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魔王との決戦 ⑨

 使用人が洗濯物を干したり庭を掃除したり、植栽したりと、とても魔王に攻め込まれているお屋敷のものとは思えない長閑な風景。大聖堂の中で起きていたことが夢だったのではないかと思えるほどに。


「すいません、このお屋敷のどこかにMP回復アイテムとHP回復アイテムがあると聞いたんですが、そこまで案内していただけませんか?」


 っと、私が呆けている間にもGLOはすでに行動を進めていた。


「む、あんたら誰かの知り合い? オーギュスト家へはどういったご用件で?」

「パルムさんに召喚された勇者の1人だと言えば分かるかい?」

「おお、パルムお嬢様が召喚を!?」

「驚くポイントがなんかズレてるんだよなぁ。なあ、あんた。いま大聖堂に魔王が来てるんだが、知ってるかい?」

「ん? 魔王なら確かに今日ここを訪れることになってるが、まだ来てないぞ」

「黒い牧師の恰好をしたオジサマは見なかったか? そいつが魔王だよ」

「確かにさっき牧師が大聖堂に入るのは見ました! だがそれがまさか魔王などとは!」

「あんたらを欺くための変装だったのかもな」

「むきぃいい! 魔王のヤツ、オーギュスト家に何月何日に伺うとか手紙を寄越したりしておったからいまのいままで正々堂々としたヤツだと思っておったのに、それがここに至って変装などという姑息な手段を用いて屋敷内に忍び込み、パルムお嬢様の暗殺を謀るとは、なんと見下げた果てたヤツ・・・・・・」

「それはいいから時間がないんだ。早く回復アイテムのある場所まで案内してくれ」

「承知致した!」


 使用人らしき初老の男性の案内を受けて、私達はなんの問題もなく回復アイテムを手にすることができた。それをGLOはすぐに使った。


「ステータスオープン」

「どう?」

「回復してる」

「よかった」

「じゃあ、≪リセット≫ するぞ」

「待って」

「なに?」

「≪リセット≫ するとさっきの分も含めて、記憶から消えちゃうんでしょ?」

「ああ、さっきも言ったが、≪リセット≫ 後に ≪セーブ≫ していなければ、次に他の誰かが ≪リセット≫ した場合、それまでの記憶を失ってしまうことになる」

「ねえ、GLO。私、いまのこの気持ちを大切にしたいんだ。だからお願い、このあともさっきと同じように行動してみせて。そしたら私、きっとまた同じ気持ちになれると思うんだ」

「ん? 僕が同じように行動したからって、MHKがまた同じ気持ちになるとはかぎらないだろう。よく分からないけど」

「その点なら大丈夫だよ。だって私、GLOを好きになったことに誇りを持ってるんだもん。だから、GLOが同じように動いてくれれば、絶対に私はまたGLOのことを好きになるんだ! って、なんか恥ずいね」

「あ、ありがとう。素直に嬉しいよ。じゃ、できるだけ同じように動くようにするよ」

「うん、じゃあ、またね」

「・・・・・・うん、また」




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 え? え? えええ~? 僕がMHKのことを好きになったんだが・・・・・・。おおおおん、なにがまたGLOのこと好きになるんだ、だよ!? なんであんなに目が輝いてたの? なんであんなに可愛かったの? MHKといえば顔は可愛いものの勉強だけしてるってイメージで、クラスでも地味な存在だったはずなのに!! 特に2人きりになったときの喋り方とか仕草はヤバかったな。ちくしょおぉ、前と同じように行動しろっつったってよぉ、MKHが僕のこと好きになったのって前々回の話だろぉ? 前回のならまだしも、前々回のことなんて僕も覚えてねえんだよぉ! う、おつつけ、頭を整理しろ。


