一転攻勢 ⑤
すいません、なぜか分かりませんがけり姫にはまってしまって投稿遅れました^^;
「いよいよやばい雰囲気になってきたな」
「ま、相手は魔王だからな。この世界で一番強いヤツだって言われたっていまさら驚きゃしねえや」
ゴゴゴゴゴ・・・・・・。
「ふふふ、まさかここまで苦戦を強いられるとは思わなかったぞ。全く予想外だったが、なぜか嬉しくもある。闘いに燃えるこの感覚、とうに枯れたものと思っていたが、我ながら意外だよ」
「おい、魔王の野郎、おかしなことを言ってるぜ?」
「いや、オレには分かるぜ! 魔王の言ってることが!」
「ああ、そういやあんたもおかしなヤツだったな」
「正義と悪の違いはあれど、争いを避けられぬ関係であればこそ、互いに実力の拮抗した好敵手を求めて磁石のN極とS極のように惹かれあっているのだ」
「まったく、付いていけないよ」
「さあ、どちらからでもいいぞ。死にたいヤツからかかってこい」
魔王の野郎、悪役のくせして恰好付けやがって。
「ふ、スカしてねえでそっちから来いよ。いまはあんたが挑戦者だろ?」
ラーメンライダーが魔王を挑発している。魔王から冷静さを奪おうという作戦なのだろうか?
「ああ、そうだな。ではこちらから・・・・・・むむ!!」
「気付いたかい? あんたの周りには細麺が張り巡らされているのさ。触れれば細麺があんたの身体を切り刻むぜ」
「さすがだな。正義の味方といっても正攻法で攻めてくるとはかぎらぬか」
「たりめえよ。勝たなきゃ正義も意味がないもんでね。お次はこれだ! ≪煮卵爆弾≫!」
「≪ダークファントム≫!」
魔王が魔法を使ったんだろうけど、ラーメンライダーが投げた煮卵が空中で消えた。
「なにぃ!?」
ラーメンライダーが驚きの声を上げる。
「なにを驚いている? 私は魔王だぞ。魔法の1つや2つ使えるさ。貴様らを倒すのに手足はいらぬ」
「やれやれ、本当に手強いな。仕方ない、オレも本気を出すか」
そう言ったラーメンライダーはバイクのエンジンを止めると、ゆっくりとバイクから降りた。
「ま、まさかいままで抑えて闘ってたのか?」
「無論だ」
「そいつぁ頼もしいかぎりだが、なんで揃いも揃ってあんたら実力を出し惜しみながら闘ってんだよ?」
「愚問だな。正義と悪の闘いは1点取られては2点返し、2点取られては3点返しのシーソーゲーム。初回に10点取ってコールド勝ちというわけにはいかんのだ」
「はあ・・・・・・」
「では、行くぞ!!」
「行けばいいさ、地獄へな。≪ダークホール≫」
「ぬぁ!?」
ラーメンライダーのそんな間抜けな声が聴こえたかと思うと、いまのいままでオレの隣に立っていたラーメンライダーの姿は消えてしまっていて、一体何が起こったのかオレは理解できずにいた。
「ふん、こんなもんだ」
魔王が鼻で笑う。
「野郎! ラーメンライダーに何しやがった!?」
思わずそう吠えていた。答えなど返ってくるはずもないのに。
「足元を見てみろ」
と思っていたのに、意外にもヒントめいた返事が。言われるままに足元を見てみると、先程までラーメンライダーが立っていた床面に穴が開いていたから、ここにラーメンライダーは落ちてしまったのだと直感した。覗き込んでみるが真っ暗で底が見えない。
「穴があれば落ちるぅ! 単純なことだろ?」
「くっ」
せっかくラーメンライダーが本気を出そうとしていたのに、足場がなければ落下するという理屈は、それが猫だろうと虎だろうと変わらない。どれだけ強かろうが関係なく相手をやっつける魔法か・・・・・・RPGでいえば即死系の魔法ってとこか。
そんなことを考えていると、穴から1本の太麺が伸びてきた。これはラーメンライダーの麺に違いない。そう思ってオレはその麺を手に取り、穴に向けて叫んだ。
「ラーメンライダー!! 無事なのかぁ!?」
微かに声が反響するように聴こえた。
「・・・・・・」
なんて言っているのかまでは分からなかったが、確かにラーメンライダーが何かを叫んでいる。彼がまだ無事なのは良いんだけど、一体どれだけ深いんだ? とにかくオレは手に取った麺をタスキのように背に回して、それからラーメンライダーを救出するために麺を引き揚げた。
うんしょ、こらしょ。
ぐっと引く手にしっかりとラーメンライダーの重量が感じられる。ラーメンライダーが力尽きる前に急いで引き揚げてやらなきゃ!
「お前も、落ちろ!」
人が必死になっているってのに魔王がそう言うが早いか、オレの足元もすっぽ抜けちまった。
やられたと思った。
オレが落下するさらに下にいるであろうラーメンライダーの断末魔は聴こえない。すでに墜落してしまったのか、それともまだまだ深くまで穴が続いているのか・・・・・・。
いずれにせよ、オレもラーメンライダーも今回は負けだ。次は、どうすっかな? ま、とりあえず ≪リセット≫ するか。
* * * * * *
そしてズボンを脱いでるところから始まるわけで・・・・・・もう、情けないなぁ!
