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たいまぶ!  作者: 司条 圭
第4章 森川厘 ~ローレライ討伐録~
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第87話 私の願い

「どうしたの? 黙りこくっちゃって。私なら、何でも叶えてあげるよ?」


「もちろんよ。それをしっかり叶えてもらうわ」


「そう……じゃあ早くしてよ。言っておくけど、半端なものだったら突っ返すわよ?」


「大丈夫、零華。私は、私自身の願いを持ったから」


 ゆっくりと深呼吸。


 この迎撃戦の最中、私は1人静寂の中にいるかのように集中している。


 イメージする。

 願いを創造する。

 これを現実にする。 

 これが私の…………

 いや、違う。


 皆と、零華と……


 そして何よりも、私の願い!





「零華、私が創造した未来を現実にして!!」





「…………!」



 零華の表情が明らかに変わった。


 驚き……


 というよりも、恐怖というべきか。


 しかし、その中にはどこか安らぎもあった。


「……それで、終わるの? 終わらせてくれるの?」


「終わらせてみせるわ。必ずね」


 零華の表情に、未だ不安が見て取れる。

 それを解きほぐすように……


 私は、千里にしてもらったように優しく話しかける。


「大丈夫、私を信じて、零華。私とあなたなら出来る」


 手を差し伸べる。

 恐る恐る手を近づけていく。

 震える手を、少しずつ寄せていく。

 あと少し。

 私が手を取ろうとした直前に、その手を払いのける零華。


「ウソだっ! 惑わされるな!」


 まるで独り言のように叫ぶ。

 私に対して言っているようには見えない。

 その言葉は、零華自身に向けられている。


 そう。

 分かっていた。


 零華の中には、別の人格がいる。

 その人格に押されると、残虐なローレライに変貌してしまう。


 悪魔として動き出してしまう。

 さながら、ディアボロス化した森川先輩のように。


 だからこそ、私が零華を助けないといけない。


 ずっと戦い続けてきた零華を。

 人で有り続けてきた零華を。

 森川先輩ですらも、あの一時しか出来なかったことを、ずっと続けてきた零華。


 その辛さは、どれほどのものか。

 その精神力は、尋常ならざるものだろう。

 分かった振りをして同情することなど、もってのほかだろう。


「負けないで、零華。あなたの中にいる悪魔に。あなたに甘い言葉を囁くこともある。楽な方法を囁くこともある。それもまた、あなた自身だし、逃げることは悪いことじゃない」


「そうよ。だったらいいじゃないっ! おまえの力など、借りるものかっ!」


「でも、逃げてばかりではいられないわ。私が助けてあげる。一緒に行こう。私達の未来へ」


 震える手をのばしてくる。


 そして、今度こそ私の手を取る零華。


「お姉ちゃん…………」


「行こう、零華」


 手を繋いだまま、ゲートを目指して飛んでいく。


 たくさんの悪魔たちもまた、私の願いを持ってゲートへ引き返している。


 そんな光り輝く世界を、私達2人は手を取り飛行していた。


 さながら、流星群の中を駆け巡っているかのように。



「朝生さん!!」


 露草先輩の悲痛な叫びが聞こえた。




 大丈夫。


 私は、もう自分を持てたから。


 自分の願いを持てたから。


 それを叶えれば、きっと素晴らしい世界が広がっているのだから。


 その願いを、零華という妹と共に叶えられるというのなら……




 これほどの幸せは無い!




「もう……戻れないよ?」


「ううん、戻るんじゃないよ。私達の未来に向かうんだ」


「…………うん。ありがとう、お姉ちゃん」


「こちらこそ。零華」


 強く握った手を更に握りしめる。


 深淵と呼ぶに相応しいゲートの中。


 私達は…………


 そのゲートを潜りぬけた。

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