「ステータスオープン」


【氏名】GLO

【性別】男

【年齢】15歳

【職業】博徒

【レベル】20

【HP】138/138

【MP】63/65

【力】48

【体力】36

【素早さ】24

【賢さ】13


【特技】≪リセット≫ ≪セーブ≫ ≪カード≫ ≪ダイス≫ ≪交換≫ ≪とんずら≫ ≪ポーカーフェイス≫


◆リセット 53

◆セーブ 44


 むむ、 ≪セーブ≫ 回数に変化がないな。つまり最後に僕が ≪セーブ≫ した後の ≪リセット≫ 回数がどうであれ、誰も前回までの出来事を覚えていないことになる。って、それにしても誰も ≪セーブ≫ してねえのかよ。みんなやる気ねえな。


 一体、どう動けばMHKのハートを再び射止めることができるのか、これがもう分からない。僕はどうすればいいんだ? いっそのこと誰かに ≪リセット≫ を使ってもらって楽になるか。この気持ちを手放して、MHKも僕に無関心、僕もMHKにほぼ無関心な間柄に戻れば双方丸く収まるんじゃね? でもその場合、せっかく回復したHPとMPまで失われるんだよなぁ。


 はい、≪セーブ≫。


 したぁ! 心にほろにがビターな傷を負ってしまったが、みんなの犠牲を思えば ≪セーブ≫ しないわけにもゆかず・・・・・・。


 パンッパンッと2度ほど自分の両頬を平手で打って気合いを入れる。いつまでもクヨクヨするな。


「みんな! 召喚師のパルムさんの傍へ移動してくれ! 彼女が魔王討伐のキーパーソンなんだ!」

「あ? なんでGLOに指図されなきゃなんねえんだよ?」

「せや、なんで自分目立とうとしとんねん?」

「そうよGLOは引っ込んでなよ」


 こ・こ・か・ら・か・・・・・・。そうだよ、こうなるから僕はDCOを頼ったんじゃないか。もう絶望した!


「待って! みんな、いまはGLOの言うことを聞いて! たぶん、いま1番状況を把握してるのがGLOなんだよ!」

「おお、MJKがそう言うなら」

「そうだな、GLOの言うことにもたまには耳を貸してやるか」


 MJK!! キミは本当に天使のような女だな! ありがとう!


 みんながMJKの指示に従いパルムの傍に寄っていったので、僕はパルムに召喚をお願いすることに専念する。


「パルムさん! もうウニュトラマンの制限時間がヤバいんだ! ウニュトラマンの力が低下して、虎の魔物が1匹こっちにやってくる。そうなるともう僕達は終わりだ。だから頼む、パルムさんの力で強力な正義の味方を召喚してくれ!」

「なに!? どういうこと?」

「むむ、確かに3分以上経過してるからウニュトラマンはそろそろ退場するかもしれない。でも、なぜそこで虎の魔物が登場するんですか?」

「ウニュトラマンが攻撃の手を緩めた隙とかを縫ってこっちにやってくるんじゃないか? っていうか、虎の事情までこっちは知らない。いまはとにかく時間がないんだ。早いところ次の正義の味方を呼んでくれ」

「なんか言い方が腹立つわぁ」

「あなた方も勇者なんだから、早いところウニュトラマンとラーメンライダーの加勢に向かったらどうなんですか?」

「そうしたいのは山々だが、あいにく僕達には魔物を相手にできるだけの力がないんだ。そんなことより早くしないとみんな死んでしまうぞ」

「なんかいちいち癪に障るけどウニュトラマンがヤバいのは確かだし、これが最後になると思うけど召喚してみるね」

「最後?」

「うん、奥義で力を使い過ぎちゃったから、もうそんなに余力がないの」

「ああ、そうだったの。無理はしないでね」

「分かってる」


 やれやれ、一時はどうなることかと思ったがやっと召喚する気になったか。経過時間としては、前回のMHKが最初にDCOや僕と駄弁ってた時間を丸々スッ飛ばした計算になるから、前回よりも早いはず。できれば虎の魔物がこっちに来る前に召喚できれが良いんだが。


「おーい! 1匹そっちへ行ったぞ!」


 チッ、間に合わないか。


「出た!」


 お、間一髪セーフか?


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