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たいまぶ!  作者: 司条 圭
第3章 露草五十鈴 ~ケルベロス討伐録~
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第59話 一筋の光明

「はぁぁぁあああ!」


 雷を放たれた次の瞬間。

 目の前に見えたのは、森川先輩がケルベロスに吶喊しているところだった。


「ほぅ……素晴らしいな。今の攻撃を受けても、なお立ち向かうか」


「残念だが、直撃ではない。私のシングメシア、舐めないでもらおうか」


「そんなものを舐めたら舌が切れてしまう。舐めることが出来るのは貴様くらいのものだ、森川の娘」


「その減らぬ口から出る舌など、私が切り裂いてくれる!」


「1つしかない口に1つしかない舌。それが無くなっては大変だ」


 剣を振り回す森川先輩。


 だが、それも一瞬のうちに姿を消して避けられてしまう。

 剣を構える手を、ゆっくりと下げる。


 この自然体の構えは…………


「ソードダンス・プレティシモ!」


 森川先輩の姿も一瞬のうちに消えてしまう。


 そして、次の瞬間。


「おっとぉ」


「捉えたぞ、ケルベロス!」


 突如、繰り広げられた光景。


 それは、横から巨大な剣を凪いだ森川先輩と、その刃を辛うじて白刃取りしているケルベロスの姿だった。

 正に間一髪と言ったところ。

 もう少し森川先輩が速ければ、ケルベロスの身体を文字通り両断出来るところだった。


「ちっ……勘がいいな、犬」


「はて、何の事やら。見えていないはずがなかろう」


「その言葉がハッタリなのは分かっているぞ。ならば、何故避けなかった」


「その必要が無かった故な。事実、この光景は貴様等に動揺を与えるには充分のはずだ」


「それで、こんなリスクを犯すのか? お前は今、完全に足を止めているぞ」


「いつでも手を離してやっても良いのだが」


「ならばそうしてみるがいい。言っておくが、シングメシアを撃つ力が無くなっているだけで、剣の切れ味は落ちてなどいないぞ?」


 睨み合う2人。

 力が拮抗しているためか、両者の腕と剣が小刻みに震えている。


「お前の弱点、見えたぞ。まぁ、私以外に対処は出来ない故、見つけることが出来るのも、また私だけだったというわけだが」


「……どんなものか、聞いてやろうじゃないか」


「ケルベロス。お前は、確かに動きは速いが、その動きに対して動態視力が伴っていないだろう。つまり、動きは雷のごとく速く動けるのに、高速移動している間の風景はまったく見えていない。それもまた、雷を撃つのに時間を必要とする理由の1つのようだ。随分と致命的な弱点を抱えているものだな」


 口許を歪め、沈黙で返す。


 それは肯定を意味するのか、否定を意味するのか。

 判断に苦しむところではあったけれど……


 どうやら前者のようだった。


「クックック……良い、良いぞ。今まで、ここまで読み切った者はいない。だが、それを知ってどう戦うつもりだ、森川の娘」


「それはこちらの秘策。さらけ出すわけにはいかぬ」


「そうかそうか。それは失敬した。では、もっと楽しませてくれ!」


 一瞬で消えるケルベロス。


 それを見届けた森川先輩は、ケルベロスと同じように、一瞬で露草先輩の側へ駆け寄った。


「厘さん……これは一体?」


「ソードダンス・プレティシモは、移動速度を上げるだけじゃない。そのスピードに伴った行動が出来る。そのために、動態視力も常人とは比較にならないほど向上しているんだ。だから、奴の移動が見える。もちろん、ハッキリとは見えないが、だいたいでも見えれば充分だ。つまり、私なら白兵戦が出来る」


「なるほど……」


 すっかり弱気になっていた露草先輩に、希望が湧いたようだった。

 その表情は、一転して明るいものとなっている。

 露草先輩の顔を見て、森川先輩は申し訳なさそうに言う。


「……まずは、謝っておこう。すまなかった」


「えっ……?」


 意表を突かれた森川先輩の謝罪に戸惑う露草先輩。

 それに構わず、森川先輩は続けた。


「最近、作戦については、五十鈴にばかり頼ってきた。事実、それで上手く行っていたし、私も依存していたのだろう。だが、今この状況を見て確信した。やはり、皆でしっかり話し合うべきだ。そのことについて謝ろう」


 遠くから雷鳴が轟く。

 それが来るのが分かっていたように、森川先輩は目の前に剣を放り投げて雷を防いだ。


「だが、もう少し頼って欲しかったな。自分の意見を通すための相談ではなく、もっとより良くするための相談だ。これからは、是非そうしてくれ」


 剣を拾い、再び構えつつも、露草先輩のほうを向く森川先輩。


「そんなつもりは……」


「無いというなら、もっと自分を晒してくれ。私は、いつも五十鈴の意見に楯突いているように見えるかもしれないが、それは私の意見を素直に口にしているだけなんだ」


 後ろから飛んできた雷。


 明らかに露草先輩を狙ったその稲妻を、シングメシアを投げて、盾にするように地面に突き刺した。


「お前の周りにいる人間は、そんなに頼りないか? 自分が引っ張ってやらなければならない、赤子のような奴ばかりなのか?」


「そんなことは……」


「少なくとも、五十鈴からそう思われていたならば、寂しいものだな」


 剣を引き抜きながら、擦れ違いざまに小さな声で。



「親友にそう思われていたなら、心外もいいところだ」



 再び自然体で構える森川先輩。


「周囲にいる人間は、いわば自分の鏡だ。とりわけ友というものは、自分をより反映するものだと思っている。その中に、露草五十鈴という存在がいることを、私は誇りに思っている」


「…………」


「だから、もう少しでいい。私を……みんなを頼れ」


 露草先輩の方を振り向き、満面の笑顔で顔を流し見た。


「1つ、いい案が浮かんだんだ。やってみないか?」

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