表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たいまぶ!  作者: 司条 圭
第3章 露草五十鈴 ~ケルベロス討伐録~
61/88

第61話 逆襲からの逆襲

「な、何が起きた……」


「雷の使い手とあろうものが分からないのか。では、冥土の土産だ。解説してやろう」


 煙のように現れた森川先輩は、ケルベロスの目の前に立った。


「雷が発生する条件というのは、簡単に言うと、雲の中に溜まった電子が、耐えきれず雲の外へ放電する状態だ。その時、雲の中の上側ではプラス、下側ではマイナスの電子が来る。そのマイナス電子が放電し、また地上からプラスの電子が放たれる。それが本来電気を通さない空気中の通り道となり、雷は落ちる。この、地上からの放電は、お迎え放電なんていう言い方もするんだが……今回、お前は見事お迎えされたということだ」


「……どういうことだ。さっぱり理解出来ぬ」


 要領を得ていないケルベロス。

 その発言に、ため息混じりに解説を続ける。


「もう少し勉強したほうが良いぞ、犬っころ? つまり、京が放った、数珠による放電。そいつも自然現象と同様に、プラスの電子とマイナスの電子を上下に展開させる。すると、文字通り、お前をお迎え出来るということだ」


「いやー、ボクもびっくりましたよ。雷を下に撃つ準備をしとけ、なんて言われて!」


「この空間は、地面があるようで無いからな。それも可能だというわけだ」


 なるほどー、と京さんが感嘆の息を漏らす。


 一方のケルベロスは、なおも疑問を吐き散らした。


「そうだとしても……何故だ。俺は、雷を操る力を持っているだけで、雷そのものではないのだぞっ!」


「そう思っているだけだ。お前は、移動する際、雷そのものになっているんだぞ」


 その言葉に、ケルベロスは目を見張る。


「なんだと……?」


「そうでなければ説明が出来ない。お前は、自分が移動している時の姿を見たことがあるか?」


 眉をひそめ、長考した後、短く答える。


「…………無い」


「そうか、それもそうだろう。亜光速の速度で走り抜ければ、例え悪魔の身体であっても、タダでは済まないだろう。お前たちは、私達のような幽体とは違い、質量を持っているからな」


 その説明を理解出来ているのかは分からない。

 だが、ケルベロスは無言のまま、森川先輩の言葉に傾聴している。


「だが、雷そのものになれば納得の行く話だ。お前は、一定速度以上の高速移動をする際には、雷そのものになっている。だから、移動中の光景は見えていないし、移動先を確認しながらでしか動けない。そこに、自分の姿を投影し、「作り直す」必要があるからな」


「……なるほどな。貴様には、それが見えたということか」


「正確に見えたわけではない。だが、そのように見えた。そして、それが事実であることは、今、貴様自身の身体が物語っている」


 そう。

 雷でなければ、今こうして引き寄せられるはずが無い。

 正に、ケルベロスの身体自体が、一時的に雷となっていたことを物語っているのだ。


 完全に拘束したケルベロスに、剣を突きつける。


「終わりだ、ケルベロス。せめて我らの手に掛かることを光栄に思え」


 それに併せて、露草先輩が七支刀を構えた。


「母の仇、取らせてもらうわ」


 2本の剣を前にして、ケルベロスは不敵に笑う。


「ふふ……なるほどな。これは興味深い。俺のことでありながら、俺自身が何も知らなかったというわけか……」


 これほど絶望的な状況で、何をそんな余裕の笑みを浮かべているのか。


 言い得ぬ恐怖が、私の背筋を凍らせる。


 しっかりと捕まえているはずだ。

 力など弛められない。

 弛められる時間も無い。

 私は、ケルベロスをしっかり拘束している。


「観念なさい、ケルベロス」


 剣を突きつけられても、なお余裕の笑みを浮かべる。

 その笑みは、少しずつ大きくなり、やがて大笑いを始めた。


「観念か……それはむしろ、貴様等に掛けるべき言葉だな。ちょっとお喋りが過ぎたようだ。口は災いの元という言葉の典型とも言うべきところだ」


 ケルベロスの身体に走る雷が、一気に放電した。

 すると、ケルベロスは一瞬にして私の手をすり抜け、上空へと逃げていた。


「ふはははっ! つまり……雷となってしまえば、こんな貴様等の拘束など無意味ということだっ!」


 私は決して力を抜いたわけではないのに。

 どうやって抜けたのか。

 考えるまでもない。


 ケルベロス自身が雷となった以上、捕まえることなど出来るはずがないのだ。

 質量など無いような電撃。

 そんなものを掴んでいられるはずがない。


「そして、もう1つ。俺に、攻撃の方法を伝授してくれたな。移動の際に雷へと変化しているというならば……俺の移動ラインに、貴様等を巻き込めば、それで攻撃となる!」


 その言葉に、私は顔を青ざめた。


 そうだ。

 私達は、ケルベロスに対して、更なる攻撃手段を与えてしまった。

 そして、その攻撃は……

 光の速さで襲い来る攻撃であって。


 避けることなど、適うはずもない。


 そんな状況に死すら覚悟する私の耳に、森川先輩の声が響く。


「そう、その通りだ」


 上空で講釈垂れているケルベロス。

 その左右には、露草先輩と森川先輩が、剣をすぐに振れる状態で待っていた。


「お前は、それを自覚していなかった。だから、教えてやれば、それを利用すると思った。その上で、手に拘束されていたあの状況。動けるのは上だけだ」


「だからどうしたというのだ。拘束から逃れられれば、俺は再び移動するだけだ」


 その言葉を終えたケルベロスを切りつける。


 露草先輩は左から右へ凪いで首を飛ばし、森川先輩はケルベロスの心臓を貫いた後に、そのまま右脇腹まで斬って捨てる。


「な、なんだと……何故雷となって移動が出来な…………」


 飛んだ首が、そんな語るような断末魔を上げる。

 これが、ケルベロスの最後の言葉となった。


「一応、教えておいてやろう。お前が移動した後……雷と化してから本来の身体を形成した後に、もう一度高速移動を行うには、1.5秒のタイムラグがあるんだ。今度があるなら、己の力をきちんと把握してから使うべきだな」


 ついてはいない血糊を捨てるように剣を一振りする。


「一子、今だっ! お前の持つ力を注ぎ込み、この悪魔を消し飛ばせっ!」


 そうだ。

 まだ斬っただけ。

 ティターンのような例もある。

 僅かな可能性も残してはいけない。


 全てを消し去る必要がある。

 魔を浄化する、聖なる光でっ!


「やぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」


 制服から、一瞬で甲冑を身に纏い、シングメシアを構える。

 銀色の光があたりを照らす。


 今持っている全てを注げ。


 絶対に倒さねばならない。


 あの時、力を残してしまった私の……



 私にしか出来ない事だっ!


「唸れ……シングメシアァァァァァァアアアアア!!」


 宙に舞うケルベロスのトルソ。


 その破片全てが光に飲まれると、塵となって消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