表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/39

一転攻勢 ⑭

魔王編ラストまで1話にまとめると長くなってたので2つに分けました。


折り返しからちょっと一転攻勢が長かったですが、よろしくお願いします!

「なんでGLOがここにいんだよ!?」


 HDKがGLOを責めるように強い口調で問う。


「HDKやMHKだってここにいるんだし、僕がいたって問題ないだろ?」

「問題しかないんだけど?」

「まったく、HDKが僕のことを嫌ってるのは知ってるが、この局面でいちいちそんなこと持ち出してくんなよくっだらねえな」

「誰もそんな話してないでしょ!? あんたが闘いに巻き込まれて死んだら誰が ≪リセット≫ すんだよ?」

「ああそれで怒ってたのか。前提が違ったから勘違いしてしまったようだ。なにしろ ≪リセット≫ するのはそもそもHDKの担当だったろ? その役目を放り出したヤツからそんなことで文句を言われるとは思ってなかったからさ」

「それこそいざってときはGLOがいるから、私はここにいれたんだ」

「そんな話、僕は聞いていないんだが」

「言わなくたってふつう分かるでしょ?」

「そうやって勝手に人に押し付けるなよ。これだから女ってヤツは何考えてんのか分からないんだ。ちなみに保険として、ここにいる面子が全滅したときにはMJKに ≪リセット≫ するよう頼んである」

「いまのGLO、やっぱムカつくね」

「お互いにだから、別に構わない。僕は目の前の事態にそぐわない行動を取るヤツは嫌いだし、みんなの命が懸かった重要な役割を放棄するようなヤツなんてそれこそさっさと死ねって思う」


 GLOが苛立ちを露わにしている。こんな様子のGLOは未来GLOまで含めて初めて見るな。


「ま、いいや。ところであんた何しに来たの?」


 GLOの苛々を受けて逆にHDKの方は矛をしまったみたい。表情も口調も変えて仕切り直しってとこかな?


「DCOとHDK達の様子が気になって来たんだ。ま、おかげでDCOの動きが悪い理由も分かったよ」

「でもそれってあくまでキキさんとパルムさんの分析だよ」

「キキさんの分析なら信頼できる。なにしろキキさんは何でも知ってるんだから」

「あ、じゃあ追加でこれもいいですか? あくまで可能性の話ですが、DCOはいまや魔法使用不可の条件の下にかぎりですが、魔王と対等に闘えるようになってしまいました。そんな彼がいま魔王を倒してしまうと、最早この世界に彼と対等に闘える相手はいなくなってしまいます。賢明な皆様ならもうお分かりですね? つまり!! DCOは魔王を殺すことなく打ちのめし、魔王に良き好敵手ライバルとしてい続けてくれることを願っている!! そして2人は互いに技を磨き合い、さらに強大な悪との闘いに挑むのです!! そんな物語ストーリーがDCOの中になきにしもあらず!」

「・・・・・・それってキキさんの願望ですよね?」

「笑止! そんなの当たり前じゃないですか。これこそが私の思い描く完璧な展開なんですから!」

「キキ! 実際にそうなるかどうかは置いといて、私もそんな熱い展開が見てみたいよ!」

「パルム~! やっぱりパルムは話が分かるね!」

「ふ、キキさんも可能性の話だと最初に言ってるから、キキさんの信頼がいまので損なわれることはないんだが、まあ、ないな」

「う~ん、私はなんだかありそうな気がしてきた。DCOってなんだかんだでいま武闘家してるしさ」

「そうだね、武闘家だもんね」

「僕が知ってるのは柔道部のDCOだけだからな。そのへんはなんとも言えんが、やはりHDKとMHKは分かっていないな」

「そういえばさっきもそんなこと言ってたけど、何が分かってないって言うの?」

「簡単なことだよ。DCOは高校生で、僕達は同級生ってことだ」

「んん?」


 GLOの言葉が簡潔過ぎていまいちよく分からない。DCOが高校生で私達が同級生ってことは私もHDKも分かってるんだけど。


「DCO! 耳だけで適当に聞いてくれ!」


 そのとき、GLOがDCOに向かって叫んだ。DCOはいまも魔王との闘いの真っ最中。とてもGLOの言葉を聞いていられる状態じゃないと思うけど。


「お前はいつから武闘家になったんだ!? 少なくとも僕の知ってるDCOはABC高校の1年で柔道部だった! そして、自分のためじゃなくてみんなのために闘ってたはずだ! みんなのために、みんなと力を合わせて・・・・・・この点になにかおかしなところがあるかい? DCOのお気に召さない点でもあるってのか? はっきり言ってやる! お前は魔王より弱い! お前はすでに2度、魔王に負けてるんだ! だからお前をサポートするためにHDKが来た! MHKが来た! その2人の仲間のサポートを得ていざ魔王と対等に闘えるようになったら、今度は武闘家としてのプライドが傷付いたとか言い出すのか?」


 GLOのお説教が大聖堂内に木霊する。彼の言葉に胸が痛くなるのはDCOだけじゃない。私にもいまのGLOの言葉は刺さる。【 私達と魔王の戦い 】を自分の中でいつのまにか【 DCOと魔王の闘い 】に置き換えてしまっていたことが不思議だった。


「ここまで話してまだプライドがどうこう言いやがるならもっと決定的な事実を教えてやる! 僕達はそもそも ≪リセット≫ と ≪セーブ≫ のおかげで勝つまで魔王に何度だって挑戦できるわけだし、現実に戦力を増強しながらそうしてきている! つまり、これまでもこれからも僕達は魔王を嵌め続けるわけさ! 本当に卑怯なやり口だ! で? お前のプライドちゃんはこの事実を前にして、どのつら提げてしゃしゃり出ようとしてるってんだ?」


