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一転攻勢 ⑥

「DCO、虎を倒したらちょっと話いいかな? そんな長くは話せないと思うけど、作戦会議をしたいんだ」

「ああ、いいぜ」

「じゃ、早速だけど、いま魔物と正義の味方達が戦ってるけど、作戦会議が終わってもあっちに行かないでね」

「ん? どういうことだ?」

「いや、それがね、正義の味方達はまだ全然本気出してないんだって。だから私達が慌てて戦いに交ざる必要はないらしいんだ」

「おお、そうだよ。正義の味方の闘い方も面倒臭いんだよな」

「うん、そういう話をDCOから聞いた」

「なるほど、で、作戦ってのは?」


 いまのDCOは魔王と戦った直後とあって、やはり話が早い。だけど、やっぱり疲れはあるだろうから魔王との戦いに備えて少しでも休んでもらわなきゃだよね。


「まず、DCOは魔王との戦いに備えて休んでて。魔物は正義の味方と私で片付けるから」

「お、気が利くねえ。HDKの魔法があれば楽勝だろうし、ありがたくそうさせてもらうよ」

「それから、落とし穴対策だけど、私の力で魔王の魔法を使えないようにする」

「おお? そんなこともできんだ?」

「うん、詳しい説明は省くけど、正しくはこの大聖堂の中で魔法を使えないようにする感じ。だからその魔法を使うと私も魔法を使えなくなるんだけどね」

「なるほど、そうやって無理矢理に魔王をオレの土俵に立たせようってわけか。でも、HDKの魔法も魔王にダメージを与えられるかどうか試してみなくってもいいのか?」

「私の魔法はいいんだ。だって、聖なる力が含まれてないんだもん。それよりかはDCOの聖拳の方が魔王を倒す力を持ってると思う」

「聖拳か」

「そう、だから、結局、最後はDCOにがんばってもらわないといけないんだよね」

「ああ、別に何も問題ねえよ」

「ところが問題があるらしいんだ。未来のDCOが言うには、いまのDCOはまだまだ聖拳を使いこなせてないらしいんだよね」

「お、そんなことも知ってたのか? 実はそうなんだ。魔王によると、まだまだオレの聖拳は正当な伝承者のそれには及ばないらしいんだ」

「でしょ? でもね、未来のDCOはその問題を解決したの。つまり、聖拳を極めたらしいんだ。本人曰く、だけど」

「じゃあ今度はその未来のオレにまた戻って来てもらわないとな?」

「ううん、DCOにはこの作戦会議中に聖拳の極意を伝授するから、大丈夫だよ」

「HDKが伝授してくれるのか?」

「未来のDCOの言葉を借りるだけっていうか、そのまま伝えるよ。だからいまから私が話すことは未来の自分が話してることだと思って聞いてね」

「ああ、言ってみて」

「では、コホン、まず、聖なる力はどこにでもある」

「どこにでも?」

「そう、この大聖堂の中にも、箪笥の中にも、あるいは財布の中にも、世界中の至る所に聖なる力は満ちてるんだって」

「ふ~ん、でも未来のオレが言ったんだったらそうなんだろうな」

「聖拳の使い手は無意識に聖なる力を吸収してるんだけど、いまのDCOは聖拳を使うときに自分の中に蓄えられた聖なる力を使ってるのね」

「んん、ま、自分の中の聖なる力を使ってるって意味では、そうだよ」

「それだとダメなんだよ。この世界に満ちてる聖なる力を自分の物にしてそれを攻撃に転化することこそ聖拳の真髄なんだって」

「ホントにそれオレが言ったの?」

「未来のDCOは極稀に難しい言葉を使うんだよ」

「へえ。で、世界に満ちてる聖なる力を自分の物にするにはどうしたらいいって?」

「心だよ」

「ええ? なんだそれ?」

「心の目で聖なる力を感じることが大事なんだってさ」

「よく分かんないけど、そうなんだ?」

「こう言えばオレなら分かるって未来のDCOは言ってたよ。なにせ未来のDCOも感覚でやってたみたいだから、具体的にどうするっていうのは説明できなかったんだ」

「そのへんはオレらしいな」

