聖徒会 第三章
聖徒会に蓮が入ってから、数カ月が経った。
聖徒会の仕事にもどうやら慣れてきたようだ。
そんな中、蓮は会長の仁に呼び出されていた。
「どうやら聖徒会の仕事にも慣れてきたようだね。
安心したよ。」
「まあな、結構ハードだけど。」
それに対し、微笑む仁。
「それで次の任務だけど、今度は僕と君でタッグを組むことになったんだ。
ここは一つ、よろしく頼むよ。」
「了解。
それで次の任務の内容は?」
「これは聞いた話だけど、どうやらこの学園内に魔物が潜んでいるらしいんだ。
今回の任務はその魔物を退治する事だ。
早速、行動開始と行こうか。」
蓮は頷いた。
それからしばらくの間、二人は校内を探し回ったが、魔物の姿はどこにもなかった。
「どういう事なんだ?
どこにもいないじゃないか。」
自販機でジュースを買い、それを飲みながら蓮は言った。
「どうやら、相当身を潜めるのが上手な魔物かもしれないね……。」
ペットボトルのお茶を飲みながら、仁は言った。
その後も二人は捜索を続けたが、結局、魔物の姿はどこに見当たらなかった。
やがて辺りはいつの間にか、暗くなっていた。
「どうやら今日はここまでのようだね。
神島君、今日はもう帰るとしよう。」
「ああ、分かった。」
と、二人は下校の支度を始めた。
帰る方向が同じだった二人は一緒に帰る事になった。
しばらくして、蓮は仁の家の前まで来ていた。
仁の家は代々続く、和菓子屋だった。
「ここが、会長の家……!」
立派な家を前に蓮は驚いていた。
「うちは代々続く、和菓子屋なんだ。
自慢じゃないけど、味は保障するよ。」
と、仁は家のドアの前に立つとこう言った。
「今日は疲れただろう。
どうだい、少し寄っていかないか?」
仁の両親は早くに亡くなっており、現在は祖母と二人暮らしだという。
「ゆっくりしていってね。」
と祖母は蓮を温かく出迎えてくれた。
頭を下げる蓮。
「さあ、召し上がってくれ。」
言われるがままに蓮は色鮮やかな和菓子を口にした。
「美味しい……!」
味はかなりのものだった。
「それは何よりだよ。」
ふと微笑む仁。
それから二人は魔物について話していた
仁は魔物による犠牲者をこれ以上出したくないと強い使命感を持っていた。
その話を聞いていた蓮は仁の強い使命感に共感していた。
後日、二人は再び捜索を始めていた。
今度こそ魔物を探し出してみせると二人は意気込んでいた。
そんな二人の前に一人の男子生徒が現れた。
何やら様子がおかしい。
次の瞬間、その男子生徒は二人に襲い掛かった。
「!?」
かろうじて、かわす二人。
「何なんだこいつは!?」
すると仁は判断した。
「そうか、魔物だ!
魔物が憑りついているんだ!」
「何!?」
何とか体制を立て直し、身構える二人。
すると男子生徒の身体から黒いオーラが出てきた。
「こいつが魔物か!」
その魔物は次々と他の生徒に憑りつき、二人を攻撃してきた。
それでも何とかして、魔物を追いかける。
やがて魔物は屋上へと場所を移した。
階段を駆け上がり、屋上へ出る二人。
すると魔物は黒い巨大な蝙蝠へと姿を変えた。
蓮は赤い石を取り出し、炎の剣士へと姿を変えた。
「はあっ!」
炎の剣で斬りかかるが、素早くかわされてしまう。
そのまま宙を舞っていた蝙蝠は再び黒いオーラへと変化し、何と蓮の身体に憑りついた。
「神島君っ!」
すると蓮の目の色が変わり、そのまま仁へと襲い掛かった。
何とか攻撃をかわす仁。
「やめるんだ!神島君っ!
元に戻ってくれっ!」
仁の必死な叫びも蓮には届かない。
「くっ……!どうすれば……!」
その時、蓮が突如、苦しみだした。
見ると、月の光が蓮に当たっていた。
「そうか、光だ!」
すると仁は、蓮に向け、光の光線を放った。
光線を受けた蓮は更に苦しみだした。
やがて蓮の身体から、黒いオーラが出てきた。
「無事かい!?神島君っ!」
「何とか……、ありがとな、会長。」
二人は蝙蝠に向けて身構える。
「魔物は苦しんでいる。
一気に決めようっ!」
「ああ!」
そして蓮は剣から炎の刃を、仁は光の光線を放った。
その二つの攻撃は蝙蝠を直撃し、悲鳴と共に消滅した。
「やった……!」
元の姿に戻る蓮。
「ありがとう、神島君。
君の協力のおかげだ。」
蓮の方を見ながら仁はお礼を言った。
「俺は何も……。」
「いや、これでまた危機から救うことができた。」
そう言うと、お互いに笑いあう。
そして、
「どうだい?また僕の家に来ないか?
新作の和菓子があるんだ。
ぜひ、食べていってくれ。」
それに対し、蓮は嬉しそうに頷いた。
とあるビルの屋上、そこに一人の男が立っていた。
男は不気味な笑みを浮かべると、その場から姿を消した……。