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一転攻勢 ⑧

「ぬうう」


 魔王がDCOに殴られた鼻を手で押さえて顔をしかめている。ただの拳1発だが確実に効いているみたい。


「DCO! 聖拳は!?」

「ああ、おかげさんでさっきより少しはマシになったよ。だけどまだしっくり来ないんだよなぁ」

「そう・・・・・・じゃ、がんばって!」


 魔王が少し痛がっているからといって油断はできないから、私はそそくさとその場を離れた。魔法が使えない私はただの女の子だから闘いの邪魔をしちゃ悪いと思ったんだ。


「≪ダークフォール≫」


 魔王がDCOへか私へか分からないけど、魔法を撃つための呪文を唱えた。魔法が発動しないことに相当疑念を抱いてるな。ずっと訳が分からず首を傾げてくれてればいいんだけど。


「よお、魔王さんよぉ。魔法が出なくてお困りかい? そりゃそうだろうなぁ。だってあんたは魔法がないとてんで弱虫になっちまうんだから。お? 怒ったのか? 悪魔のくせにプライドなんてあるのかよそんなもんよりもっと大切なものを捨ててるクセに、余計なもんは捨てないんだなぁ? ああ? 悔しいならその身1つでかかってこいよ。どうした? それとも魔法が使えなくなったら降参か?」


 どんな意図があるのか知らないけど、DCOが魔王を挑発している。まさか魔王がファイティングポーズを取るまで待ってやるつもりなのか? まさかの正義の味方症候群か何かか?


「何を言ってる? 私はただ魔法が発動しないという現象そのものに疑問を持っただけで、それ以外に憂える点などない。貴様も少しは使えるのかもしれんが私の敵ではない」

「お? ようやく魔法なしでやる決心が着いたか。そうだ、そうこなくちゃせっかくのオレの大魔術の意味がなるからな」

「どこまで本気で言っているのか知らんが、いいだろう。ここは貴様の挑発に乗ってやる」

「そいつはどうも」

「元々オーギュスト家の血筋を絶やすことしか頭になかったが、貴様のおかげで、貴様の絶望した顔を見るという目的が1つ増えたよ」

「それは残念だったな。あいにくオレは絶望なんて死んでもしねえよ!」

「どうだろうな」


 こうして2人の本格的な闘いが始まった。


 互いに言葉を交わすこともなく、殴打と蹴り技が繰り出される。どれだけ相手の殴打や蹴りを受けようともDCOも魔王も怯まない。勝負は互角!! ・・・・・・ううん、魔王の方が余裕があるように見える。なにしろ魔王は正義の味方症候群の重症者だ。最終形態になったといっても、まだまだ手の内を隠していそうな、余力を残していそうな気がする。


「すごい闘いですね」


 キキちゃんが私の傍に来て、目に涙を溜めながらそう言った。なぜ泣いてる?


「正義の味方達がまさかの敗北を喫し、この世界は、確実に終わりを迎えようとしていました。ですが、そこに颯爽と現われた聖拳の名手。大魔導士様が自らの魔法の使用を犠牲にしてまで魔王の魔法を封じたことが、偶然にもいまの彼の闘いの舞台を築いたんだと思うと、感慨深いものがありますね。いまの彼の闘いは、たくさんの正義の味方達の犠牲の上にあるんです! 感動です! うるうる」


 キキちゃんがいろんな妄想を膨らませてるってのは分かった。これはDCOに惚れるまであありそうだな。


「1人の男が世界の未来を背負って、命を張って戦ってるんだ。その姿に感動しないわけがないよ」


 パルムちゃんまで2人の闘う姿に惹き付けられている。


 とか思ってる間にも事態は動いていた。


 魔王がDCOの左腕の手首、肘、肩を立て続けに極めたんだ。肩を極められた状態で背後を取られたDCOもすぐに身体のバネを使って窮地を脱したものの、左腕が思うように動かないのかその後は魔王の攻撃をいなすこともできず、良いパンチやキックを貰うことに。


 それでも闘う姿勢を崩さないDCOの気概は認めるけど、傍目にも彼がすでにボロボロだというのは分かる。


「DCO! ≪リセット≫ しなくていいの!? もう今回は ≪リセット≫ でいいよ!!」


 もうこれ以上闘えないでしょと思って、そうDCOに叫んだ。


「≪リセット≫ するのは、HDKに任せる、よ。オレは、最後まで闘う。へへ、オレが、≪リセット≫ することはない。分かるだろ?」


 DCOは口の中もズタズタなのかとても喋りにくそうに声を発した。とても苦しそうで見ちゃいられないけれど、それでも最後まで闘うと言った彼の意志を尊重しなければと思った。分かったよDCO、勝敗がはっきりするまで、私は ≪リセット≫ を使わない。


「まだ戦意喪失しないのか? それとも右腕も使い物にならなくなれば気が変わるかな」


 立ってるのもやっとな感じのDCOの右半身を、魔王の丸太のような足による蹴りの連打が襲う。右腕のガードも下がってきたけど、右足へのダメージもあったのかついにDCOが膝を床に付いた。


「おらぁ!」


 魔王が無防備に差し出されたDCOの頭を横殴りに蹴り飛ばした。死んだ? 死んだか? DCO!!


「く・・・・・・」


 おおっと、DCO、まだかろうじて息があるみたい。立ちあぐねているから、もう終わりなんだろうけど、まだ決着していないから、≪リセット≫ はまだだな。


「ほお、まだ立ち上がろうとするか、聖拳の使い手よ」

「言った、ろ? オレは、絶対に、諦めねえ」

「言ってることと身体の反応が正反対だな。身体の方はもう無理だと音を上げているのに、言葉だけ強がっても惨めさを増すだけだぞ」

「うる、せえ」

「憐れなものだな」

「うるせえよ」

「せめて楽に死なせてやろう」


 魔王が憐れみの眼差しでDCOの首に手を掛けようとしたそのとき、


「おわぁ!?」


 魔王が驚きの声を発してDCOの傍から飛び退いた。


「こ、これは!? 聖なる力!? き、貴様、貴様かぁ!? まだこんな手を隠していたのかぁ!!」


 そううろたえる魔王の右手が焼けただれていた。


「隠してたんじゃねえよ。いま、分かったんだ」


 言いながら、DCOが立ち上がったぁ!


「魔王さんよぉ、最終ラウンドといこうか」

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