「ま、DCOは休憩がてら聖なる力を感じてなよ」

「感じられるかなぁ?」

「自信を持ってやったらいいよ。だって未来のDCOのお墨付きなんだからさ」

「うん、とにかくやってみるよ」

「頼むね」

「おう」


 そこまで話したとき、数匹の魔物が私達の方へ向かってきた。たぶんウニュトラマンが星へ帰ったんだろうね。


「じゃ、話はそんなとこだから、私は魔物退治してくるね」

「ああ、頼んだぜ」

「それじゃ・・・・・・」


 魔物の全体像を把握するためにスゥっと宙に浮く。


「≪ダークブラスト≫!!」


 呪文を唱えると、私達の方に向かってきていた魔物の傍で黒い爆発が起きて魔物の進行が止まる。魔法のステッキがあれば1発で魔物の1匹や2匹、原型を留めないくらいに吹き飛ばせるのに、生身だとなかなか威力が上がらないや。


「むむ、いまの魔法は・・・・・・新手の正義の味方というわけでもなさそうだな」


 いまの魔法のせいで魔王が私の方を見た。さすがに魔王というだけあってこっちの世界の魔法には精通してるようだね。そんな私の背後ではみんながキャーキャーと歓声を上げてるし。ふっふっふっ、私の活躍に驚いたのかな?


「おーいHDK、パンツ見えてるぞー!」


 は?


 DCOの声に足元を見れば、DCOが私の方を見ていた。そういえば制服ってスカートじゃん!! そりゃみんな騒ぐわけだ!


 退場リタイア・・・・・・。


 もう私は戦えない。いまのでとてもやる気がなくなっちゃった。


 宙に浮くのをやめて、DCOの前に降りた。


「DCO、私の負けだよ。DCOはパンツ一丁でがんばってるのに、私ったら、やっぱダメだ。パンツ見られながら戦えない。もし戦うとするなら、ウチの男子共を全員魔法で片付けてからじゃないと無理だ」

「そうしょげるなよ。オレは男だし、HDKは女だろ? 男と女じゃパンツの価値が違うからな、しょうがないよ。オレのパンツなんて誰も見たがらない、でもみんなHDKのパンツは見たいんだ」

「・・・・・・そうだね」

「なんなら ≪リセット≫ するか?」

「いや、もう1回同じことを説明する気がしない。そんな気力がないよ」

「戦場に男も女もねえんだし、オレはHDKのパンツを見てもなにも思わなかったぜ。だって一生懸命戦ってるヤツのパンツが少し見えたからってそれがなんだってんだ?」

「ありがとう」

「でもみんなはまだ戦ってるっていう自覚がないんだろうからな。多少は大目に見てやれよ。あとでオレからも怒っとくからさ」

「うん、ちょっとやる気出てきた」

「そうだ! オレのズボンはくか? ちょっとでかいと思うけど、ベルトすりゃへっちゃらだろ?」


 う~ん、DCOのズボンかぁ。どうしよ?


 そのとき、グオーンという音がしたかと思うと、キキキー!! と1台のバイクがタイヤで弧を描きながら私達の前に停まった。文字どおり大聖堂の床面には黒いタイヤの跡が。


「青春だな!」


 そのライダーはそう言って私達に向けて親指を立てたかと思うと、すぐにラーメンライダーの加勢に向かった。一体、彼は何ライダーなんだろう?


「彼はイケメンライダーです。その名のとおりイケメンな正義の味方なんですが、性格にやや難がありまして、顔を傷付けられることを極端に嫌っているんですね。で、顔を傷付けられると逆上してしまって、相手が誰であろうとボコボコにしちゃうもんだから、一部の識者達は彼のことを正義の味方の皮を被った狂人だと言っている程です」


 私の心の内を見透かしたかのようにキキちゃんが唐突に説明してくれた。しかもその腕にはDCOの制服を抱えている。


「さあ、勇者様もこれを着て戦ってください!」


 素敵な笑みを見せて私にDCOの制服を差し出してくるキキちゃん。これはもう戦うほかないね。


 さ、DCOのズボンをはいて、ブレザーを腰に巻いたら仕切り直しだ!

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