった。僕に賭けの話を通した後でなければ、仮にPAO達が僕を誘ったときに未来GLOとの賭けの話を持ち出されたって、僕が「賭けのことなんて知らん」と言えば終わりだからな。あくまで誘われるかどうか分からないうちでなければ、オレとDCOが旅行計画のことについて真面目に話すこともなかったわけだし。だが、腑に落ちない。なんであの4人が一緒に動いてるんだ?


 僕達の視線に気付いたのか、HDKが遠くから手を振った。誰に? DCOにだろうな。彼女も数年間この世界を旅してきたんだ。DCOとは違う未来を旅してきたといっても、その経験が彼女とDCOとの距離を縮めさせたという可能性は十分にあり得た。


「お~い、こっちこっちー! ちょっと来てくれ~!」


 DCOが4人に手を振りながら叫んだ。まさか。


「おい、まさかここで旅行計画の話を持ち出すつもりじゃないだろうな?」

「ん、そうだよ」


 屈託のないDCOの返事に僕は手で目を覆って天を仰いだ。拒絶されるのは分かっている。分かっているのだが、本人の目の前でわざわざそんな拷問みたいなことしなくってもいいのにと思った。ま、DCOはこういうヤツだから仕方ないか。


 まもなく、HDK達が僕達のいるベンチの前まで来た。まず、HDKがDCOの制服を彼に返却。そのためにDCOを探してたんだとも言っていた。そして、GLOにも用があったんだとも言った。その言葉に嫌な予感がした。もしかすると僕はDCOに一杯喰わされたんじゃないか。


「DCO、旅行計画のことはもうGLOに話した?」


 HDKが事もなげにDCOにそう尋ねた。


「ええ? なんでHDKが知ってんだ?」


 DCOがわざとらしく驚いてみせた。なんという茶番劇だ。詰めが甘かったなDCO。


「ふ、とっくにナシ付いてんじゃねえかよ」

「ええ? いやぁ? オレは知らねえよ? だってまだHDKにも誰にも旅行計画のこと話してないもん」

「ああ? 何言ってんだ? 実際HDKは知ってたじゃねえか。要するに、DCOは僕との信頼関係よりも賭けに勝つことを選んだってことだろ?」


 DCOは時々アホなことをするし間抜けなところもあったが、それも彼の1つの長所、いわば愛嬌のようなものだと思っていたし、嘘をつくようなヤツだとは思ってもいなかっただけに、相当ショックだった。まさかDCOまで僕のことをバカにしてるなんてな。ああ! そうだ! こんなもんだ! 人間、どこで化けの皮が剥がれるか分かったもんじゃない!


「違えよ。ホントに誰にも言ってないんだって」


 慌てふためいて言い繕うDCOを僕は侮蔑の眼差しで睨み続けた。もう答えは出てたから、言い訳なんて見苦しいだけだった。


「この勝負、結果が出る前に終わったな。DCO、お前の反則負けだ。だけど、ジュースはいらないぜ。別に勝ったって気分でもないしな」

すいません、あと1~2話で終わります

本当ですよろしくお願いします

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