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愛しき殺し屋  作者: 海華
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銃声の中の黒い影

「お嬢様…お嬢様…」

遠くの方から頭の中に届く声。

「佐々木!?」

私は思わず、そう叫びながら起き上がった。でもそこには佐々木ではない使用人の女性がいた。名前は斉藤と言う

私は、そんな自分の姿に苦笑した。

佐々木は私を庇ったために、怪我をして病院に入院してる。肋骨が3本折れてたらしい。

「今、何時?」

この部屋には時計が無い。

この部屋に閉じ込められてからそろそろ1週間が経とうとしている中で、私の中の体内時計も完全に狂ってきていた。

「午後5時くらいです。今日は婚約発表の日ですよ。大急ぎで用意をしないといけません。お嬢様、佐々木さんからの伝言です。心配しないで欲しいと、そして自分の生きたいように生きて欲しいと言っていました」

そう言いながら斉藤は私に微笑んだ。

そう、佐々木がそんな事を……嬉しかった。私の気持ちをわかっていてくれる事がとてもうれしかった。

私と斉藤は、部屋を出て2階の私の部屋に向う。

1週間ぶりの自分の部屋は何も変わらず、まるで何事も無かったように静まり返っていた。

私はシャワーを浴びた。今までの自分の過去もしがらみも父への恐怖も全てを洗い流したかった。洗い流してそして私は新しい自分になる。そう決めていた。

今日の婚約発表、逃げるなら今日しかない。

今日を逃したら、たぶん私はもう逃げる事が出来ない、そんな気がした。

私はシャワー室から出ると、ガウンを着て鏡台の前に座る。

この間父に杖で殴られた所はまだ青く痕が残っていた。

「綺麗に隠しますからね」

斉藤はそう言いながら悲しく笑った。


私は用意されたピンクのドレスを着て、髪の毛をセットし、化粧を施す。

頬の青いアザはさほど目立たなくなっていた。斉藤は化粧が上手なのね。

私は立ち上がって、部屋のベランダを開ける、夜のヒンヤリした空気が風に乗って吹き込んでくる。

外の庭にはライトが照らされ、沢山の人がもう集まっていた。

全ての人が、財界、政界、その世界のトップの人たちが集まっている。

私の婚約を祝いに来たんじゃない。このパーティーを切っ掛けに次期総理が決まったりしてね。

人間の欲と野心が渦巻いているように見えた。


ズギューン!

銃声!? 空気を切り裂くように音が響き、ガラスが割れる音がしたと思ったら、ライトが消えた。

ズギューン!

またライトが消える。

庭に蠢いていた人たちの悲鳴が聞こえ、パニックになっていた。

いったい何が起こったって言うの? 私自身の頭の中もパニックを起こしていた。

ガチャ!

私の部屋のドアがいきなり開く音に私は驚いて慌てて振り向いた。そこには祥が立っていた。

「無事だったか?」

祥がそう言いながら近付いてくる。

「心配でもしてくれたの? それは光栄だわ」

私は嫌味タップリにそう言ってやった。でもこいつにはきっと効き目は無いわね。

「そりゃそうだろう。将来の俺の妻になる女なんだから」

そう言って、私の手を掴む。私はその手を振り払う。

「私はあんたとなんか結婚しない!」

私は足早に部屋から出ようとした。その時!

パン! パン! また銃声の音が聞こえる。

「総帥!」

そんな叫び声が聞こえた。父が、どうかしたの!?

私は慌てて外を見る、すると父の周りでボディーガードの男が2人倒れていた。

その光景を目にして、自分の中にがっかりしている自分がいる事に気付く。

父が殺られる事を期待していた自分がいた。私は失笑した。

風の音? ううん違う……草を微かに踏み走りこんでくる音。黒い影が父に向って走りこんでくるのが見え、父の傍で何が光る。

黒い影は父の懐に突進していく。光ったのはナイフだった。

パン! パン! 

銃声が響き渡る。

影は父の懐をかすめて、芝生に転がった。もしかして撃たれたの!?

黒い影は、すぐに立ち上がり凄い勢いで奥の繁みの中へと逃げていく。

私はその姿に見覚えがあった。そう思ったと同時に私の体は自然と動き走り出していた。

その後を追って、祥も走ってくる。

このままではまずい……祥にばれてしまう。どこかでまかないと。

私はそう思いながら、ドレスの裾をたくし上げ、家の中をぐるぐると走り回り地下室へと向う。例の部屋のドアを開けっぱなしして、壁のくぼみでできた影の中に隠れる。

祥はまんまとその部屋の中へと入って行く。今だ!

私は勢いよくドアを閉め、鍵をかける。そして急いで階段を駆け上がり、裏庭へと急いだ。

そう、あの人の……玲のもとへ!






黒い影の正体は玲なのだろうか?

はたして、玲と沙羅の運命は…

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