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愛しき殺し屋  作者: 海華
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墓参りの影に危機迫る!

沙羅は俺の作ったピザトーストを頬張りながら、コーヒーを飲んでいた。

「……おいしい」

沙羅はそうとうお腹が減っていたらしく、思い切り口に頬張ってリスみたいな顔になっていた。俺は思わずその顔が可笑しくて噴出した。

「いふも、そうゆうはおひてれはいいのひ」

沙羅は口にいっぱい頬張った状態で言葉を言った。なに言ってるか全然わかんねえ。

俺の表情を見て把握していないと悟ったのか、沙羅は口に頬張った物を一生懸命噛み飲み込んだ。

「いつもそうゆう顔してればいいのに」

沙羅は改めてそう言った。なるほど……そうだな、お前と一緒にいたらもしかすると笑える事も多くなるかもしれないな。素直にそう思える俺がいた。

沙羅がコーヒーを飲みながら、視線が一点に集中する。沙羅の見ている方向を見てみると、そこには一枚の写真が貼ってあった。

俺と妹の赤ん坊の時の写真……そういえば今日は10月29日だったな。

いつもはずうずうしい沙羅がその写真の事について一切聞いてこない。沙羅なりに気を使っているのか。

「……これからちょっと出掛けて来る」

俺は大事な事を思い出してそう言った。沙羅の事で頭が一杯で不覚にも忘れていた。

今日は妹の命日だ。

沙羅は俺の突然の言葉に少し不安そうな表情を浮かべる。

「そんな不安そうな顔をするな、すぐに帰ってくる。いいか俺が帰ってくるまで絶対に外には出るな!ゆっくり体を休めていろ」

俺の言葉にまだ不安そうな表情をしてはいたが、俺を見つめて沙羅は小さく頷いた。


俺は階段を上がり、止めてある車にかけた迷彩柄のシートを取ると。車に乗ってエンジンをかけた。ここから妹のいる墓地までは20分くらいだ。

鬱蒼とした木々を抜けるように車は走る。森を抜けるまで10分くらい、ここの森は俺の父親の親友の持ち物だ。私有地だから人が入ってくる事はまずない。

車は薄暗い緑のトンネルを抜け、日差しの降り注ぐ空間へと飛び出した。

森の中にいるとよくわからないが、今日は天気がよくて澄んだ青空が広がっていた。

小高い丘を登り、墓地につく。静かな場所だった……人一人いない……

車を駐車場に止め、俺は妹の所へと歩いていく。

妹の名前、澄川晴海……晴海は施設の先生がつけてくれた名前だ。俺達は名前をつけられる前に捨てられたんだ。

俺の本当の名前、死んだ俺の名前は……そんな事はどうでもいいな。

俺は妹の墓前に膝を付く。そして地面に頭がつくほど頭を下げる。謝っても謝っても足りないくらいだ。もう妹の命は戻っては来ない。

「そんなに妹が愛おしいか?」

低い嫌な声が俺の後ろから聞こえてくる。聞き覚えのある鬱陶しい声。

「……如月」

俺は呟くようにその名を口にする。後ろから愉快そうに軽快に笑う笑い声が聞こえてきた。

俺は咄嗟に腰に手をやる……しまった……今日は丸腰だった! 俺は小さく舌打ちをした

耳を澄まして、微妙な空気の動き一つにも神経を集中する。

後ろで如月が今拳銃を構え、俺に銃口を向ける。

俺は目の前にあった、石を静かに握り締める、タイミングを間違えると命取りだ……

後ろで引き金を引く音が聞こえた。今だ!

俺は後ろを振り向きながら横に飛ぶ。振り向いた瞬間、銃口が俺の方に向けられる。俺は如月の手に向けて握っていた石を瞬時に投げつけた。

ズギューン! 銃声の音が鳴り響いたが、俺が投げた石がぶつかる方が一瞬早かった。

俺は間を置かずに、如月に突進してぶつかって行く。その勢いのまま緑の芝生が敷き詰められた坂道を二人でもみ合いながら落ちていく。如月の残された左目が鋭い殺気を放ち俺を睨んでいた。

坂の途中に生えていた木にぶつかり、お互いの動きが止まる。如月は瞬時に俺から離れる。俺も素早く立ち上がり身構えた。如月の拳が俺の顔目掛けて飛んでくる。俺はその拳を受けて如月の腹に膝を入れる。如月は短い呻き声を上げて膝を付いた。

すかさず如月の顔を蹴り上げようとした俺の足をすくように、如月の足払いが放たれる。

俺は体重を根こそぎ持っていかれるように倒れた。

「うっ……」

太ももの怪我を打ってしまった。すぐに動けないほどの激痛が走る……

そんな俺の状態を見て、如月の鼻で笑う声が聞こえた。

如月の蹴りが俺の怪我の部分目掛けて飛んでくる。

「ぐあぁぁぁ!!……」

痛みは脳天に突き刺さり、一瞬気が遠くなる。

如月はしゃがみこんで俺の顔を覗き込む

「お前に取られたこの右目の恨みをこんな所ではらせるとはな……」

如月は右目に黒い眼帯をしていた。残された左目は俺を睨み血走っている。如月の手が俺の太ももの怪我を狙うように伸びてくる。その時だ、如月の後ろ3メートル先に拳銃を見つける。

俺は咄嗟に如月の額に力一杯頭付きを喰らわす。如月の体が一瞬俺から離れる。俺はそのスキに前に飛ぶように手を伸ばす。届かない! 痛みのせいで旨く動けない。這うように拳銃に手を伸ばした。もう少し!

そう思った瞬間、如月に拳銃を先に拾われてしまう。

如月はゆっくりと俺に銃口を向けた。

これで……終わりか!?……俺は心の中でそう思った。

如月はニヤリと笑い、引き金を引くまでの間が異様に長く感じる。その時、頭の中で声が響き渡った。

「死なないで!」沙羅? 沙羅の声か!?

俺はその声に反応するように自然に体が動き、如月の足目掛けて足払いをする。俺の動きに反応するように如月が引き金を引く。

銃声が空気を裂くように響き渡った。

如月の体がバランスを崩して倒れた瞬間、俺は瞬時に起き上がり、拳銃を蹴り上げ、倒れた如月の顔を目掛けて思い切り蹴りを入れる。

如月は手で顔を覆い、呻き声を上げていた。

俺はそのスキに蹴り上げて飛んでいった拳銃の所まで足を引きずりながら走る。拳銃を拾い上げ如月の方を向くと、そこにはもう如月の姿は無かった……

俺はその場に崩れるように倒れる。

太ももが痛い……さっき如月が撃った銃弾が肩に当たっていた。血が腕を伝って流れ落ちていた。

俺は緑の芝生の上に大の字になって、高い空を見ていた。

沙羅の声に助けられたな……

そんな事を思いながら微かに微笑んだ……。




玲は妹の墓参りに出かける。おこに突如現れたのは如月、如月は玲に対して根強い恨みを持っていた。

玲に危機が迫った時、頭の中に響き渡った声は沙羅の声だった!

玲はその声に助けられる。


隠れ家に帰ってきた玲は血だらけだった!その時沙羅は……

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