表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たいまぶ!  作者: 司条 圭
第二章 樫木・ランバ・千里 ~ユニコーン討伐録~
34/88

34話 共同作業

挿絵(By みてみん)

「いざ行かん。我らの戦地へ。我らの宿業の地へ。そして魔の潜む地へ。受け入れよう、我らが魂に課せられし運命を」


 まだ暗唱出来ないながら、たどたどしく言葉を連ねた後、私は幽体離脱することに成功する。

 そして、これで3度目となるゲートを目の前に見据える。

 何度見ても、巨大で開きそうもない扉。

 そのゲートを基準として、さっき露草先輩が描いた作戦の場所へと移動する。


 私も、暗黙の了解のように、愛さんと京さんがその場所へ集合した。

 今回は、京さんはラフなジャージ、愛さんは何故かOLさんのようなスーツを着ている。

 私はというと、相変わらず制服だった。


「さて、いっちゃん。初めての共同作業だよ。気分はどうだい?」


「と、とにかく、練習の成果を発揮するだけです」


「こらこら、それじゃさっきと同じじゃーん」


「こら、京ちゃん。京ちゃんはもっと緊張感を持ちなさい」


「そんなこと言ったって、緊張する意味のほうが分かんないじゃん。愛ちゃんなんて、いっつも緊張して手が震えて、失敗してるよ?」


「そ、それは緊張しすぎてて……」


「緊張は火事の元~!」


「こ、こら! そんな昔のことー!」


 姉妹喧嘩……というか漫才を繰り広げ始め、昔話と思われる愛さんの放火未遂?まで暴露されている。

 それを見てると、不思議と肩の力が抜けてきていた。


 その一方で、後ろからでも分かるほど緊張した、ガチガチの格好でいる千里に目が行く。

 その千里の、今回の服装……いや、今回は服装ではなく「武装」だった。


 ファンタジーの世界で見たことのある鎧。

 部分鎧という、胸から胴、肩しか無い鎧。

 手は、金属の小手を纏い、スカート状の鎧をつけている。


(あれ……?)


 そこまで見て、今更ながらに気づいた。


 似ている。


 何にって、森川先輩の姿に。


 まぁ、全く一緒っていうわけじゃないし、髪なんかもいつも通りの金髪のツインテールだし、やっぱり似ているっていうだけなんだけど。

 それでも、遠くからだと、姉妹のように佇んでいるように見える。


 どんな話しをしているか分からないけど、コチコチになっている千里に、森川先輩がいくつか話しを投げかけているようだった。

 その後、森川先輩の右手が千里の頭に乗っかると、千里が先輩の方を向いて、いつもの笑顔を向けていた。



「お出ましよっ!」


 露草先輩の声が響く。

 重厚な扉が開く音。

 少しずつ扉は開き、全開まで行くと。


「護方結界!」


 飛び出してくる悪魔。

 それにぴったりタイミングを合わせて結界を展開する露草先輩。

 怒涛の勢いで飛び出してくる悪魔は、結界に当たって消滅していく。


 しかし、勢いよく当たる悪魔は、さながら滝のごとく。

 受け止める結界は和紙のごとく。

 私の想像以上に、容易すく貫通していってしまう。

 それでも、懸命に張り直しては、悪魔たちの勢いを殺していく。


「よっしゃっ! いくぜいっちゃんっ!」


「はいっ!」


 気合一閃。


 私と京さんで、巨大な手を作り上げ、扉を掴む。

 まだ力は入れない。

 別々に力を入れないように。

 お互いの力を同時に入れるように。

 私は、京さんの合図を待つ。


「よし、練習通り、3で押すよ! せーの……1、2の3!」


「はいっ!」


 2組の巨大な手。

 その一方である私の手に、精一杯力を込める。

 すると、あの巨大な扉が、今まで以上の速さで閉じられていく。


「うにょっし……! やっぱ、上手く行ってる! この調子で行くぜ、いっちゃんっ!」


「はい!」


 京さんのかけ声で、力を込める。

 その都度、扉は音を立てて少しずつ閉じられていく。


「あはは、すごいっ! これは予想外だね。時間も力も、半分以下で済むかも」


「そ、そうですか?」


「あぁ、すごい助かるっ! この調子でいくよ。1、2の3!」


 確かに、言われてみれば、たったこれだけの時間で、既に3分の1は閉めている。

 出口が小さくなり、出てくる悪魔の数も減ってきたのか、露草先輩にも少し余裕が出来ているように見えた。


「愛ちゃん、よろしくね!」


「うんっ」


 大量の数が漏れている悪魔。

 その悪魔たちが、愛さんが張った障壁にびっしり張り付いている。


 最初は狼狽して、願いを持って行かれてしまった私。

 でも今は、全く冷静でいられた。

 あの状況を一度経験したせいだろうか。


 どれだけ囁かれようとも、一切耳に入らなかった。

 そして、今、やるべきことに集中する。

 

 閉めるんだ。


 ユニコーンだけは通さない。

 1秒でも早く、この忌々しい扉を閉める。

 それが、今、私のやるべきことだ!




 刹那。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