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〜ランダム〜  作者: 志貴
9/10

電話

「と、そんなことがあったんだよ」


俺は今日の一部始終を声に出して伝えた。


『あははは。それは災難だったね』


電話越しに女子の笑い声が耳に響いてきた。

俺はその返答に顔を渋らせる。


「笑い事じゃない。あの後、なんか周りの視線が俺を哀れんでいたんだぞ。何故だか、物凄く虚しい気持ちになった」

『ごめんごめん。でもさ、その女の子・・・えーと倉元さんだっけ?ホントに何も覚えてないの?』

「無い・・・はず。一時間記憶を巡らした結果では、俺には倉元と言う知り合いはいなかった・・・と思う」


はっきり言って自信がなかった。アレだけ蹴られたら俺の記憶を疑ってしまうからだ。やはり単に忘れてしまったのか?


『自信皆無なの?まあ、話を聞いた限りじゃあ、強ち嘘って言えそうも無いね』


うむ、良く分かってくれている。長年の付き合いは伊達じゃないだろう。


『それで、今後はどうするの?』

「やっぱり本人に聞いた方が早いと思う。明日にでも倉元さんに尋ねてみる」

『でもそれって今日断られたんでしょ。口には出せないような事したわけ?』

「それは断じて無い。誓って言うが俺はそんなことはしていないぞ」


事実だ。俺は腐った蜜柑なんかじゃない。それ以前に人も殴れない根性無しなのだ。

そんな俺が一体何をやらかしたと?


『ほら、自分でも気づかないうちに爆発しちゃったとか』

「何が、爆発したんだ?」

『男の欲望』

「・・・・・・」

『冗談だって。真剣に考えなくていいから』

「なんだ。冗談だったのか」

『当たり前でしょう』

「ほっとした」


全く心臓に悪い。ちょっとだけ本気にしてしまったではないか。

今までのストレスが爆発して、彼女に・・・・・・・・・・あああ駄目だーーー!!!それ以上考えてはいかん!!

俺は被りを振って思考を追い払う。


「それで、いつ帰ってくるんだ?」


俺は話題を変える。


『うーん、どうだろ?まあ今月中には帰ってこれると思うよ』

「そんなに、大変なのか?」

『そうよー。全然休みくれないんだから。まあ後ちょっとで長期休暇だけどね』

「じゃあ、その休暇のときに学校にも行くのか?」

『そのつもりだけど。何?来てほしくないの?』

「別にそんなことは無い。けど俺、目立つの嫌いだから」

『分かってるって。ちゃんと隠すから』

「頼む」


俺は少し安堵した。俺は元来、目立つことを好まない。

だから、この容姿は俺の取ってのコンプレックス。何もしていなくても人にプレッシャーを与えてしまうのだから。


「まあ、頑張れよ仕事」

『そっちこそ、きっと明日から大変だと思うけど頑張ってね』

「・・・・・・それ言うなよ」

『あはは、ごめんごめん』

「じゃあな、お休み」

『うん。おやすみ兄さん』


ガチャッ、と受話器を置いた瞬間そんな音がなった。

俺は首を横に回転させ、リビングに掛かっている時計を見た。

短い針は八と九の間に、長い針は五を指していた。

八時二十五分か。ふうう、なんだかんだで長話になってしまった。

俺は何気なしに、まだ来たままの制服のポケットに手を突っ込む。

そのさいに、くしゃっという紙が潰れるような音と感触を俺は感じた。

?何か入っていたかな?と思ってそれを取り出してみた。

二つに折りたたんだ紙であったので、それを開いてみた。


《今日の放課後体育館裏に待っています》と書かれていた。


・・・・・・ぬををおおおおおおおおおおお!!完璧に忘れていた!!






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