 おお、GLOがDCOのプライドを根本から否定しにかかってる。


「GLOもいいこと言うね。私もそう思うよ」


 HDKはGLOと同じ感じか。


「ちなみに魔王を倒してもこの世界には闇の帝王が君臨しているらしいから闘う相手には事欠かないぞ!」


 ついでとばかりにGLOが先のキキさんの推測を受けたフォローを入れた。さっきは否定してたけどやっぱりGLOのキキさんへの信頼度は高いようだ。


「チッ、外野がうるさいな」


 魔王がぼやき、裏拳をDCOに放つもそれはDCOの鼻先を掠めるに留まった。だけどDCOが仰け反り気味に体勢を崩すと、魔王がこちらに視線を移し、膝を追って私達の方へ駆け出そうとした。そのとき、体勢を崩しつつあったDCOがその動きを勢いに変えて放った回し蹴りが魔王の胸部に炸裂。魔王はそのままダウンした。いまのDCOの動きにはかなり切れがあった。もしかしてもう迷いがなくなった? 


「いま、外野に手を出そうとしたろ?」

「く、まさかあそこから蹴りが飛んでくるとは思わなかったぞ」

「魔王さんよぉ、オレの目が黒い内は余所見してんじゃねえよ」

「ふん、いまのDCOをかわすことなど容易いと思ったのだがな・・・・・・目が変わったな」

「おう! オレはもう吹っ切れたぜ! いまのオレは、このままあんたを倒すことになんのためらいもないぜ」

「まったくのハッタリというわけでもなさそうだな」

「当りめえよ! あんたの闇の闘気もなかなかのもんだが、聖拳を極めたオレの敵じゃない。そうだ、冥土の土産に良いことを教えてやる。あんたが思ってるよりオレ達はずっと卑怯なことをしてたんだぜ?」

「なに?」

「あんたは1対多数ってことでオレにケチを付けてきたけど、それが些細なことに思えるくらい、のことをオレ達はあんたにしてんだ。分かんねえだろ?」

「一体、なにをしているというのだ?」

「さっき外野にいる男が言っていたが、オレはあんたに少なくとも二度負けてる。もう2度以上、オレはあんたと闘ってんだぜ? なのに、あんたはオレと闘うのは初めてだろ? ま、そういうことだよ」

「何を言ってるのか意味が分からんな」

「例えば、もしあんたがいまオレ達3人を倒しても、次、あんたはまたこの時間のこの場所で4人を相手にすることになる。それでもあんたが勝つようなら今度は5人、それでもダメなら今度は6人ってな具合に、オレ達はあんたを追い詰めてゆくんだ。それにあんたは気付かない。何をされているのか分からない。そりゃそうさ。理屈を知ってるオレやほかのヤツでさえ、それをやった当人がそうと言ってくれなきゃ気付けないっていう、そんな感じなんだから」

「とどのつまりが何をしているというのだ?」

「教えな~い! 残念でしたぁ!」

「く!」

「でも、あんたに対してやってることは大体話したぜ。あとはあんたが色々試してみろよ。ま、色々っつったって、かわいそうだが、あんたにとってはいつもオレ達との戦いは初めてってことになるんだけどな」

「御託はいい。まずはここにいる連中を皆殺しにしてみるさ」

「無理だね」

「貴様さえ倒してしまえばどうとでもなる」

「ふん、死ぬのはあんただ」


 DCOはもう大丈夫みたいだ。ちょっと喋り過ぎな気もするけれど、自分達が何をしているのかを吐き出してしまわないと魔王を倒す踏ん切りが付かなかったのかもね。


「DCOの ≪極聖≫ の構えに対し魔王も闇の闘気の練成を始めたようですね。これだけ凄まじい聖なる力と闇の力が激突することになるとは、一体誰が予想できたでしょうか」

「それだけ魔王の力が人間側の予想を遥かに上回っていたということだろうね。それに匹敵する力を持つDCOという勇者様がいてくれたことに感謝しなくちゃ」

「パルムが奥義 ≪クラス転移≫ を使えたことにもね」

「そうよ魔王がもしここで倒れたら、世界は私にひざまつかないとダメだよ」

「ひざまつきはしないけど、ありがとうとは思うよ。世界中のみんなが、ね」

「むむ、ま、それでいいよ」

「ね」


 確かに、パルムさんの言うように凄まじい闘気が2人に湧き上がってきているのが後衛職の私にさえ分かる。おそらく次が最後の衝突になるだろう。あれだけの力がぶつかり合って、お互いにただで済むはずがないんだ。


「次が最後の勝負だ。私の全身全霊を懸けて貴様を葬ってやる」

「おう、オレもそうしようと思ってたところだ。その方が話が早くていいやな」

「おおおおおお!」

「おおおおおお!」


 DCOと魔王が同時に距離を詰めた。そこから始まる乱打戦。どちらも相手をよく打ち、また打たれていたから、どちらが優勢なのか見当も付かない。魔王もなかなか倒れてくれないし、DCOも倒れるかと思ってもなかなか粘る。2人とも前へ前へとなにかに駆り立てられるように相手を攻め立てていて、退がることを選択肢から除外しているようだった。これが先程の言葉の意味。これが最後の勝負。最後の打ち合い・・・・・・ここでどちらかの意識が飛ぶまで打ち合う腹なんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