魔王との決戦 ②
ここまでご覧いただければ分かっていただけたかと思いますが、視点は ≪リセット≫ した人物のモノになっています。主人公で固定するとおそらく本編が一瞬で終わってしまうんですよね
ネガティブB子(以下NBK)に ≪リセット≫ のことを聞いて、試してみたけど、本当に最初に戻ったみたい。
「マジで戻るね」
隣のNBKにそう伝えたけど、彼女ったら私が何のことを言っているのかが分かっていない振りをするの。
「ちょっと、からかってんの?」
「え?」
「NBKが ≪リセット≫ のことを教えてくれたから試してみたんだよ? なのにNBKが分からないってことはないでしょ? 」
「 ≪リセット≫ ってなんだよ」
「もしかして・・・・・・なにも覚えてないの?」
「え、ちょっと待って。HDKが何を言ってんのか分かんないんだけど」
どうやらNBKは私をからかってるんじゃないみたい。ホントに記憶がないんだ。彼女はさっき ≪リセット≫ を試したって言ってた。そのときの彼女には確かに ≪リセット≫ をした記憶があったはずなのに、私が ≪リセット≫ をした途端に忘れちゃうとか。
ってことは、≪リセット≫ した人は記憶を持ったままスタート地点に戻れるけど、他の人達はスタート地点に来たときと同じ状態に戻るって感じなのかな。NBKも ≪リセット≫ は経験済みだったけど、他の人に ≪リセット≫ を使われちゃうと【スタート地点のNBK】になっちゃうから、それまでNBKが経験したことの意味がなくなるってことね。じゃあ、話を進めるためにもみんなに ≪リセット≫ を使わせないようにしなきゃ! そのためにはみんなに ≪リセット≫ のことを伝えないと。私ってアッタマ良い!
「勇者のみなさ~ん! 本日は遠路はるばるようこそオーギュスト家においでくださいました! 早速ですがみなさん、あちらをご覧ください!」
みんなの視線が1点に集中したところで私もその視線の先に移動する。
「あの中の牧師のような黒い服を着たオジサマが魔王なんです・・・・・・」
「みんな聞いて! 私達はそこの女の子2人組に召喚されたの。いま紹介された魔王を倒すためにね」
「お、あなたにはどうやら正義の味方としての適性があるようですね」
キキちゃんが私の方を見てそう言った。私が発言したことで、当然だけど未来は変わりつつあるね。
「なんでHDKはそんなこと知ってるんだ? オレ達はまだ状況を把握できていないっていうのに」
「良い質問だよデブゴンC夫(以下DCO)。なんで私が状況を把握してるかっていうと、私は少しだけ未来を見てきたからなの」
驚くみんなを前にして、私はステータスとリセットについて説明した。ついでに私のステータスも改めて確認しておく。さっきは画面が出てきたことにビックリして中身まであまり見てなかったからね。
【氏名】HDK
【性別】女
【年齢】16歳
【職業】黒魔導士
【レベル】1
【HP】3/3
【MP】5/5
【力】2
【体力】2
【素早さ】4
【賢さ】4
【特技】≪リセット≫ ≪セーブ≫
◆リセット 2
◆セーブ 0
むむむ、これはゲーム音痴の私でも分かる。これはすぐ死ねるステータスだ。でも別に悲しくなんてないけれど。だって女の子だし、この中に【可愛さ】って項目があったならきっとメーターを振り切っちゃうんだから。
「いい? みんな、さっきも言ったけど、【特技】の ≪リセット≫ を使うとその人以外、これまで経験してきたこと全部忘れることになるみたいだから、絶対使っちゃダメだよ! 下手すると私達ずっとこの時間を繰り返すことになっちゃうんだから!」
それはそれは念入りに何度でも釘を刺しておく。
「ちなみにセーブって試してみた?」
博士E夫(以下HEO)の質問。そういえば【特技】の欄に ≪セーブ≫ ってあったね。
「ううん、試してないよ」
「どう? 1度使ってみない?」
DCOがみんなにも確認するように周囲を見渡しながら言った。うん、特にみんなにも異存はなさそうだね。
「それじゃあ、≪セーブ≫ も使ってみよっか?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ステータスオープン」
【氏名】GLO
【性別】男
【年齢】15歳
【職業】博徒
【レベル】1
【HP】9/9
【MP】5/5
【力】6
【体力】5
【素早さ】4
【賢さ】7
【特技】≪リセット≫ ≪セーブ≫
◆リセット 3
◆セーブ 0
ふむ・・・・・・どうやらセーブの実行は免れたようだな。ステータス画面端にある【◆リセット 3 ◆セーブ 0】の文字はおそらく ≪リセット≫ と ≪セーブ≫ のカウンター。さっき確認したとき2だったリセット回数が3になってるから間違いないだろう。それにしても無駄に ≪セーブ≫ をしようとするとは、考えなしにも程があるな。HDKはどうやらゲームには不慣れなようだ。
召喚師であろう少女とメイド、そして厳かな雰囲気の大聖堂・・・・・・これらの要素からここが召喚の儀式を行う場所なのだと推測。同じ敷地内に魔王とその配下であろう魔物達が攻め込んできているということは、将棋でいうところの王手を掛けられた状態であり、いま、メイドと召喚師の2人は苦し紛れの召喚を繰り返しては召喚した者を魔王にぶつけているといったところか。
・・・・・・最悪だ。
「おい、HDK、≪セーブ≫ はしたのか?」
「は? ≪セーブ≫?」
リセットを使ったことでHDKも召喚直後の状態に戻ったのを確認。試しに尋ねてみたわけだが、ゲームオタクと揶揄されているオレへのHDKの対応はいつもどおり冷たい。ま、いいさ。いまはクラスカースト上位の可愛こちゃんはお呼びでないんでね。ここは僕の戦場、僕が支配する領域だ。
「おい、みんないいか?」
「あ? よくねーよ」
「なにを以ってオレ達がいいと答えると思ったのか説明してみろよ」
「なんだよてめえしゃしゃり出てきてんじゃねえよバカ」
「そうよゲーマーL夫(以下GLO)は引っ込んでなよ」
「・・・・・・」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
やり直し。