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たいまぶ!  作者: 司条 圭
第二章 樫木・ランバ・千里 ~ユニコーン討伐録~
43/88

43話 樫木・ランバ・千里

挿絵(By みてみん)

 「バルティナの歪み」が終わった後の私たちは、それはもう大変なことになっていた。


 まず、まともに動ける人がいないこと。

 辛うじて動けたのは京さんだけ。

 それ以外は、指一本動かせなかった。


 特に重傷なのは千里。


 状態を見るや否や、京さんは病院の手配をした。

 部活中に突然倒れた、というのは、なかなか面白い言い方だったけど、他に言いようもない。

 足下がふらつく中、京さんは優しく介抱してくれた。


 なお、私はというと。


「あと一歩で千ちゃんと一緒に病院送りだったね」


 とのこと。


 何とかその日も、霊柩車に乗せられて帰った私。

 京さんと一緒に乗ってたから良かったけど、お母さんには、寿命を縮める思いを2回もさせて、申し訳ないと思っている。




 次の日。


 千里は、学校には来ていなかった。

 放課後になり、退魔部の部室を見ても、やはり千里の姿は無い。


「やっぱり学校には来れなかったのね。相当衰弱してたみたい。やっぱり無理をさせすぎちゃったわね……」


「仕方ないだろう。あの聖剣エクスカリバーを具現化させたんだ。千里でなければ、死んでいたかもしれない」


「本当にね……」


 先輩2人が、心配そうに話しをする。

 狩野姉妹も、見つめ合い、俯いていると。


「こんにちはーです!」


 いつもの声が響いた。


「なっ……千里?!」


「あら、樫木さん?」


「千ちゃんっ!」


「樫木……さん?」


「千里っ!」


 それぞれがそれぞれの驚きを露わにし、私は嬉しさのあまり、千里に抱きついた。


 私も小柄なほうなのに、その私よりも華奢で小さい身体。

 強く抱きしめると壊れそうな身体を、優しく抱き留める。


「おかげで元気になれたですっ! 明日でもいいかとも思ったですが、パパが、まずは元気な姿を見せてこいって言ってくれたです。みなさん、ありがとうでした!」


 私に抱きつかれたまま、小さくお辞儀をする。


「お礼を言うのは私たちのほうよ、樫木さん。本当にありがとう。あなたのおかげで、ユニコーンを倒せたわ」


「それについては、礼には及ばないでーす。あいつを倒すのは私の悲願でもあったです。そして、退魔部のみなさんの願いでもあったはずでーす。みんなの、大安ジョージでーす!」


「それを言うなら大願成就、でしょ」


「あ、それでしたー」


 みんな、思わず笑いがこぼれる。

 ひとしきり笑った後、京さんがおずおずと言う。


「あ、あのさ、千ちゃん。教会も家も燃えちゃって大変だろうからさ。何か困ったことがあったら、いつでも言ってよね」


「あ…………」


 その言葉に、千里の目から涙がこぼれた。

 驚きの反応に、珍しく京さんが大慌てでフォローに入る。


「あ、あ、ご、ごめんね! 泣かすつもりじゃ!」


「ううん、違うです。みんな、本当に優しいなって……」


 涙を拭い、笑顔になる千里。


「実はね、京先輩。同じように言ってくれる人達が、いっぱいいたです。いつも教会に顔を出してくれる人達が、大変だねって、ご飯や、いらなくなったお洋服、お布団とかも分けてくれたです。それに、寄付までしてくれたです。教会を建て直す資金にしてくれって。それを思い出したらつい……」


「そうなんだ……」


 千里の教会に来る人たちは、こんなにもいい人ばかりだった。

 それはきっと、千里たちが、そういう人だからなのだろう。


 カルマが汚れていないから……

 というわけではないだろうけれど、やはり類は友を呼ぶものだ。


「私、今回お世話になった人達に報いるためにも、絶対にパパの教会を継ぐです。そして、もっともっと、素晴らしい教会にするでーす!」


「そうだね。きっと……きっと千里なら出来るよ!」


「一子、ありがとでーす!」


 千里の、いつもの明るい声が部室に響く。


 それを聞いて、みんながつられて笑顔になっていた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございますっ!


感想・評価いただけると励みになります。

是非よろしくお願い致しますっ!

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