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愛しき殺し屋  作者: 海華
19/77

企みが纏わり付く中で

この道を通るとゆう事は、私の連れていかれる場所の見当がついた。

エメラルドグランドホテル……蔵元グループが経営している高級ホテルだった。

車はホテルの入り口に止まる。そして上原がドアマンに鍵を渡して、私と一緒にホテルの中へと入って行く。

床や柱が大理石で、高級感を売りにしたホテルだった。でも大理石って雨の日とか滑りやすいのね。

このホテルに来たって事は、祥はあの部屋から出られたのね。残念だわ…。

私の中の残酷な顔が現れる。

私達はエレベーターに乗る。この時間だとエレベーターを利用する人もほとんどいない。案の定上原と私の2人だけだった。

上原が最上階のボタンを押す。

なるほど、最上階のラウンジへ行くんだ。

普通ならこの時間に高校生がそんな場所へ行ったら、補導されちゃうわ。

私も普通の高校生だったら良かったのに……そんな事を思いながら、私は上原の顔をチラッと見る。

始終上原は一言も口を開かず、無表情のままだった。

いつもならそれを不自然にも思わないのだけど、さっきの車の中で言ってくれた言葉「自分の身を守るためには演技も必要」そう言ってくれたのもあって、この無表情にも何か理由があるんじゃないかって思ってしまう私がいた。

エレベーターは最上階に着き、扉が開いた。

私はエレベーターから降りる。眼の前にはラウンジの入り口、そして黒服を着た男が2人、頭を下げて待ち構えていた。

ラウンジの中から祥が姿を現す。私をさんざん騙してきた笑顔を浮かべて私の目の前に立つ。

ここで逃げられたらどんなにいいか。前には祥と黒服の男が2人、そして後ろには上原。逃げられるわけがなかった。

私はおとなしく、祥の後を付いてラウンジの中に入っていった。夜景が一番綺麗に見える席に2人並んで座る。一緒にいる男は最悪だけど夜景は最高に綺麗だった。

上原と黒服の男達は、入り口の所で待っていて入っては来なかった。

この状況はどうゆう事のなのだろう? 私の周りにはいつも何かの企みが纏わり付いていて、ついつい神経を張り巡らして警戒する癖がついてしまっていた。

ラウンジの中を見渡すと24時でラストオーダーだとゆう事もあって、人もまばらだった。その時一つの影が動き立ち上がって、私の方に向ってくるような気配……薄暗いラウンジの中では顔を伺う事が出来ない、だけどその影は確実に私へと近付いてきた。

「松永沙羅さんですか?」

その影は私の目の前まで来てそう聞いた。背はそんなに高くない、弱々しい感じの優しさを持つ男の人だった。不自然さを感じる。ジャケットの胸元に手を入れていた。

「そうですけど」

私がそう言い終わるか終らないうちにジャケットの胸元からナイフを出す!

え!? 何!? 私は咄嗟に立ち上がって逃げようとした。だけど椅子が邪魔をしてその場に転んでしまう。まずい!

男はナイフを振りかざして私に迫ってきた。その時隣にいた祥がその男に飛び掛り、2人でもみ合いながら、床に倒れ転がった。

祥!?

入り口に立っていた上原と2人の男達がその状況に気付いて、急いで走りこんでくる。そしてナイフを持っていた男の腕を掴みあげて祥から離した。

男の目は血走り、狂気に満ちていた。

「殺してやる! お前の親父に苦痛を味合わせてやる」

男はそう口走った。

父の懐で育ってきた自分の宿命……そして沢山の人たちの憎悪の上に私の存在が成り立ってる事に罪悪感にも似た悲しみを感じる。

胸の中に大きな鉛を落とされたような……そんな感覚を感じで私の心は重かった。

私を刺そうとした男は黒服の男達に取り押さえられ、連れて行かれる。姿が消えるまでずっと私の事を狂気を含んだ目で見ていた。

自分の置かれてる立場をあらためて思い知り、寒気が走った。

周りではパニックになったお客さんを従業員が必死に宥めていた。


祥は右腕を掴みヨロヨロと立ち上がった。着ていたジャケットは切れ、手を伝って血が床に落ちていた。

「祥!大丈夫!?」

私の言葉に祥は弱々しく笑った。

祥が私を助けてくれた……

私の気持ちは祥に揺れる事はたぶん無い。だけど自分の身を犠牲にしてまで私を守ってくれた。

その事には素直に感謝が出来た。


私と祥は空いているスィートルームを借りて怪我の手当てをする事にした。上原が医務室から救急箱を持ってきてくれて、救急箱を置くと部屋から出て行った。

出て行く時、上原は私の肩を優しく触った。

その行動に何か意味がるんだろうか?……これから何かが起こる……そんな事を予感させた。

こんな一瞬一瞬にも神経を張り巡らせてしまう私がいる。

少し疲れちゃったな……そんな弱音を吐いてしまう自分がいた。

祥はベッドに腰掛けるとジャケットを脱いで、シャツの袖をまくる。

「助けてくれてありがとう」

私は祥の傷の手当をしながらそう言った。幸い傷はさほど深くは無かった。

「あたりまえだろう」

その言葉に私は顔を上げて祥の顔を見る、祥は優しい笑顔を浮かべていた。

私はこの笑顔が好きだった……そんな過去を思い起こしながら目を伏せた。

前ならこの笑顔を見たらときめいていたかもしれない……だけど今は違う。祥の本当の気持ちを知ってしまった以上、この笑顔の裏にもなにかがあるんじゃないかって疑ってしまう私がいた。


祥の腕に包帯を巻き終えると私は立ち上がった。

できるだけ早く二人だけの状況から逃げたかったから……

祥も立ち上がる。そして次の瞬間、私を静かに抱きしめた。

「日にちが変わってしまったけど誕生日おめでとう」

祥が耳元で優しくそう言った。少しだけ心が揺れる。何も考えず疑わず大きな周りの流れに身をまかせてしまった方が楽なのかもしれない……そんな弱気な自分が顔を見せる。

だけど、やっぱり自分の気持ちに嘘をついてしまったら、もう後戻りが出来なくなってしまう。一生自分の気持ちに嘘をつき続ける事は私には無理だ……

私は祥の腕を振りほどく。

「ちょっとトイレに行ってくる」

私はそう言って祥から離れた。別にトイレがしたかったわけじゃない、ただ祥から離れる口実が欲しかっただけだった。

私はトイレのドアを開き中に入る。そしてドアを締めて鍵をかけた。

その時、後ろに微かな音を感じ、後ろを振り向いた!


そこには……冷たい瞳をした玲が立っていた。



沙羅の周りはいつも沢山の人も思惑で覆われ、その中で生活しなければいけない事に疲れを感じていた。

そんな時に祥の優しさに触れ、心が揺れる。


玲の出現!玲の口から出た言葉とは!?

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