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たいまぶ!  作者: 司条 圭
第一章 狩野姉妹 ~ティターン討伐録~
18/88

18話 死線その果てに

挿絵(By みてみん)

「このっ……!」


 凄まじい早さで追いついたのは森川先輩。

 そのまま足の腱を斬ろうとするも。


「なにっ!?」


 突然、ティターンの甲冑が全て弾け飛んだ。

 突飛なことに、森川先輩も、飛んでくる鎧の破片への防御に専念するのが精一杯だった。

 だが、その一瞬は、ティターンが更にハデスゲートへ近づける時間となる。


 ハデスゲートはまだ閉じきっていない。


 あとは、狩野姉妹のみ。

 でも、あの2人には、あの巨人を止める術など無い。

 ついに、ティターンの足がハデスゲートを踏む。



 刹那。




「そぃやぁぁぁぁぁあああああああっ!」


 京さんが、突然振り向く。

 そして、巨大な手がティターンの突進を阻んだ。

 ティターンも、これほど巨大な手に止められると厳しいのか。

 身体を震わせて一歩も踏み出せずにいる。


「……ボクのせいなんだ。ボクのせいで、いっちゃんが危険な目に遭ってるんだ。絶対にやらせるかぁぁぁぁああああ!」


 京さんの叫びが木霊する。

 その気合いにも押されたのか。

 ティターンは巨大な手によって、ジリジリと後退していく。


「その意気だ。いいぞ、京っ!」


 その叫びに呼応するように、ティターンを縦横無尽に切り刻む森川先輩。

 その連続攻撃は、それこそ文字通りの、目にも止まらぬ早業。

 森川先輩の動く姿など見えず、何かが通った軌跡にティターンの傷が増えては身体が小さくなって行く。

 これほどの攻撃。

 さすがのティターンも効いているのか。

 脚を震わせ、今にも膝が地に着こうとしている。


 そのとき、樫儀さんも何かに気づき、大声を上げた。


「森川先輩っ! シングメシア、見つけたですよ!」


「なにっ、どこだっ?!」


 森川先輩も、斬りつけつつも探していたのだろう。

 だが、やはり見つかっていないことから、樫儀さんの言葉には疑問で応える。


「おケツです! ティターンのおケツの穴に刺さってるです!」


「なん……だと」


 一瞬言葉に詰まる森川先輩。

 それは無理もない。


 よく目を凝らせば、確かに見える剣の柄。

 ついでに、京さんの卒塔婆もはみ出ていて、場所が場所なだけに、とある何かを連想させる。

 

 悪魔は人間ではないとはいえ、ディアボロスの見た目はやはり人間に似ている。

 出来れば、あの穴に手を突っ込むようなことはしたくない。


 かと言って、そのままにしておくわけにもいかず……


「……千里、あとで覚えておけ!」


「えっ、私関係無いでーすっっ!!!」


 気合一閃、跳躍し、とある場所から剣を引き抜く森川先輩。


 同時に、光り輝くシングメシア。

 ティターンの横に位置取ると、そのまま大きく振りかぶる。


「よく耐えた、京。お前の為すべき事、この森川厘が見届けたぞ。あとは任せろ」


 眩い光が一層輝き始める。

 森川先輩の視線は、ティターンをピタリと捉えている。


「煌めけ、シングメシア!」


 光の波がティターンを飲み込む。

 しかし、その一撃は力を抑えていたのか。

 いつものような光が発することなく、すぐに視界が回復する。


 だが、それでも充分のようだ。

 ティターンの甲冑が無くなった故か。

 急場で放ったシングメシアであっても、身体は見違えるほど小さくなっていた。


 これは削りだ。


 京さんの負担を軽くするために撃った、弱めの攻撃。

 弱めといえども、これだけ効果が出ている。

 身体が小さくなったせいか、同じ力で押している様子の京さんの手は、グングン押し返し、ゲートからもずいぶんと遠ざけていた。


 次を当てれば。

 森川先輩の、いつものシングメシアを撃てば……


 ティターンは消滅する。


 それは、誰の目から見ても明らかだった。

 そして、森川先輩の力は、まだたっぷりと残っている。


「覚悟しろ、ティターン。今こそ、おまえを無に帰す……!」


 森川先輩が、八双の構えでティターンと対峙する。

 それと同時に、剣に帯びる光。


 その光は、先のものとは異なる壮絶なる光。

 あまりの眩さ故に直視することの出来ない……

 悪魔を討つ、聖なる光。


 ティターンが、断末魔を上げるかのごとく、この時初めて叫び声を上げた。

 だがそれも、この空間に響くのみだった。


「唸れ…………シングメシアァァァァアアアア!!」


 振り下ろされると同時に、ティターンは強大な光に飲み込まれていった。

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