「GLO・・・・・・」
「ああ!? 大丈夫じゃねえよ!? 分かるだろぉ? 全ッ然大丈夫じゃねえからな!」
「ん、なにかあったな?」
「ああ、さっき魔王と闘ってきた」
「1回戦は負けたか」
「おう、負けた。ウニュトラマンは先に帰っちまうし、そのあとにきたウルトラにゃんもやっぱり時間が来たからってんで帰っちゃうし、ラーメンライダーは本気を出す前にやられちまった。かくいうオレも魔王とまともにやり合う前にやられたよ」
「1回戦やってみて、実際、次は勝てそうか? 魔王の出方とか、少しは分かったと思うが」
「正直、あまり勝算はねえな。ま、やるしかねえんだろうが」
「厳しいか」
「ああ、相当厳しいぜぇ?」
「ところでDCO、怪我は?」
「ああ、魔物には多少殴られたが魔王とはまともに打ち合ってなかったから、たいした傷はねえよ」
「じゃあ、いま ≪セーブ≫ しておいてくれ」
「お、おう」
「んで、またここから逃げてさ、未来からDCOよりマシな勇者を連れてきてくれよ」
「なるほど、いま ≪セーブ≫ したから、次にほかの誰かが ≪リセット≫ したら、いまのオレと一緒に闘えるってわけか、って、なんか他人事みたいな言い方だな」
「ああ、そういうわけじゃないんだが、いまやDCOの方がオレよりも全体像を把握してると思うと、もうオレがいちいちがんばらなくてもいいんだなって」
「お? おお、そうだよ。もうGLOが1人で色々抱える必要ねえんだからな。今度はみんなと楽しく旅しようぜ!」
「いや、別に楽しく旅するつもりはないんだが」
「へっへっへっ、またそうやって遠慮してるけど、もうGLOの本心は分かってんだから、さっさと素直になりなよ」
「あ? なんのことを言っているのかさっぱり分からないんだが」
「あ! やっぱダメだ! この作戦を考えたのはGLOなんだから、GLOが責任を持って動いてくれなきゃ上手くねえからな」
「え? でももう1度成功してるし、どうすればいいかなんていまのDCOの方が分かってるだろ?」
「おうよ、だからGLOに責任ある行動を取ってほしいわけよ。特にオレにとっては2度目だが、みんなには初めての旅になるんだ。だから、できるかぎり成功した1度目と何も変えねえ方がいいんだ。何も変えなきゃ、きっとまた上手くいくんだ」
「なるほど。DCOの言うことにも1理ある」
「だろ?」
「じゃ、細かいことはここから脱出したあとで話そうか」
「おう、そうしようや」
「おーい! 1匹そっちへ行ったぞ!」
「ほら、虎が来るぞ。でももう虎には負けないか」
「あたぼうよ! あんな虎程度はもうわけねえぜ!」
「ふん、頼もしいかぎりだな」
~そして3年後~
† † † † † †
大聖堂に戻って来た。装備は持って来れなかったけれど、高校のブレザー姿の方が、みんなと同じチームって感じがして気持ちが弾むな。
っと、とりあえずDCOに戻ってきたことを伝えるか。
というわけでGLOと会話中のDCOに声を掛けた。それにしてもDCOはパンツ一丁でホントなにやってんだか。
「DCO、私も戻って来たよ」
「ん、HDK? もしかして ≪リセット≫ してきたのか?」
「そ、強くなって戻って来たんだ。DCOと一緒に闘うためにね。GLOも、ただいま」
「ん、ああ」
ふふ、こっちのGLOはいつものGLOだな。
「それよりHDK、≪セーブ≫ はしたのか?」
「あら、そうだった。≪セーブ≫ ≪セーブ≫ っと。いやあ、ほんの2~3分前までは ≪リセット≫ したらすぐ ≪セーブ≫ って思ってたのに、案外すぐ忘れちゃうね」
「いや、2~3分前のことを忘れんなよ」
「ね、ホントだよ」
「ま、いいんだけどさ。DCOもHDKも、がんばってな。でも、あんま無理すんなよ」
ふてぶてしいGLOも多少は気を遣った台詞を言えるみたいだね。ちょっと照れ臭そうにしてるところがなおグッドだ。
「じゃあ、DCO、行こうか」
「ああ」
そうして私達がみんなが集まってる所から少し距離を取ろうとしたとき。
「そうだ、ところで召喚は頼んだ方がいい?」
と、GLOが私達に尋ねた。味方が多いに越したことはないし、頼んだ方がいいよね?
「ああ、頼むよ」
私が迷っている間にDCOが答えた。
「了解」
GLOがパルムちゃんの方へ向かう。
「おーい! 1匹そっちへ行ったぞ!」
よっし! ここから2回戦スタートだ!