室戸さんは凄腕ライフハッカー
「室戸さんおはよう」
朝、学校へ向かう途中に同じクラスの彼女を見かけた。
小柄で華奢なシルエットは微動だにせず、かすかに顔がこちらに向く。
返事がないのはいつものことだ、それどころか彼女が喋っているところはクラスメイトでも見たことがない人の方が多いだろう。
スッ、と彼女の視線が足元に落ちる。
「ねこ?」
黒猫が彼女の足元でぐるぐるとまとわりつく。
彼女を見るとかすかに頷いたように感じた。
彼女はなんだか猫に懐かれるようだ。
でも、彼女が猫を構ってる姿を見たことはない。
それなのに今回は様子が違う。
素早い動作で猫の首元をつまむと、ゆっくり持ち上げ僕の前に持ってくる。
今までにない行動に、僕にわずかな動揺を生む。
ズイッ、と僕の前に出された猫はとてもおとなしく、だらんとした姿で『なーなー』と鳴いていた。
差し出された猫を受け取る。
「その猫の名前はクロ」
しゃべった!?
もちろん猫がではない、彼女がしゃべったのだ。
これは事件だ。
驚天動地とはまさにこのこと。
学校に着いたらホームルームで報告しなくては。
猫を見ると首輪をしており、小さなタグがあった。
タグにはカタカナでクロと記載されていた。
「歳は二歳と三ヶ月」
「そう、なんだ」
「そう」
すごい! 会話が成立した。
「で?」
「持ってて」
「あ、うん。わかったよ。っていつまで?学校に連れてくの?」
「その猫はあなたの手から抜け出すと今から一時間23分後に車にひかれて死ぬ」
「ええ!? 死んじゃうの?」
「そう…… だからイベントに割り込みをかける」
「イベント?」
「離さないで」
結局、学校に着くまで僕は猫を抱えたままだった。
なんとなくで描いてるので改稿するかもしれません。
→やっぱ改稿しました。