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たいまぶ!  作者: 司条 圭
第二章 樫木・ランバ・千里 ~ユニコーン討伐録~
25/88

25話 作戦会議

挿絵(By みてみん)

 退魔部にも、休息の時期というのがある。


 迎撃戦を終えたあと……

 つまりハデスゲートから出てきた悪魔を迎え撃った後は、世界に散った悪魔たちを「討伐」しに行く。


 だが、殲滅戦、つまりゲートに戻ろうとした悪魔を倒し終えた後というのは、現世界に悪魔たちがいないことから、討伐に出る意義は無く、休息週となるのだ。


 ただ、それでも行うことが一つ。

 それが「探索」。


 基本的に、悪魔は6日間、こちらの世界にいると消滅してしまう。


 ただ、その中にも突然変異みたいなものがいて、時折残っている個体がある。

 その悪魔は、ディアボロスの卵とも言える存在なのだ。

 その芽を摘むのが探索。

 丁度、私と森川先輩が出会ったのは、この探索を行っていたからだった。


 しかし、今回は現世界にユニコーンがいるため、散り散りになってディアボロス候補生を追いかけるのは、危険というよりも自殺行為に等しい。

 討伐で本格的に力を出せない状態で戦いを挑むのも、また得策とは言い難い。


 故に、探索は出ないことになる。


 そんな中での、退魔部の活動は。


「いいねいいね、これならもっと早く閉められるようになるかもしれないよっ!」


「そうですか? 嬉しいです!」


 幽体離脱をしての「バルティナの歪み」の練習。

 ただし、力を使いすぎないようにすること。

 

 私達の、魂を削って悪魔たちを倒す力は、ほぼ空の状態から完全に回復するまでおよそ3日ほどかかるという。

 故に、無駄に力は消費しないようにする必要がある。

 

 今、私は京さんと息を合わせる練習をしている。

 京さん曰く。


「バラバラに力を入れてもダメ。やるなら、一緒に力を込めないと。綱引きだって、1人が休んで1人が引っ張るより、2人が同時に引っ張った方が強いのと同じ。ゲートを閉めるスピードが速まれば、その分だけ有利になるから、一緒に頑張ろうず!」


 京さんの言ってることは全くその通りで、閉める時間が短ければ短いほど「バルティナの歪み」の時間は短くなる。

 それはつまり、露草先輩や森川先輩たち、みんなの負担軽減に繋がる。


 だからこそ、頑張らないといけない。

 それが、私に出来ることなんだから。



 一方の先輩2人は、難しい顔をしている。


「五十鈴、やはり難しいか?」


「残念だけど、そうね……私よりは、樫儀さんを頼るべきかも」


 私と愛さん、京さんの3人は、やることは同じ。

 私と京さんが力を合わせてゲートを閉め、それを愛さんが守る。

 

 一方の攻撃陣である先輩たちは、今回相手にしなければならないユニコーン対策を話し合っていた。


「ユニコーンは、堅牢な守りだけでなく、素早さもある。それだけでなく、白兵戦も出来るからな」


「まあ、対峙出来るのは厘さんと京さんだけね」


「えぇ、京先輩ってそんなにすごいですかー!」


「ウ・ソ♪」


 驚いていた樫儀さんの顔が、一転して、期待を裏切られた子供よろしく酷い顔になる。

 そんな樫儀さんを横目に、森川先輩が咳払い一つして続ける。


「まぁ、何だ。ユニコーンに遠距離攻撃は通用しない。それは千里も知っておいて欲しい」


「そうですねー。矢はさっぱり当たらなかったでーす」


 口惜しい口調の樫儀さん。

 それを見た森川先輩が、宥めるように頭を撫でると、樫儀さんの顔に笑顔が戻った。


「しかし、どうしたものか。ユニコーンの隙は見いだせるが、決定打が無い」


「ユニコーンの隙って何でーすか?」


「おいおい、さっき話したろう。私のそれなりに力を加えたシングメシアなら、ユニコーンのバリアを一時的に破ることが出来るんだと」


「あ、そうでしたー! ……それで?」


「それでって、お前……」


「つまり、厘さんの渾身のシングメシアでバリアを破った後であれば、私たちの攻撃は通じる。ただ、その時間も短いのよ。時間的には30秒ほどでしょう。その間にシングメシアが撃てればいいけど、残念ながら相当な力を使った後の厘さんには頼れない。返し刃であるリバーサル・カデンツァは、バリアを破られたユニコーンも警戒しているだろうから、期待は薄い。となれば」


「露草先輩の草薙があるでーす!」


「と、言いたいところなんだけどね。私の草薙は、軌跡が単純だから、ユニコーンの直感とスピードがある限り、やっぱり避けられる可能性が非常に高いのよ。ユニコーンの防御力は、そのバリアだけじゃないってことね」


「なるほど。そっちを立てればあそこが立たない、というやつですね」


 かなり危うい慣用句を言う樫儀さん。

 これには先輩たちも思わず苦笑い。

 その流れを断つべく、露草先輩が咳払い一つ。


「となると、やっぱり、樫儀さんには、早くも本気を出してもらう時が来たわけね」


「その手があるか。だが…………」


「あまり自信無いでーす」


 あっけらかんと言う樫儀さん。

 それに、先輩2人はため息をつくでもなく、首を縦に振る。


「そうだろうな。無理にやる必要は無い。何とか別のやり方で作戦を立案しよう」


「そうね。とりあえず、今日はもうお開きにしましょうか」


 私たちは、露草先輩たちに呼ばれると、解散を言い渡された。

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