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一転攻勢 ①

 * * * * * * 




 うッ!!

 ビリ!!

 パッツン!!

 ポンポンポンポン!!


≪リセット≫ を使って召喚直後の大聖堂に戻って来れたのは良かったけど、戻るや否や早速予期していなかった不幸に見舞われるとは。ベルトに腹が圧迫されて、すぐに留め金が吹っ飛んでいった。ズボンの股下が裂けたのは間抜けだった。カッターシャツのボタンも全部取れちゃうし・・・・・・。オレの図体が以前に比べてでかくなったのかもしれないけど、こうキツキツじゃ身動きが取れないや。


 脱ごう!!


 うッ!!


 みんなが健在なのはいいんだけど、オレのブレザーが突然はち切れたもんだから、揃いも揃ってオレの方を見てやがる。笑ってるヤツもいるし。くそう! ≪リセット≫ する直前まで恰好付けて登場してやろうかと思っていたのに、とんでもないトラップだよ。あ、≪セーブ≫ しておかなきゃ、またGLOに怒られるからな。ああ、何が悲しくてズボン下ろしながら ≪セーブ≫ しなきゃなんねんだよ? 周りに注目される中で服を脱ぎ捨てるこの情けなさ。女子がキャーキャーうるせえしよお? オレはストリップしてるわけじゃねえんだぞ。全員明後日の方でも見てろってんだ。それでも豚さんイラスト柄のトランクスだけはゴムの伸縮性が高かったのか無事で助かった。トランクスまでダメだったらオレは戻ってくるなり即リングアウトだったぞ。


「DCO、大丈夫か?」

「ああ!? 全然大丈夫じゃねえよ! 見りゃ分かんだろぉ? オレのブレザーはもうお釈迦なっちまった。なにが悲しくてパンツ一丁で魔王と闘わなきゃなんねえんだ?」

「魔王と、闘う?」


 GLOがちょっと勘付いたようだったからオレは彼の肩に手を回して言ってやった。


「おうよGLO。オレはみんなとここを脱出して、強くなって戻って来たんだ」

「と、いうことは・・・・・・」

「ああ、未来から ≪リセット≫ して戻って来たんだ。おっともう ≪セーブ≫ はしたぜ?」

「そうか、僕も戻ってくるならDCOだと思ってたよ」

「うん、未来のGLOもオレに戻れって言ったよ」

「なんだ? 僕が言ったのか」

「なんだ? じゃねえよ。変なとこでがっかりすんなよ」

「ああ、じゃあ、何もかも知ってるんだろうからいちいち説明はしないが、パルムさんに召喚は頼んだ方がいいか?」

「ああ、頼む。戦力は多いに越したことはないし、正義の味方の強さもズバ抜けてるからな」

「知ってる? 召喚も必ず成功するわけじゃない。ときにはお邪魔虫が出てくることもあるんだぜ?」

「そうなんだ? あいにくオレは能面ライダーしか覚えてないからなぁ」

「は? 能面ライダー? 逆にそれは僕が知らないな。ま、いいや。じゃあ、もう慌ててお願いしたりしないよ。虎はなんとかなるんだろ?」

「おう、あんな虎、もう屁でもねえよ」


 オレの答えにGLOは短く笑って応えて、パルムの方に歩いていった。GLOはきっともうオレのことを信用してるのに違いない。オレのこと? それともオレにGOサインを出した未来のGLO自身のことを、かもしれないけど。GLOの傍に駆け寄るMJK。きっとオレとGLOが何を話したかが気になったんだろうな。さて、と。こっちはもう ≪リセット≫ 前に身体は温めてきてるんだ。あとは、そうだな。まずはこっちに突進してくる虎と一騎打ち、それから魔王を襲うか。よし。


「おい、DCO。トランクスだけは死守しろよ。それがいまのDCOの生命線だからな」


 不意にGLOから声が掛かったかと思ったら碌でもないこと言いやがって。いざってときにトランクスのことなんか気にしてられるかよ。MJKも変な目で人のこと見やがって。そんなにオレの裸が不快なら目隠しでもしてろよな!


「おーい! 1匹そっちへ行ったぞ!」


 さあて、おいでなすったな。突進してくる虎に向かってオレもゆっくりと駆ける。じわりじわりと速度を上げて、ある程度距離が詰まってきたところで一気にトップスピードまで加速! 獰猛な虎の顔が瞬時に目の前に近づくとオレはそのままの勢いで蹴りを入れてやっつけた。この3年間で何度か倒したことのあるキラータイガーと同種の虎だったから、正直全く負ける気はしなかった。オレのレベルはすでに55。キラータイガーなんて一発さ。


 ふう。


 1つ息を吐いて呼吸を整える。


 ウニュトラマンとラーメンライダーの2人が魔物と戦っている方を確認。魔物はまだ15匹以上戦っている。床に転がっている魔物も20匹以上。そして、黒服の魔王は戦いの輪からやや離れた位置に陣取り、優雅に観戦を決め込んでいやがった。いや、観戦はしてるが、何もしていないわけじゃない。魔王が口笛を吹くと、新たな魔物がどこからともなく出現しているようだった。ウニュトラマンとラーメンライダーがそれぞれに魔物達を各個撃破しているが、場にいる魔物全部が2人を襲っているわけじゃない。2人と戦闘中の魔物のすぐ後ろで、残りの魔物達は自分が戦う順番が巡ってくるのを待ってるんだ。


 こんな状況じゃ、魔王と一騎打ちなんてできねえな。いつ背後を襲われるか分かったもんじゃねえや。


 まずは押され気味のウニュトラマンを援護しつつ、いま現われている魔物共を蹴散らすか。


「おおおお~!!」


 サッカーの試合に途中交代で出場した選手のように猛然と走り、オレは草臥れた者同士が戦う輪の中に飛び込んだ。


 まずはウニュトラマンと交戦中の腰蓑巻いたオークの親分みたいや野郎の背後からその肩に手を掛けて、その先にいる鎧を着たゴリラ野郎に蹴りを見舞う。着地後、すかさずオレの右隣に立ってるカバ野郎の鼻先に裏拳を叩き込み、さらにそいつを担ぎ上げて放り投げてやると、周りを囲んでいた魔物達も怯んだのかオレ達からやや距離を開けた。


「ふん!」


 腰を落とし、オレが3年間の歳月をかけて会得した ≪聖拳≫ の基本の型である不動の構えを取る。背後にいるのはさっきまで交戦中だった魔物を倒したウニュトラマン。これでオレ達の互いの背中は安心だから、敵も容易には近づけないようだ。


「ニュニュニュ~(おお、キミも正義の味方だね。普段はどこで戦ってるのかな?)」


 まだ戦いの最中だってのにウニュトラマンが気さくに話しかけてくる。敵に押されてるのかと思ったけど、案外余裕だな。


「普段なんてねえよ。オレはここで戦うために修業したんだ」

「ニュニュワ(そいつはすごいな! そういうことなら私も安心してM123銀河に帰ることができそうだ)」

「ああ? 帰るだと? 何言ってんだ? まだ魔物はうじゃうじゃいるんだぞ?」

「ニュニュ(私はこの星では3分間と少ししか戦えないようになってるんだ)」

「んなバカな?」

「ニュワ(おっと、どうやらタイムリミットが来てしまったようだ。あとは任せたぞ! 若き正義の味方よ!)」


 ウニュトラマンが何を言ってるのかよく分からなかったが、彼が光る小さな球体に姿を変えて飛んでいったところでようやく理解した。ウニュトラマンは本当に帰っていったのだと。

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