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愛しき殺し屋  作者: 海華
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監禁された飼い犬

あの後、由香里はどうなったのんだろう? ずっと気になっていた。

事件に巻き込まれてから、3日が経とうとしていた。私は学校にも行かせてもらえず、家の中で監禁状態だった。

ホント、大変だった。

警察での事情聴取が父にばれて、父本人が警察まで迎えに来た。警察で私の父が松永恭次郎だと知れると私に対しての態度が一変した。

父を待ってる間、お茶とお菓子を出してくれた。

ただ一人だけ、30歳位の刑事さんだけはそんな私の事を冷めた目で見ていた。


玲が関わったあの事件で、一番最初に現場に飛び込んできた刑事さん。そして手口を見てプロの仕事だってすぐに見抜いて、私に犯人を見たかってしつこく聞いてきた。

「由香里の様子がおかしくて気になって後をつけたら、事件に巻き込まれてしまって。そこに黒キャップに黒のサングラスをした男が現れて、ガラの悪い男達を倒してくれた。そして由香里を連れ去って消えてしまった」

私は刑事さんにそう話をした。

もちろん玲の事を知ってる事は一切言ってない。

そういえば、なんで私、玲の事隠したんだろう?

無意識的に玲の事を庇っていた。なんでだろうなあ、可笑しいの!


父が迎えに来て、姿を現すと警察署の中の雰囲気が一変した。

何かピーンと糸が張り詰めているような、緊張した感じ。そんな雰囲気の中をあの30歳位の刑事さんが父に近づいて行き、目の前に立つと軽く会釈した。という感じもないかな? 雰囲気でいうと宣戦布告をしたような感じだった。

父が裏で色々な事をしてるのは何となくわかっていた。警察に逮捕されるような事もきっと金と権力を振り翳して握りつぶして来たに違いない。


私は家に帰るなり、この部屋に閉じ込められた。

父にも警察で聞かれた事と同じ事を聞かれたけど、私は警察に話した事と同じようにしか話さなかった。玲の事を父に話してしまったら……なんとなかく嫌な予感がしたから。


監禁部屋。もう3日もここにいる。

窓一つない部屋……部屋は綺麗な花模様の壁紙が貼ってあって、可愛い大きなベッドが置いてあった。ちゃんとトイレもあるし、大きな本棚には暇つぶし用の本がぎっしりと並べてあった。

何回、閉じ込めれられても読みきれないくらいの本の数。

あ! この本! ここにあったんだ。

ずっと探していた本、母が私によく読んでくれた絵本。私はその絵本を手に取るとベッドに座って本を開いた。懐かしいな……

この絵本って「リア王」に筋書きが似てる。

題名は「マリーヌ姫の愛」子供ながらに恐いって思うようなシーンがあったのよね、どこだったかな。

あれ!? ここだけページが破られてる。ここのシーン恐かったんだ……

父である王様が自分の娘のお姫様を刺してしまうシーン。

お姫様は王様の事を本当に心配で愛情を持って助言するんだけど、それが王様の逆鱗に触れてしまって、その場で殺されちゃうのよね。そして最終的にはそのお姫様が言ってた通りになてしまって、王様も家臣の陰謀にあって全てを失ってしまう話だった。

だけど、なんでここだけページがないんだろう? 記憶にはないけど、私が恐くて破っちゃったのかもしれないな。

ここのシーンは飛ばしてって母によく言ってたような気がする。

お母さんか……ほとんどの記憶が薄れてきている。

母が生きていたら、祥との結婚も無しにできたかな。


コンコン


ノックの音と同時に重そうな扉が開いた。

あれ!? まだ食事の時間には早いような気がするんだけど。

「お嬢様! 由香里さんの居場所がわかりましたよ!」

佐々木がそう言って、部屋に飛び込んできた。

本当!? 本当に!?

私は絵本を持ったままベッドから勢いよく立ち上がった。

「旦那様のお許しも出ましたから、これからさっそく参りましょう!」

佐々木は優しく笑いながら、そう言った。

良かった……本当に良かった……私は心の底から安心した。

私は急いで部屋を出ると、階段を上がる。あの部屋は常時電気がついてるから明るいけれど、地下はさすがに薄暗い。

私が階段を昇り終えると、上のフロアに父が待っていた。私はそんな父から目線を外して父の横を通り過ぎようとした。

「沙羅」

父の静かだが威圧的な声が響く。

「今度わしに恥をかかせたら、この程度では済まぬぞ、わかっているな」

父は私の頭をまるでかなづちででも叩くようにそう強い口調で言った。

私はその言葉に飼い犬の悲しさを感じた。何も答えずに私は外に出た。外は雨が降っていた。

後ろから私の頭の上に傘が差し出される。佐々木だった。

「ありがとう」

私の言葉に佐々木は何も言わずに微笑んでいた。


私と佐々木は上原の運転する車で、由香里のいる病院に向う。

車の後部座席に座って、車が発進してから気付いた。

母との思い出の絵本を固く握っている事を、私はそっとその絵本を胸に押し当て目を瞑った。


雨の中を車が走る音だけが耳に流れ込んできていた。

沙羅は監禁された部屋の中で懐かしい絵本を見つけて、母の事を思い出していた。

由香里の居所がわかり、沙羅は安心する。


沙羅は由香里と話をする、なぜあんな事になったのか?


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