表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
※僕らは特殊な肉体を享けています。危険ですので絶対に敵にしないでください。  作者: 諏訪静雄
第1章 1年2組はRPG(ロールプレイング学級)
13/14

サッカー馬鹿はやはり知性が物足りない

 マリンがチャット機能で初めてメッセージの一斉送信を成功させた、その直後。

 人知れず個別送信を成功させた者がいた。


〔もしもーし! なんか「俺たちがやりました」って言いにくい空気になってんだけど、どうするよ!?〕


 思いもよらない展開とその進行の速さについていけなかった、この事件の犯人である。

 もちろん、相談相手は共犯者ツトムだ。

 まさか、いきなり悪だくみに利用されるだなんて苦労して開発したシロサキは思いもしなかっただろう。

 だが、知らぬが仏というやつだ。結局のところ、悪用した奴が悪い。


〔こんな偶然ってあるんだな。アニメや漫画だけだと思ってたぜ。とりあえず、疑われるまでは黙っといていいと思う。以前からイタズラがあったことには変わりないし、警戒してもらうに越したことは無い。それにこのまま予定を前倒ししてもらった方が、早く強くなれるしな〕


〔なるほど、流石はツトム。じゃあ、イタズラ犯が捕まったらソイツに罪を擦り付けるって感じでおk?〕


〔女の子じゃなければな。男なら慈悲は無い〕


〔分かった。その辺はうまく言ってくれると助かる〕


 入力のコツは、頭にスマートフォンなりパソコンなり、文字を打ち込む様を思い浮かべることだ。

 それは言うまでもなく、高校生には造作もない行為。

 そこにスリルと緊張感が加わったことで男子特有の使いどころのおかしい集中力を発揮し、この2人はたった数十秒の間に無表情のままやり取りできるまでにチャットをマスターしていたのだった。


 手や口の動きじゃ入力できないことがあだになったな。

 どうやら俺たちの密談に気付いた奴はいなかったみたいだ。


 「……シロサキさん、なんかステータスが出てこないんですけど……」(ヤスラギ)

「あれ? シロサキさん、なんか情報がありませんってなってますけど……」(マリン)


「ああ、うん。大丈夫。その状態でもう一回、右を押してみて。更新されるはずだから」(シロサキ)


「了解です」

「そうですか。んじゃ、ぽちっとな」


 その代わり、会話から置いてかれてるけどな!!


〔なぁ、今、みんなはなにしてるんだ?〕


 だが、ここで慌てることなく俺はチャットを活用する。

 今の俺は超クールだ。何事もなかったように乗り切って見せるぜ!


〔ステータスを見ているらしいな。最初は表示されないけど、右を押せば出てくるぞ〕


〔あざっす!〕


 こっそり教えてもらったおかげで難なく画面を切り替える。


《カイト・シュゼンジ / 総合Lv3 》

 肉体Lv2 EXP 125/330

 精神Lv1 EXP 285/300

《種族:VUホムンクルス / 職業:冒険者》

 進化先 → 該当無し / 上級職 → 該当無し

《身体的ステータス》

・HP 315/315

・LP 300/300

・MP 990/1100

・ST 1/1 

・筋力    B 1375

・耐久力   C 700 

・耐性力   C 630

・魔力    D 525

・魔法耐久力 D 525

・魔法耐性力 D 525

・敏捷性   B 1150

・精密性   D 450  

・知性    E 300

・運勢    大吉



 なるほどなるほど~。やっぱ現実だと『攻撃』や『防御』だけじゃ足りないよな。能力値だけでこんなに書いてあるステータスは初めて見るぜ。

 ていうか、分かっちゃいたけど俺の知力低いな!! これだけEランクじゃん!


 全く、自分にしか見えてなくてよかったぜ。

 他人のステータスを見てみたいけど、俺のは見せたくねぇからな。

 にしても、ラギ長やツトムの知力がいくつなのかスッゲー気になるな!

 あいつら2人、マジ化け物だからな~。53万とかだったらどうするよ。

 いや、その時は特戦隊のメンバーにでもしてもらえばいっか。


 オラ、ワクワクすっぞ! しながら、今一度ステータスをじっくりと眺めてみる。

 

 ……あれ? 俺の肉体レベル、すでに1上がってないか?

 ……もしかして朝練の効果か?

 多分、そうだな。ゲームでも最初の内はすぐにレベル上がるし、疲れなかった分ハードに動いてたしな。

 あ、やっぱりMPが消費されてるか。どのくらいMPを消費したんだろうな、あのシュート。


 ……そういえば、魔力とか魔法系の能力は全部Dだな。



「……。ちなみに、DとCの間くらいが一般人の平均値で、私やクロサキさんのような”モンスターハンター”はすべての能力値が最低でもB以上よ。あと、この学校に通う生徒も魔法に関係する能力だけはB以上の子が多いわね」


 やべっ、また聞き逃すところだった! 数学なんかの授業と違って、こいつは本気で聞いておかないとヤバいからな。

 にしても、Dで普通ってヤバくねーか? 俺、レベル3の時点で一般人超えてるじゃん!!

 ヤッベーわ! なにが一番ヤベーって、さっきから俺ヤベーしか言ってねぇことが、マジでヤベェ!!


「って、BはDのほぼ2倍じゃん……! えっ……ここの生徒は、僕の2倍強いってこと!?」


「ヤスラギ、それは違うぞ? ステータスの値が2倍でも測定方法によって2倍にならないことだってあるからな」


「えっ? そうなの!?」


 ……こいつら、いったい何の話をしてるんだ?

