表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たいまぶ!  作者: 司条 圭
第3章 露草五十鈴 ~ケルベロス討伐録~
45/88

45話 露草先輩とデート

挿絵(By みてみん)

 私達は、またもマロンドにいる。


 どこに行こうか、という話になるも……

 学校に戻る、というのもどうかということで、ゆっくり出来る場所としてマロンドが挙がった。


 もとより露草先輩にとってゲームのホームタウンであるし、それ以上に、私がここのケーキの味に魅入られたが故だった。

 今も、ケーキセットを目の前にして、幸せ一杯だった。


「そんなに食べると太りますよ?」


「大丈夫です。ケーキは別腹ですから!」


「それ、全然大丈夫じゃないですよ」


 どうにもミステリアスなイメージの露草先輩だったが、話してみると、何とも普通の女子高生だった。

 むしろ、狩野姉妹のような特殊な家庭でもないし、千里みたいな貧乏な家庭じゃない。

 いわゆる、極普通の家庭のようだった。


 お父さんはサラリーマンで、よくある家族。

 露草先輩は一人娘らしい。


 ただ、その上品な雰囲気というのは、やはり家庭の教育なのだろう。

 世間話をしている中でも、そう感じていた。


「それにしても、今年は朝生さんが来てくれて本当に良かったわ。おかげで、今まで倒せなかったディアボロスを2体も倒してる。これは、退魔部始まって以来の快挙かもね」


「そう言って貰えると嬉しいです」


「本当に、感謝してもし足りないくらいよ。それにしても、朝生さんには本当に御兄弟はいなかったのかしら」


「いえ、いないですよ。前にも聞かれましたけど、もしも兄弟がいたらどうなるんですか?」


 よく聞かれるので、つい気になってしまう。

 露草先輩は、少しの間を空けてから言葉を続ける。


「うーん……実は、キーパーになれる条件は2つあるの。1つは血筋」


「あ、はい。露草先輩は、確か神社のお家の方とか」


「あら、誰かに聞いてたのね。まぁ、そういうこと。特殊な血筋の人間は、キーパーになることが多いわ」


「みなさんそうなんですよね。じゃあ、あとの1つは?」


「あとの1つは……」


 沈黙が続く。

 その次の句を、固唾を飲んで待つ。


「あとの1つは……おっぱいの小さい子よ!」


「えぇっ?」


「ウ・ソ♪」


 思わず崩れ落ちてしまう。本当にこの人は……

 それに、私、千里、京さんと、いちいち当てはまるから冗談とも判別しづらい。


「冗談冗談。朝生さんも樫木さんも、からかい甲斐があっていいわ」


「もう、本当に勘弁してください」


「ごめんごめん♪」


 紅茶を一口飲んでから、さらに続ける。


「本当はね、遺族……というより、血を分けた兄弟の中に、悪魔になってしまった人がいる場合なのよ」


「えっ……!?」


 思わず絶句してしまう。

 それは、あまりに衝撃的なことだ。


 その言葉が意味することというのは……

 つまり、人が悪魔になってしまう可能性があるということではないか。


「人の死後、魂が抜けて輪廻の渦に入る前に、悪魔が囁くことがあるの。まだ生きていたいか、ってね。それに応えてしまうと、悪魔として転生し、魔界に封じられてしまうわ」


「封じられる……」


「そう。まだ話してなかったかもしれないけど、あの悪魔たちは、ただの思念体。魔界にいる本体が飛ばしている、実体を持たない幽霊のような存在なのよ。だから、幽体離脱をした状態で、初めて攻撃することが出来るわけ。例外はディアボロスで、悪魔の実体がそのままこちらに現れているわ。まぁ、だからその分、力も強いんでしょうけれど」


 要は、魔界から、小さな自分をラジコンで操ってるようなイメージだろう。


 ディアボロスは、そのまま自分が飛び出ていっているということか。


「つまり、魔界では、あの悪魔の数だけ、数多の悪魔が存在しているわけ」


「……そうなんですか? 1体の悪魔から、複数の悪魔が出せる奴もいるのでは?」


「実はそういうわけじゃないみたいなの。あくまでも1体につき、1体の悪魔が出てきているそうよ」


 何ということだろう。


 それだけの数の悪魔が、魔界にはひしめき合っているということなのだ。

 想像するだけで寒気を覚える。


「元は人間の彼らの願いは、もしかしたら、魔界から抜け出したいのかもしれない。そのために、カルマを集めているのかもしれないわね」


「それって……あんまり想像したくないですね」


「そうね。もしかしたら、人が死んだ数だけ悪魔がいるんじゃないかと思うと、ぞっとするわ」


 思わず背筋に寒気が走った。


 そんな空気を断ち切るように、露草先輩は咳払いをしてから続ける。


「まぁ、ちょっと話は逸れたけど、そうやって悪魔に転生した兄弟がいると、残った兄弟はキーパーになったっていう例があるみたいなの。ただ、今まででも、本当に2例くらいしか無いみたい。そうだったとしても、きちんと根拠を示した例はない」


「えっ、そうなんですか?」


「そうよ。だって、あの悪魔が、自分の兄弟だ、なんて認識出来る?」


 うーん、それもそうだ。

 となると、別の理由があるということだけれど……


 露草先輩はその理由を説いた。


「実は、朝生さんも遠縁では、私達の誰かと繋がってるのかもしれない。むしろ、こっちのほうが可能性としては高いのかも。実際、早露の家にしても、本当に全ての家を網羅してるわけじゃないだろうしね」


 確かにその通りだ。

 それこそ、全てを網羅していたら、家系図も大変なことになるだろう。


 曾お祖父さんが作った家系図を見せてもらったことがあるけれど、僅か6代くらい見ただけでも頭が混乱しそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