 2倍なのに2倍じゃないとか、言ってる意味がわからんぞ……。

 俺の頭がフリーザ様しちまう。


「それに、もし仮に本当に2倍以上の差があるとしても、俺たちはこれからレベルを上げるんだ。俺の勘が正しければ、この学校の生徒くらいすぐに追いつける!! ですよね? シロサキさん!」


 あ~、なんだ。

 結局はひたすらレベル上げまくればいいだけか。

 全く、最初からそう言ってくれよな~。


「That’s right(正解よ)! 目標はズバリ、総合レベル30になること! そのレベルに達したら実践的な戦闘訓練に入るわ。訓練や勉強だけじゃなくて、スキルを覚えることでも経験値は入ってくるからうまく活用してね! というわけで、今度はスキルの説明をするわ。みんな、自分のスキル画面を開いてみて」


 おっしゃあ! かっこいいスキルを覚えまくって、速攻で30レベになってやる!

 なんなら、肉体レベルだけで30になるかな!

 とりあえず、俺のスキルを見るか。



 《パッシブスキル》

 ・疲労変換(MP)

 ・VUHの加護

 ・蹴球術


《アクティブスキル》

 ・フレア(魔法) 

 ・スキルメイク(武器)

 ・スキルメイク(魔法)


《ユニークスキル》

 ・考えるな、感じろ(P)



 画面を開いてすぐ、真ん中に陣取った”フレア”の3文字がまっすぐ目に飛び込んできた。

 これがここにあるってことは……ツトムのとこにも”ライトニング”とかって書かれてるってことか。

 もしも人のステータスを覗き見出来てたらマジで危なかったわ……。


「気になるスキルにカーソルを合わせれば詳細が見れるわよ」


 やっぱり! そうだろうと思って、実はもう見ちゃってるんだな~。

 【疲労変換】のスキル、超スゴイな~。この体が朝練のときに疲れなかった理由も、寮までダッシュしたときは疲れた理由もやっとわかったわ。

 さて、次は【蹴球術】か。


【 蹴球術 :NOT OFF】

 足を使って球状のものを蹴る時、精度と威力が上昇する常時発動型スキル。このスキルはOFFにすることが出来ない。


 こ、これはサッカー部にとって夢のようなスキルだな!!

 俺はいつからこのスキルを持っていたんだ!?


【フレア(魔法)】

 火属性の汎用第二攻撃魔法。対象との距離が近いほど威力が上がる。


 説明みじかっ!

 ……えーっと、つまりサッカーボールを蹴って燃やすのに向いてたってことだな。


「……ラギ君はユニークスキルが発現したんだね? それは、まさしく君専用のスキルだよ! 最初から発言してるなんて珍しいよ!!」


 へー、ラギ長にもユニークスキルがあったのか。珍しいなんて光栄だな!

 いったい俺のユニークスキルは、どんだけユニークなスキルなんだろうな?


【 考えるな、感じろ(P)】

 知力が低いほど、アクティブスキルの取得率が上昇する常時発動型スキル。


 ハハッ、俺の大好きな名言がそのままスキルになってるだけのことはあるな。

 ごちゃごちゃ考えるのが苦手な俺に、超ぴったりのスキルじゃねぇか!!

 これでもう、俺に隙は無い!!


「……のは、一連の動作を体内のマナの流れや筋肉の動きで記録して再生するものなの。だから、大きく分ければ魔法もスキルの1つよ」


 いや、俺にはまだ弱点があったことに気付いたわ……。

 すぐに話が耳に入らなくなるという弱点が……。


「それはつまり、魔法は呪文の詠唱ではなく、体で覚えて使うもの……ということでしょうか?」


 それはつまり、どういうことだってばよ?


「……!? ミヤビさんて本当に高校一年生? まさにその通りよ」


 ヤバい、全然わからん。


「イメージとか感覚によるものが大きくて、それを補助するために詠唱をする人がいるだけで、理論上は無言でも魔法は使えるのよ。かなり難しいけどね」


 おぉ、分かった! 呪文なんか知らなくても魔法は出せるってことか!

 もしそうなら、俺のユニークスキルが火を噴くぜ!? いや、もう噴いてんのか!!


 ……って、ヤバくないかそれ!? なんで使えるのって聞かれたらバレるんじゃね!? あれ、違う? 待って!! 混乱してきた!! 使えること誤魔化さなきゃ……??! 


「じゃ、じゃあ、今すぐ俺らは魔法を使えてもおかしくないってことですか!?」


 アレ? 墓穴ホッテナイヨネ?


「フフフ、そうね。カイト君ならできるかもしれないわね。どことなく、クロサキさんに似てるし」


 ……今、多分だけど俺のユニークスキルが発動したわ。

 シロサキさんの一言で、ハッキリと感じ取ってしまった。


 クロサキさんも、俺と全く同じユニークスキルを持っている。

 ラギ長やツトムのように理屈なんかじゃ説明できない直観的なものだけど、少なくとも今の俺にはそうとしか思えなかった。


「クロサキさんはすぐに魔法が使えたんですか!?」(ヤスラギ)


 悪いな、ラギ長。俺とツトムもだ。


「そうらしいわ。だから、みんなも訓練を頑張ってね? 筋肉ゴリラに魔法で負けないで!」


 あぁ!! 負けず劣らずの筋肉ゴリラになってやりますよ! 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